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番外編11そして二人は(完)

 狩猟大会を終え、エルシーとライナスは共に城に戻ってきていた。いつもなら、領地にそのまま残っていたが、今年からは城でたくさんの勉強や執務の手伝いが待っている。


 執務がひと段落し、ライナスの執務室に新たにあつらえられた机の前で、エルシーは両手を上げて、体を伸ばす。


「エルシー、お疲れ様」

「殿下もお疲れ様でした」

「トレイシー、一旦休憩を入れよう」

「はい、では」


 自分の席で仕事をしていたトレイシーは、礼をして、執務室を出ていく。

 

 部屋の中には、ライナスとエルシーだけが残された。ライナスは立ち上がると、エルシーに手を差し出す。エルシーはその手を取って立ち上がった。


「外の空気を吸いませんか」

「いいですね」


 二人寄り添い、執務室の窓からバルコニーへと出て、外を見渡す。

 

 少し涼しくなってきた風が爽やかに吹いている。気持ちのいい陽気だ。エルシーは繋いでいない方の手で、髪を抑えた。

 

 バルコニーからは、広い庭、小さな林、城門が見える。何でもない風景が、ライナスと一緒なら、輝いて見えるような気がした。

 

「エルシー?」


 ライナスに名前を呼ばれ、そちらに顔を向ける。その途端、急に強い風が後ろから吹き、エルシーの髪を乱した。


「……いたずらな風ですね」


 苦笑まじりに、ライナスが手を離して、エルシーの髪を優しい手つきで整えてくれる。耳元の髪をすっと耳にかけられ、指がかすかに触れると、少しくすぐったい。


「ありがとうございます」

「いいえ」


 そのまま、ライナスの手は頬を包む。エルシーは、ゆっくりと目を閉じそうになり――


 遠くからかすかな話し声が聞こえて、ちらりと横目で庭を見る。女性の使用人達がこちらに注目していることに気づいた。


「あ!」


 見られていると分かった瞬間、エルシーは急に恥ずかしくなる。すぐにライナスの手から逃れて、ものすごい早さでその場にうずくまった。


 エルシーのその様子に、ライナスも追いかけるように屈み込む。二人の姿はバルコニーの手すりに隠れた。ちょうど柱の影になり、おそらく使用人からはもう見えていないだろう。


「仕方ないですね」

「まだ人前は……ライナス、ごめんなさい……」

「ふふ、大丈夫ですよ」


 顔を真っ赤にして、瞳を潤ませて謝るエルシーにライナスは微笑む。この顔を見るために、わざとやったなんて絶対に言えないなと思いながら、再度、エルシーの頬に手を添えた。


「今度はいい?」

「……はい」


 エルシーは今度こそ、きちんと瞳を閉じる。ライナスと触れ合うこの時間がたまらなく好きだ。幸せと喜びを感じながら、エルシーはライナスの愛を一身に浴びる。

 

 目下の悩みとしては、先ほどのように人目を気にしてしまうことと、キス以上のことを想像できないことだろうか。もちろん、そういうことの教育は受けているが、キスだけでこんなにいっぱいいっぱいになってしまうのだ。これ以上のスキンシップをしたら、それこそ心臓が破れるのではないかと少し不安になる。


「何か他のことを考えている?」

「!」

「今は私のことを、考えてほしいな」


 口付けの合間に囁かれる言葉に、瞳を開けると、ライナスの青い瞳が愛おしげにエルシーを見つめている。

 

 とろけそうになりそうなエルシーは、小さくうなずいて、もう一度瞳を閉じた。


 ◇


 数年後、ライナスとエルシーは国王と王妃になり、トレイシーたちと共に国を治めていった。

 

 隣国や海を挟んだ島国との交流も活発に行い、王国は豊かさを極めたという。

 

 国王ライナスの隣には、いつも幸せそうに笑う王妃エルシーが寄り添っていた。

 

 後に語り継がれた話によると、さっきまで大量にあったはずの執務が、次の瞬間には終わっているという不思議な話がよくあったそうで。

 

 けれど、その真相は、二人と側近たちしか知らない。

 

 唯一、確かに言えるのは、エルシーという王妃が幸せな人生を生きたということだけだ。

 

 今も城には、それを象徴するような、二人が寄り添って緑豊かな庭のベンチに座っている肖像画が飾られている。





ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

以上で、完結となります。

初投稿のため、至らぬところも多かったと思いますし、何度か心も折れそうになったのですが、読み続けてくださる方がいて、嬉しかったです。


また、

おもしろかった!

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ありがとうございました。

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