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第1話 「地獄の沙汰も金次第」

「金もねえくせにウロチョロすんじゃねえ!失せやがれ!」夜の酒場の裏口から中年の男に叩き出された少年がいた。


その少年はみすぼらしく浮浪者の様な風貌だった。


「畜生そんなに金が偉いのかよ!人をゴミ扱いしやがって!」少年は酒場に向かって暴言を吐くと通りに出て歩いた。


「今日はこんなもんかあの親父間抜け面してるし気付いてねえだろうな。」俺は懐からくすねた袋を開ける中にはそこそこの金が入っていた。


「ざっと見て200ドル程か1週間で無くなるな」俺は懐にしまうと隠れ家に帰った。


俺の住む街の中心街にある地下街にあった、住人達は皆上の街から様々な理由で流れ着いた者ばかりで俺も物心付いた時にはこの地下街で暮らしていた。


「よう、小僧今日は稼げたか?」地下街に入り口で酔っ払いの男に話掛けられた。


「ボチボチだなほらよ飲み代にしなよ」俺は袋から少し分けた。


「いつもありがとうなお陰で娘に飯を買ってやれるよ」


「ここでは助け合いだろ?またな」俺は入り口を通って家路に急いだ。


「ただいま」


「おかえりなさいジェイク、どうしたのその傷!?」


俺が家のドアを開けると一人の少女が出迎えてくれた。


「何でもないよスターシャ、これ生活費に使ってくれ」俺はスターシャに袋を渡した。


「このお金どうしたの?」スターシャが心配そうな目で俺を見る。


「ちょっと無茶したけど大丈夫だよ」


「また盗んできたの?」スターシャが静かに言った。


「ごめん、でもこうでもしないと生きて、、」俺が言い終わる前に俺の左頬に痛みが走った。


「ジェイク!いつも言ってるでしょ?悪い事ばかりしていると必ずいつか報いが来るんだよ?」スターシャは泣きながら俺を見つめる。


「ごめんスターシャでも俺の様なゴミが纏まった金を手に入れるにはこうするしか無いんだ」


俺はスターシャの目を真っ直ぐ見る事が出来なかった。


「ジェイクはゴミなんかじゃないよ!貴方は私の大事なたった一人の家族じゃない!」スターシャは真剣な顔で言った。その眼は真っ直ぐで純粋な綺麗な宝石の様だった。


「スターシャ俺が悪かったよでも俺はお前を守るためなら何でもするよ」俺は泣きじゃくるスターシャを優しく抱きしめて言った。


「分かった、でも一つだけ約束して絶対に私に隠し事しないで?」


「ああ約束するよ」俺達は抱き合ったまま見つめ合いその後そっと唇を重ねた。


翌朝俺はベッドから起き上がると仕事の準備をしていた。


「今日も行くの?」ベッドの方を見ると裸のスターシャが起きていた。


「ああ、でも必ず夜には帰って来るよ」


「うん、待ってるいってらっしゃい」


俺はスターシャに見送られ家を出て地下街を出た。


昨日は浮浪者に化けて盗みをやっていたが今日は比較的小綺麗な格好をした。


「今日は大きく出るか」俺はある建物の前に来ていた。その場所はこの街エンパイア・シティの権力者の一人であるジョナサン•ギルモアが所有する建物だった。


ジョナサン•ギルモアは表向きは実業家で通っていたが、真の顔はこの街を牛耳る5つのギャング組織の一つギルズクラブのボスだった。最近ギルモアが自分の隠し金をこの建物に運び込んだと言う噂を聞き来て見たのだが。


「あの警備している男、ギルズクラブのタトゥーが入っているな」ギルズクラブの構成員には黒い蝶のタトゥーが入っている、このビルの警備員にも同じタトゥーが入っているのを確認し俺は侵入経路を探した。


