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目的と出会いとその前に

作者: 堆烏

「募集」、「川辺」、「巨大」、「ちょうど良い感じの木の棒」、「夕闇」、「夕立」

上記のお題を前提とした短編小説になります。

外に出るとき、まずは何を探すだろうか。

目的地へ行くことだけなら、目の前とスマホのサイトを探すだけ。

目的の人に会うだけなら、その人の姿を探すだけ。


君の目的は何だろうか。何の為に外に出るのだろう。

外に出るたび、目の前が暗くなる。

外を見るたび、頭の中が真っ白だ。


僕の目的は何だろう。何の為に外にでる。

誰も考えないような、どうでもいいような些細な問いに。

僕はいまでも囚われる。

君はいつもあきれ顔。玄関の前でいつまでも立ち尽くす僕にあきれ顔。


「そんなに悩みたいならいつまでも悩んでいいけどさ。

誰かに聞いてみてもいいんじゃない。一人で悩んでいないでさ。」


目の前に少し光が差し込んでくる。

頭の中がクリアに涼しい。

そうだ。誰も考えていないのならば、考えてもらってもいいじゃないか。


「ありがとう。本当にありがとう。」


振り返らずにドアを開ける。足取りは軽く外は明るい。

後ろからの声は小さくて聞き取れない。


「私に聞けって言ってんのよ。」


そんな呟きは、夢中の彼には届かない。






「君の目的は何だろう。何の為に外にでる。

外に出るとき、まずは何を探すんだい?」


急に公園で声をかけられた。この巨大なお兄さんは誰だろう。

と同時に、まだまだ僕は小さいことを自覚する。

せっかく幼稚園から小学生になれたというのに、世界はまだまだ広い。

だから、僕はもっと冒険しなくちゃいけない。

大人というよく分からない巨大なものと、いつか対応に戦わないといけない。

例え、まだ未熟でも、僕は立派になるしかない。

そのためには、武器や仲間が必要だ。外の世界は危険がいっぱいなのだから。


「そりゃ決まってるよ。これだよこれ!」


分かる人には絶対分かる。この握り心地、手ごろな重さ。長さ、形状。

ちょうどいい感じの木の棒は、冒険の序盤に必須の最強武器。


「お兄さんにとってはもういらない初期装備かもしれないけどね!

これ探さずに外に初めて出るなんて、もうダメダメだね!」


自信満々に告げる僕。びっくりして目をまんまるにしたお兄さん。

僕の言葉を聞くや否や、必死になって木の棒を探し始めたお兄さん。

ちょっと気分がいい。


「お兄さん。外はあんまり出ないんだね。しょうがないから一緒に探してあげるよ!」


公園には、茂みに二人でごそごそしてる兄弟のような二人がいた。

数分後、兄?の方が木の棒を天に掲げたその瞬間、二人の顔は晴れ晴れとしていた。






「君の目的は何だろう。何の為に外にでる。

外に出るとき、まずは何を探すんだい?」


「えっ。急に何ですか。ナンパは結構です。」


振り返った瞬間、ナンパじゃないことは分かったけど、変な人には違いない。

ちょっとよれよれのシャツとジーパンの大学生くらいだろうか。男がこちらを見ている。

そこに、木の棒を大事そうに抱えている時点で、少し・・・、いやかなり変な人度があがってくる。


「あ、いや・・・・。ナンパじゃなくて。あの、えと。」


想定外の回答だったからか、急に慌て始める。やっぱりどこか変な人。

危険そうじゃないけど、面倒くさい。第一、顔が私の好みじゃない。

適当に返事して逃げよう。


「そうですね!人間って過去をたどれば、実は陸じゃなくて海からって知ってますか?

生命の起源ってゆーの?本能的に水を探しちゃいますね~。いつも川辺はどこかなって。」


「川辺。。。生命の起源。本能。そうか、そうなのか。ありがとう!」


木の棒をぶんぶん振り回す男性。やっぱり変な人。

あーゆー人と関わり合いにはやっぱりなりたくないわ。

さて、服買いにいこーっと。もう無視無視ーっと。

無視だ。私。無視するんだ。。。。って



「あのーーーーー!そっちに川とかないんですけどーー!川行くならこっちですこっちー!!」


私は、変なことに突っ込まない、理想の私を常に探してる。いつ見つかるんだろうか。やれやれ。






「君の目的は何だろう。何の為に外にでる。

外に出るとき、まずは何を探すんだい?」


「ふっ。よくぞ聞いてくれた。この通の人しかしらない川辺スポットにわざわざ来たということは!分かっているんだろう。

そうだろうそうだろう。この私と会ったのはもはや運命!メンバーは常に募集中だ!

