第2話 「沈黙は金、雄弁は銀」
「夜景が綺麗だねジェイク」
「ああそうだな」俺は今ギルズクラブが所有するビルの最上階に居た。ライラを地獄に送った後俺は疲れて座り込んでいた。
「なあイルナ本当に俺の身体に異常はでないんだよな?」
「大丈夫だよ今はね」イルナがくすりと笑いながら言った。
「今は?じゃあいつか何かしらの影響が出るのか?」
「君の思っている様な事態にはならないとだけ言っておくよ」
「本当かよ」俺は溜息をつきながら言った。
俺は今夜死んだ、今は動けているのは俺の隣に居る女死神のイルナのお陰だった、死んだ俺は辺獄と呼ばれる場所でイルナと出会い契約を交わしたこの街に蔓延る悪党の魂全てと引き換えに俺を生き返らせると。
突拍子も無い話の様だが現に俺は一度死にそして戻って来たこれだけでも十分信じられる確信があった。
「所でライラはお前が見えない様だったけど?」俺はイルナに聞いた。
「そりゃそうだよ今の私の姿は君にしか見えて居ないからね」
「それじゃあ今お前と話している俺は端から見たら一人事言ってる異常者かよ?」
「そうなるね」イルナは笑顔で言った。
「まあそれは良いとして問題はスターシャになんて説明するかだな」俺は今恋人であるスターシャへの言い訳を考えていた、流石に化物に殺されて今は半分死人だなてんて話出来る筈が無かった。
「そんなに彼女が大事なんだね」
「ああ、スターシャは俺の全てだからな」
「君かなり愛情深くて情熱的だね」イルナに茶化され俺は顔が赤くなった。
「当然だろ男が惚れた女の話して悪いかよ?」
「ううん、とってもロマンチックだと思うよ良かったら彼女との馴れ初めとか聞きたいな」イルナが興味ありげに言う。
「そうだな、スターシャと会って大分経つし、それに誰かに話すのは始めてだし話すか」俺がそう言うとイルナが俺の横に座ったので俺は彼女との馴れ初めを語った。
今から7年前俺は両親を殺された。
俺の両親はエンパイア・シティでは珍しい正義の判事として有名だった。母は引退しており専業主婦をしており父はエンパイア・シティの汚職や犯罪に真っ向から立ち向かう人だった。
このエンパイア・シティは他の街よりも犯罪率が高く父はそんな街を変えたい一心で日夜悪党共に裁きを降していた。だがそんな父を良く思わない連中が居たそれこそこの街を仕切るギャング達だった。
ある日久しぶりの家族の団欒を過ごしていた時に奴が来た。
「こんばんはメロウ判事少しお話をしたく参りました。」その男は至って普通の紳士の様だっただがその男が名乗った時に空気が凍り付いた。
「私レオーネファミリーの相談役兼クリーナーをしておりますラーテン•ティンゼルと申します。」
その名を聞き直ぐ様、父は俺を連れて母に逃げる様に言った。だが次の瞬間父は男が持っていたハンマーで頭を砕かれ崩れ落ちた。
死にかけの虫の様に痙攣する父に男は蹲り耳打ちする。「沈黙は金雄弁は銀、貴方は喋り過ぎでしたね」
その言葉と共にラーテンは父の頭をハンマーで何度も殴打した。青いカーペットが血に染まり赤い脳味噌がぶち撒けられる。
そしてラーテンは父の首を切り取り俺と母に見せながら言った。
「残念ですがこれが私の仕事何ですよ」ラーテンは父の首をカバンに入れ俺達の元へと来た。
「この子だけは助けて!お願い!」母が俺を庇いながら泣き付く。
「心配入りませんよお子さんは私達が責任を持って引き取りますので」ラーテンは優しい笑みを浮かべながら母も父の様に殺した。「それじゃあ君は私と共に来てもいますよ?」俺は呆然と立ち尽くしそのままラーテンに誘拐された。
1年後俺はレオーネファミリーの見習いとして仕事をこなしていた、盗み、喧嘩の仲裁、そして殺人かつて正義の為に命を掛けた両親とは違い俺は暗い闇の稼業を続けていた。
「父さん、母さん、ごめんなさい、俺二人の息子なのに真逆の事ばかりしてるよ」俺はファミリーの用意した地下の牢屋同然の部屋で一人両親に懺悔しながら泣いていた。悪党をこの街から消す為に尽力した両親の意志とは真逆の今の俺を見たらなんて言われるだろうか、俺もあの時死んで入れば良かった。俺はロクデナシの屑だ、様々な感情が渦巻き俺が導き出した答えは。
死のう、死のう、死のう、死のう、死のう、死のう、死のう、死のう、死のう、死のう、死のう、死のう!