俺は建物の換気扇のダクトを見つけると静かに外して入った。


ダクトを抜けると豪華な装飾が施された絨毯の上に出た。俺は静かに降りると周囲を確認する、辺りに人の気配は無く俺は音に注意しながら廊下を進んだ。


「ここがギルズクラブのフロアか」俺は階段を登り5階のフロアに来ていた。フロアを確かめるとギルズクラブのメンバーと思われる男達が彷徨いていた。


「おい、交代の時間だ」


「すまなえな、それじゃあ後はよろしくな」


男達は数時間おきに交代している様だった。俺は見つからない様にフロアを散策した、フロア内には幾つか部屋がありどの部屋を探しても金のありそうな気配は無かった。


「なんだよやっぱり唯の噂か」俺は落胆しフロアを離れようとした時に手掛かりが現れた。


「お疲れ様です!今日はどんな用件で?」部屋の外の男達の声が聞こえた。


耳を澄ませて聴いているとある会話が聴こえてきた。


「御機嫌よう、貴方達例の物は運び込んだの?」


「はい!とこ通り無く搬入いたしました!」


どうやら組織のお偉いさんが来ている様だった。俺は会話を聞き終えると静かにドアを開けて出た。


出ると廊下を歩いて行く黒い女が見えた。その女は黒いドレスに黒い髪全てを黒で着飾った女だった。


さっき話ていのはあの女か、俺は危険を承知でその女の後を付けた。


「お疲れ様ですライラ様!」女がある部屋の前に立つと見張りの男が恐縮する。


「御機嫌よう、ボスの預かり物はここね?」女が言うと男はドアの脇に立つと扉を開き女を通す、女が入ると男も続いて入って言った。


俺は扉に近付き開けようとしたが恐ろしく重く開ける事が出来なかった。


俺は周囲を見渡したすると壁の上に通気口を見つけ入る事にした。


通気口を通り部屋の上部にまで来た。そして通気口の小窓から俺は部屋の中を見た部屋の中は紅い絨毯が引奥に巨大な扉があった。そしてその扉の前にはさっきの女と男が居た。


「ここにあるのねボスの大事な物が」女が微かに笑みを浮かべるのを感じた。


「ライラ様今日は何のご要件で来たのですか?」男が恐る恐る聞く。


「ちょっとボスに内緒でつまみ食いに来たの」


「え?」その言葉を最後に男の首から上がなくなった。


「不味いわねやっぱり餌は若い女の子が良いわね」俺は何が起きたのか理解できなかった。


見るとライラの手が獣の頭に変わり隣の男を捕食していた。


ライラは扉の前に立つと腕を巨大な鉤爪に変えて扉をこじ開けた。


「何?私達出られるの?」扉の先には若く美しい女達が居た。皆状況が分からず戸惑っている様子だった。


「御機嫌よう、貴方達がボスの大事な女達ね羨ましいは私には全然なびいてくれないのに」ライラは溜息をつきながら言った。


「ボスが私達を解放してくれるの?」一人の女が言うと。


「違うは私ボスに愛されてる貴方達が羨ましくってね、だから」ライラは冷たく笑みを浮かべると。


「だから今から貴方達全員殺すは」そう言って腕をまた獣の顔に変えると女達に噛み付いた。


部屋は地獄の様相を浮かべていた、ライラは腕の獣を切り離すとその獣をけしかけ女達を襲わせた。


「嫌!こないで!嫌ぁ!」逃げ惑う女達は一人また一人と獣に頭や喉、腹を食い破られ無残に食い散らかされる。


「アハハハ!良いわね貴方達もっと逃げなさい、これも全部私を女として愛してくれなかったボスが悪いのよ!」ライラは恍惚の笑みで逃げ惑う女達を見ていた。


俺はこの場から逃げようとした、だが逃げ惑う女達を見て俺は柄にもなくダクトから飛び出した。


「貴方誰なの?」ダクトから飛び出すとライラと真っ先に目が合った。


「通りすがりの泥棒だよ」俺はライラに答えると追いかける獣にある物を投げつけた。


「おい!俺が相手しやるよわんころ!」俺の挑発に乗り獣が一直線に俺に向かって来た。


「来いよクソ野郎!」獣の牙が届く瞬間俺は膝を降り獣の懐に入り込んだそして、俺は手に持っていたライターを投げつけた。


「くたばりやがれ化物が!」獣が炎に包まれのたうち周り暴れまわる、そして入り口のドアに激突し止まった。


「ドアが開いた逃げろ!」俺が女達に言うと女達が一斉に走って行く。


「あらあら賢いのねあの子を仕留めるなんて」ライラは落ち着き払った態度で言った。


女達が逃げるのを確認して俺も逃げようとした瞬間。


「貴方は逃さないわよ?坊や」その言葉と共にライラの鉤爪が俺の身体を切り裂いた。


俺の身体は壁に叩き付けられ意識が朦朧としていた。


「あらぁ?まだ息があるのね」ライラが血をなめ取りながら歩いて来る。


「ゴハァ、俺を食うのか化物め!」俺はライラを睨みつけながら言った。


「威勢が良いのね生憎私は男の肉は嫌いなの、でもね私貴方に興味が湧いたの」ライラは笑みを浮かべながら顔を近付けてくる、彼女の金色の瞳は今にも死にそうな俺の顔を映して言った。


