♯12 永久機関は実在していた?!
ロナたちは手分けしてアウトドアテーブルを砂浜の端へ持って行き。
「今すぐ準備するから、ちょっと待ってて!」
その上に皿を八枚置いて。
見た目の白いあんまんと、黄色いカレーまんを四個ずつ交互に並べて置くと。
全速力で戻ってきた。
「はあはあ、待たせたな! さあ、誰がやる! 参加は4人以内だぞっ!」
「4人もいいのっ?」
タモちゃんたちは輪になった。
「この中で1番足が速いのは半ちゃんですよね!」と、鈴鹿。
「なんてったって忍者だし!」と、デッドリィ。
「半、やってくれる?」
タモちゃんの信頼に背くわけにはいかないと。
「わかりました! 勝利してみせます!」
半が気合いを込めて引き受けた。
「あたしもやりたい! やりたい!」
クライネが涎を垂らして呼びかけるので。
「じゃあ、クライネ! やってみる?」
「任せて! 絶対あんまん食べてやる!」
クライネも丸メガネを輝かせ、タモちゃんの手をぶんぶん握って気合い充分だ。
「タモちゃんとエターニャさんは背が小さいからそこで見てて! 足長コンビのデッドリィちゃんと鈴鹿ちゃんで、上位を独占してみせるからっ!」
半とクライネ、デッドリィに鈴鹿の四人が出そろったのだが。
ロナが半とクライネを指さして。
「そんなぽちゃぽちゃボディで走れんの?」
と小馬鹿にするものだから。
デッドリィと鈴鹿はふたりをかばって、セクシーポーズを見せつけた。
「ひがむな、ひがむな!」
「ヤケドしますよ!」
「おまえらのことじゃないっっ。永久お子ちゃま機関は黙ってろ! この全身扁平足!」
「ひどいっっ」
ロナが指を鳴らして合図をすると。
「こちらからは、まだ見ぬ強敵A・B・C・Dが相手だっ!」
まだ見ぬ強敵A~Dが前に出た。
いずれもモザイクがかかっているが、全員スレンダーで速そうだ。
半はポニーテールをキツく締め直し。
――タモちゃんに恩返しするチャンス!
クライネはぴょんぴょん跳ねて。
――誰も飛んじゃダメって言ってないしネ!
デッドリィは足首・手首をくねくねしながら。
――タモちゃんとの楽園ライフを死守!
鈴鹿はこっそりと。
「激走快走突っ走れ、ひとっ走りだ、韋駄天招来!」
疾走の神通力をささやいた。
――魔法はダメでも神通力はダメって言ってません!
そして。
まだ見ぬ強敵四人組と、火花を散らす。
砂浜に棒で書かれたスタートラインに総勢八人が立ち。
「よーい……、どんっっ!」
ロナが言い放つや否や。
半とクライネ、デッドリィに鈴鹿と、まだ見ぬ強敵四人組が同時にダッシュした!
半が体ひとつ抜け出して――。
あんまんを先に奪い取る!
続いてクライネ、鈴鹿、デッドリィもあんまんをつかみ取った!
「勝機っ!」
出遅れたまだ見ぬ強敵四人組だが。
ほくそ笑んで残ったカレーまんを奪取して。
八人全員が中華まんにかぶりついた、のだが!