「ジェイク止めて!」その言葉と共に俺は我に返った。見ると一人の少女が俺の手を必死に止めていた。
俺の手の中では鋭いナイフがあり彼女が止めて無かったら間違いなく喉を貫いていただろう。
「スターシャ!血が、ごめん俺のせいで」彼女の手からは赤い血が流れていた。
俺が慌てて止血しようとすると不意に優しい温もりに包まれていた。
「ごめんねジェイク、私のお父様のせいで貴方をこんな目に合わせちゃって、、、ごめんね」
スターシャは俺を強く抱きしめながら泣いていた。
彼女はレオーネファミリーのボス、アルフォンス•レオーネの一人娘だった。彼女は俺が連れて来られた日に出会った、俺は当初何処ぞの変態の金持ちに売られる手筈だったらしいだが彼女がそれに大反対しボスのアルフォンスも娘には甘く見習いとして手元に置く事にしたらしいのだ。
だからこそ俺は彼女に感謝こそすれど恨みなど微塵も無かった。
「スターシャ、せっかくの綺麗な服と綺麗な黒髪が台無しになるぜ?」俺が言うとスターシャは更に強く抱きしめて言った。
「私は今までお父様のお陰で何不自由なく暮らして来たは、だけどこの暮らしも全部貴方の様な人達が犠牲になって成り立って居ると思うと私、、」
スターシャは震えながら言った。
「大丈夫だよスターシャ俺は君のお陰で今があるだからこそ、その恩返しをしてるだけさ」俺は彼女を優しく離すと言った。
「今日は遅いし部屋に戻りなよ、もうこんなことしないからさ」俺が笑い掛けると彼女がは頷き戻っていった。
「これで良いんだ俺何かと一緒に居ちゃいけない」俺はベットの上で横になると目を閉じた。
それから2年後俺は14歳になり相変わらずラーテンの元で仕事に従事していた。
「ジェイク、君は今日まで良く仕事をこなしてくれたねそこでだ君を私の後継者として幹部候補にしたいと思う。」
「あんたの後継者?冗談じゃねえ!俺はいつかあんたを殺してやるよ!」俺はそう吐き捨ててラーテンの部屋を後にした。
「ようジェイク相変わらず時化た顔してるな?」
「何だよラリー冷やかしならぶっ飛ばすぜ?」
「怖いね〜よせよめでたい日の前何だからよ」
「めでたい?何がだよ?」
「知らねえのか?近々スターシャお嬢様が嫁ぐらしいぜ」俺はその言葉を聞き。
「そうか、お嬢様と結婚出来るなんて幸せ者だな」俺は自分の感情を殺して精一杯言った。
スターシャが結婚する?他の男と?俺は無意識の内にそんな事を考えていた。
だが俺が彼女に対する思いは何なのだろうか、俺は言葉に出来ない感情に染まっていた。
「式は明後日らしいぜ、お前もお嬢様には世話になっただろう?気持ちよく送り出してやろうぜ?」
「ああ、そうだな」俺はラリーに作り笑いをして別れた。
「今日はもう寝るか」俺はベットに寝転がって目を閉じた。
すると夜更けにも関わらずドアをノックする音が聞こえた。
「ラリーか?悪いが俺はもう今夜は寝る、、」そう言いながらドアを開けるとスターシャが立っていた。
「ごめんねジェイクちょっと話せるかな?」スターシャは上目遣いでそう言って部屋に入った。
「話って何だよ?」
「うん、ジェイクあのね私明後日結婚するんだ」
「知ってるよ今日ラリーに聞いたよ」俺は素っ気なく言った。
「でもね私不安なんだ今回の結婚も組織同士の結束を固める儀式みたいだし、それに私相手に会ったことも無いんだ。」
「そうか、でも俺はそいつがうらましいよスターシャと結婚出来るなんて幸せ者だな」俺が何気無く言うとスターシャが俺を見つめてくる。
「ジェイクは本当にそれで良いの?もう私とこうして話すのも最後になるんだよ?」スターシャは何時に無く真剣に言った。
「本音を言うと寂しいさ、けど俺にはどうにも出来ない俺は君のお陰で今があるんだ、だからこそ君だけは幸せになって欲しい」
「その為にジェイクはどうなってもいいの?」
スターシャは2年前のあの優しくも悲しげな目で訴えてくる。
俺はその目を見て自分の本当の気持ちを伝える事にした。
「俺は君の事が好きだ、今まで認めちゃいけないと思い続けて来たが最後だしハッキリ言うよ。スターシャ俺は君に救われたあの時から今この瞬間も君に惚れている!だからこそ君には幸せになって欲しいんだ!」
俺は今まで押し殺してきた思いの丈を語った。
「ジェイク、」
「スターシャ、」
俺と彼女は見つめ会うと優しくキスを交わした。
「ジェイク、私を連れ出して!ファミリーもお父様もいらない」
いつも温厚なスターシャがこの瞬間今までに無いほど感情を剥き出しに言って来た。
「本当にいいのか?俺の様な屑と一緒で?」
俺がそう言うとスターシャが俺の頬を叩いた。
「ジェイクは屑何かじゃないよ!それに私は貴方が良いの!ジェイクが居ないと幸せになれないは!」
俺は力強くスターシャを抱きしめる。
「分かったこれから先一生君を愛して守るよ」
「私も愛してる連れて行って」
その日俺とスターシャはレオーネファミリーの屋敷から逃げ出した。全てを捨てて。
「その日から俺とスターシャは逃げ続けて今じゃあ地下のゴミ溜めに仲良く住んでいるよ」
「感動したよジェイク、苦労人だね」
俺の話を聞き終わりイルナが言った。
「所で初めてはどっちから切り出したんだい?」
「お前、なんて事聞くんだよ!」俺はイルナに食い下がる。
「良いじゃないかこれから長い付き合いになるんだし秘密は無しだよ?」
「絶対他言無用だからな?」俺は周囲を確認していった。
「16の時に今の家に住み始めてからその日の夜にスターシャからその」俺は恥ずかしくなり言い淀む。
「激しかったのかい?」
「まあ、人並み以上はなお陰で1週間位夜は寝れなかったよ」俺はボソッと言った。
「まあ、君に心臓を預けてるから全部知ってるんだけどね、随分愛されてるじゃないか」
「てめえ悪魔かよ!」
「残念死神だよ」
こうして俺とイルナは契約を交わした、この街の悪党を消すまでこいつとは長い付き合いになりそうだ。
第2話 完
第3話に続く