「貴方私の男にならない?」ライラが耳元で囁く。


「悪いな俺には美しい天使が居るんだ」


「そう、残念ね」その言葉と共にライラは俺の喉を優しく切り裂いた。


血が溢れ出す、だんだん身体から力が抜けていく、だが不思議と心地の良いまるで日なたに照らされながら眠りに着く感覚と似ていた。


「貴方、ボスの次位には良い男になれたわよ」ライラの言葉と共に暖かい赤い海に沈みながら俺は目を閉じた。


「起きて!ジェイク!私を一人にしないで!」


「スターシャ!」俺は彼女の声が聞こえた気がして目を覚まし飛び起きた。


「何だここは?」辺りを見渡すとそこは真っ白な花に覆われた草原だった。


俺は咄嗟に首に触れ、身体を見た、だが俺の身体には傷一つ無かった。


「夢なのか?」俺はそう考えたがあの鉤爪で切り裂かれた焼けるような痛み、そして首を切り裂かれ血液と共に失われていく生命の感覚、あれを夢で片付けてしまうには余りにもリアルだった。


「やあ、ジェイク目が覚めたかい?」何者かが俺の背後から声を掛けてきた。


「誰だ?」俺が振り返るとそいつは居た。


その姿は昔絵画で見た天使の様だった、雪の様に白い肌、透き通る様な白髪の髪、そして惹き込まれそうな美しく宝石の様な翡翠色の瞳、だが俺はその女から発せられる異様な空気が引っかかる。