世界は時期に闇に覆われる!この私の手によってなぁ!私の目的はこの世界の反転!

内と外は決して別物ではない!混ざり合い、そしてカオスが生まれるぅぅ!夕闇に飲まれてなぁ!」


決まった。目の前の男は茫然とするだろう。厨二を決めるときには秘訣がある。

堂々としゃべること。恥ずかしがらないこと。1対1を狙うこと。

恥ずかしがらずに堂々としゃべったことに満足した俺は、背後から近づく子どもと女子高生に気づかなかった。


「あーゆー厨二病みたいな人には近寄らない方がいいわよ。あなた、変な人だけど

どっちかっていうと、変な人かまともな人かの区別が分かってない朴念仁っぽいから。」


「ねぇねぇお兄さん!あのへんな人、僕の木の棒とお兄さんの木の棒で成敗しよう!悪は倒さなきゃ!

で、このお姉さんは誰?」


余計な邪魔が入ってきた!しかも、この二人はそもそも知り合いじゃない・・・だと!?


「木の棒もってるのは、この坊やのせいなのね・・・・。頭が痛いわ。

なんでショッピングに行きたいのに私は川辺に変な人を案内して変な人と遭遇してるのよ!」


「そうか、内側と外側は別物ではないのか。外に出る目的ではなく内に留まる理由もあるということか!

ありがとう川辺の人!」


「お、おう・・・・。」


一人納得している男を中心に世界は周る。

厨二病の少年と、悪を倒そうと奮闘する小学一年生。疲れた顔で叫ぶ女子高生。

まさにカオスな空間に雨が降る。


「ほーら、雨が降ってきちゃったじゃない。坊やも家に帰りな。

お兄さんも待ってる人とかいないの?」


そういわれて思い出す。アドバイスをくれた彼女の事を。

何も言わず(いや、家を出るとき、何かを言っていたか?)家に留まったままの彼女を。

僕は、彼女にも聞かなくてはいけない。


君の目的は何だろう。何の為に内に居る。

内に居るとき、君はまずは何を探す。


「みんなありがとう。僕は帰る。でも、外に出る理由や探すものは、

みんなのおかげで何とか掴めそうな気がするよ!」


「よかったね!お兄さん!冒険者中級だね!また冒険しようね!」


「どうでもいいけど、私のせいで川辺だけを徘徊する不審者にはならないでね。頼むからさ。」


「あれ、もしかして渾身の俺の導入あんまりみんな聞いてない?

マジ?もういいや。帰って布団の中に閉じこもろう。。。」


思い思いに家に帰る。







私が外に出ないなか、あなたは今何をしているかしら。

外ばかりに目を向けて、私のことは気にもせず。


外で見える光景も悪くはないのは知ってる。でもね。

窓から見える景色も素晴らしいことを私はもっと知ってる。

遠くで鳴り響く雷龍の舞を

しとしと降りそそぐ水玉のダンスを

静かに穏やかに見たり聞けるのは、家の中でのお楽しみ。


急に来る夕立に、いつも私はうきうきと窓を眺める。

でも、もちろんそれだけじゃない。外に出て行った君の事。窓から探すのは君の姿。

傘なんてもってないあなたのことを、私は呆れた顔でいつも待つ。

そろそろかなって風呂も沸かして待っている。

ちょっと遅いと大丈夫かなって心配になる。

でも、無意識なのかどうなのか。

ちょうど心配になるころに、いつもすぐにあなたはいつも帰ってくる。

ドアを思いっきり開いて。

手にはちょうど良い感じの木の棒を握りしめて。

予想通りのずぶ濡れの情けない姿で。


「ただいま。そして急で申し訳ないけど教えてほしい。

君は、」


「その前に」


喋ってる途中の彼の頭にタオルをかける。ぐしゃぐしゃわしゃわしゃと拭いてあげる。


「ずっとあなたを待ってたのよ。いいから風呂に入りなさいな。」


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