♯9 不意打ちの前にはわかりやすい不意打ちを!
「離れてください! 物凄い魔力を感じます!」
鈴鹿がマジカリストの少女から、タモちゃんとジュテームを遠ざけた。
「そう来なくっちゃな。マジカリストがこんな脆弱なわけねえと思ったぜ!」
ジュテームが身構えると。
マジカリストの少女はすっくと立ち上がり。
宙に浮かび上がって。
タモちゃんたちを見下ろした。
「我が名はエターニャ。覚えておくがいい!」
幾本ものまばゆい虹がエターニャに降り注ぎ。
「はーーっ、はっはっはーーっ!」
高笑いをするエターニャは。
「はーーっ、はっはっはっはっはーーーっ!」
空の彼方へと。
飛び去って行ったのだった。
「……って、逃げんのかよーーーっ!」
「勝ち誇って退散しましたね」
ジュテームと鈴鹿が唖然として空を眺めるなか。
「エターニャか、実にタフな子ね」
タモちゃんはマジカリスト・エターニャの名を、心に深く焼き付けたのだった。
「タモちゃんもジュテームさんも帰りますよ。お風呂に入って、明日に備えましょう」
気力の抜けた鈴鹿に促され。
タモちゃんたちが背を向けて歩き出した、そのとき!
空の彼方が煌めいて。
「バカめ、油断大敵ーーーーーっ!」
エターニャが猛スピードで降下してきた。
そして炎を纏いしロッドをタモちゃんたちに打ち下ろす!
それを待っていたかのように。
「バカはてめえだ! 声をかけたら不意打ちの意味ねぇわっ!」
ジュテームが大地に埋まっていた巨岩を力任せに引っこ抜き、投げつける!
しかし巨岩は炎のロッドによって穿たれ、真っ二つに砕かれた。
割れた巨岩の合間から、現れ出てきたエターニャが!
「あーっ、お酒の特売だっ!」
ジュテームの背後を指をさした。
「なにっ! お酒だとっ?」
ジュテームが後ろに目を向けた途端。
「レッキ・エビ・ヒルアミ!」
エターニャの魔法が炸裂。
打ち砕かれた巨岩が炎を纏って、ジュテームに直撃した!
吹き飛ばされたジュテームは鈴鹿を巻き込み、遙か遠くで意識を失う。
「これで1対1ね。あんたたちなんか変身しなくったって余裕なのよ! これからエターニャ様の烈火で焼き尽くしてあげるから覚悟しなさい! この、エセ救世主!」