「ここは何処だ?天国か?それともあり得ないが地獄か?」俺は目の前の白い女に問う。


「死んだって言う自覚はあるんだね、でも残念だけどここは天国でもましてや地獄でも無いよ」女は子供の様な無垢な笑顔を向ける。


「それじゃあここは何処だよ?」


「ここはね辺獄って言ってあの世の入り口何だ」


「入り口って事は俺はまだ完全には死んでないのか?」俺は僅かな希望を感じて聞いたのだが。


「君は残念ながら死んじゃったんだ、可哀想に」その一言で俺の希望は打ち砕かれた。


「ならさっさと俺を地獄なり天国なり連れて行けよ」


俺は女に言った。


「君がそれで良いならそうするけど、もし生き返る方法があるって言ったらどうする?」女のその言葉に俺は反応した。


「あるのか?そんな方法が?」


「あるにはあるよ、でもその方法は消して簡単な物じゃない」女が含みを持たせて言った。


「頼む教えてくれ、俺には帰りを待ってくれている奴が居るんだ」俺はスターシャを思い浮かべながら言った。


「スターシャ•レオーネの事かい?」俺はその名を聞き顔が青ざめた。


「何で知っているんだ?」俺は驚きを隠せず聞いた。


「私は何でも分かるよ勿論君の事もねジェイク•メロウ?」


「何で俺の姓を知っている?」俺の姓はスターシャにすら言った事が無かった。


「まあそんな些細な事はさて置き取引をしようか?」


「取引だと?」


「そう、実を言うと私は仕事である物を集めているんだ。しかもとびきり濃ゆめの奴をね」


「それって何なんだよ?」俺が聞くと、女は冷たく笑い言った。


「悪人の魂さ」


「魂?何でそんな物を?」


「君は察しが悪いね魂を集めるなんて奇特なやつは一人しか居ないだろう?」女は少し小馬鹿にした態度で言う。


「悪魔か?」


「惜しいね、もう一度チャンスを上げよう」俺はもう一つの答えを言った。


「死神か?」


「当たり!そう私は死神、名前はイルナよろしくね?」


イルナはそう言った後説明する。


「私の仕事は魂をあの世に導く事何だけど、最近この街は腐った輩が多くてね」


「それなら直接アンタが狩ればいいじゃねえか」俺がそう言うと。


「残念だけど私は直接干渉出来ないんだ、だから彼奴等の魂を回収するには奴等が死ぬのを待たなくちゃいけないんだ。」イルナが残念そうに答える。


「まさか、俺に奴等を殺せなんて言わねえよな?」俺は嫌な予感がして言うと。


「そのまさかだよ、君には私の代わりにゴミ共を始末して欲しいんだ。」


「俺には無理だぜ、死んじまってるしそれにあんな化物に勝てるわけないだろ?」


「そこは心配いらない君の身体に君の魂の欠片を入れる、そうすれば半分死人だがこの世に戻ってこれるよ」


「ゾンビになれって言うのかよ?」


「厳密にはフランケンシュタインの方が近いね」


他人事だと思いイルナはとんでもない事を言った。


「まさかその状態で生き返ったなんて言わないよな?」俺はイルナを問いただす。


「大丈夫だよ仕事を全て終わらせてくれたら元に戻れるようにするよ」


「仕事?魂を永遠に集め続けるのか?」


「そこは問題ないよ、あくまでもこの街のゴミ掃除が終わった後さ。」


「この街の悪党の魂と引き換えに君の生命を買い戻すのさ」イルナの言葉を聞き俺は笑った。


「全く死んでからも結局対価を払わなきゃいけねえのか」


「地獄の沙汰も金次第だからね、そして奴等を狩る手段だけどこれを君にあげるよ」イルナはそう言うと白いローブの中から一本の黒い棒を渡した。


「何だこれ?」


「君の一番得意な獲物を思い浮かべてご覧」


俺はそう言われ慣れ親しんだ獲物を浮かべた。


すると棒が変形し禍々しいナイフになった。


「何だこれ!?」


「それはデスサイズと言って私達死神の武器なんだ」


イルナはそう言って俺から武器を受け取ると。


「ちなみにイメージすればこんな物も作れる」


するとイルナの握ったデスサイズが変化し背丈程ある鎌に変形した。


「君にこれを貸すよ壊したり無くしたりしないでよ?」イルナがいたずらっぽく言った。


「それじゃあ説明は終わり、勿論最後に決めるのは君だどうする?」イルナは俺の目を真っ直ぐ見て言った。


「俺は必ず帰るとスターシャに誓った、その為なら何でもやるさ」


「いい返事だねそれじゃあ契約の記念に私から一つ贈り物をするよ」そう言うとイルナは自分の心臓を貫いた。


「何やってるんだ!」俺が焦って近づいた瞬間俺の胸が貫かれた。


「君には私の心臓を預けるよ、これで向こうに戻っても一緒に居られるよ」その言葉を聞き俺は眠りに落ちた。


「死んだわね、貴方の様な良い男は私が直接食べてあげる」ライラはそう言うと服を脱いだ服の下には巨大な口が付いておりジェイクの身体を飲み込もうとした瞬間。 


「喰われてたまるかよ醜い化物が!」


次の瞬間ライラの身体が横薙ぎに斬られた。


「グ!なんで生きている!確かに死んでいた筈!」ライラの身体は千切れかけていたが断面を付けると綺麗に繋がった。


「これがデスサイズか今ならこれを使いこなせる」


俺は頭の中で武器をイメージする、するとデスサイズが変形しショットガンに変わる。


「私に銃は効かないわよ!」ライラが向かってきた瞬間、俺は冷静にライラの口に銃口を入れて引き金を引いた。


派手な音と共にライラの身体が弾けた。


「何よそれ、全然再生出来ない」ライラは上半身だけで蠢いていた。


「イルナ留めはどうやるんだ?、、そうか分かった。」


「何一人で喋って居るのよ!このイカれた小僧が!」


俺は激昂するライラを無視して手をかざす。


「地獄に還れ淀んだ魂よ!」俺がそう唱えると俺の手から亡者が溢れ出しライラを引きずり込む。


「何よこれ!止めて離して!嫌よ!」


ライラは亡者に引きずり込まれ俺の体内へと入って行った。


「初めてにしては上出来だねジェイク」俺はライラが引きずり込まれた掌を見るそこには髑髏の紋章が浮き出ていた。


「これを後何回続けるんだよ?」俺は隣にいるイルナに行った。 


「この街が綺麗になるまでさ、まあもっと先になるけどね」


俺はイルナの言葉を聞きその場に座りこんだ。


「長くなりそうだな」


俺のその言葉は誰にも届く事無く部屋に響いていた。


第1話完   


第2話に続く。




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