♯7 裏切り者だったんだーーっ!
鈴鹿がすっと挙手をして。
「アルフォンスさんに以前もらった魔法の豆があるんですけど、食べてみます?」
「まめ?」
その提案に皆が首を傾ける。
「アルフォンスって、あの毛生え薬の村長かっ……」
養毛剤を飲んでしまった悪夢が蘇って、タモちゃんの顔と髪が青ざめていく。
「ええ、飢餓があった時代には、ブタに食べさせて飢えを凌いだらしいです」
「ブタ……。クライネ、ブタみたいになっちゃうの?」
クライネが「それはやだな」と落ち込むが。
「いえ! 人が誤って食べちゃうと、しばらく巨人になるって言ってました。害はないそうなので、食べてみます?」
「クライネ、食べてみなさいよ! 何かあってもデッドリィちゃんがついててあげるから! 一緒にボール遊びをやりたいな!」
クライネは笑顔を取り直して。
「鈴鹿さんとデッドリィしゃまがそう言うなら!」
ハートを描いて飛び回った。
「よかった! これがそのお豆さんです!」
そう言って。
鈴鹿はワンピース水着の谷間から、ピンク色の豆をひと粒取り出した。
「さあ、食べてみてください!」
「いまどこから出したのーーっ!」
鈴鹿に手渡されて。
クライネが豆を抱え込む。
「クライネが持ったら、スイカくらいのでかさだな!」
エターニャは好奇心の目を向けた。
「煎ってあるようですけど、堅いですか?」
半の質問に。
「ううん、蒸かしたみたいに柔らかい。それに美味しそうな匂いがする!」
クライネが興味津々の目つきになった。
みんなが注目するさなか。
クライネは大きなお口を開けて。
豆にかぶりついた!
思った通り、歯がすっと入って。
もしゃもしゃ、ごっくん!
「なにこれ、あまいっ!」
クライネが身をよじらせた途端に。
体がググンと!
「クライネ、大きくなっちゃった!」
ちょうど半と同じくらいの背丈になって、クライネが飛び跳ねる。
「タモちゃん、これでみんなと遊べるーっ!」
「よかったじゃない!」
クライネがタモちゃんに抱きついて、微笑ましく喜び合っていたのだけれど。
意外なまでに、クライネがグラマラスだったものだから!
「なんなんですか、その完璧なプロポーションはーーっ!」
「えっ?」
「クライネは、裏切り者だったんだーーっ!」
「ええーーっ??」
鈴鹿とデッドリィが目を三角にして泣き出した。
「なにが裏切り者なの~~っ? ね~~っ?」
思いも寄らない事態になってしまって。
オロオロと困惑しているクライネに。
半がそれはそれは嬉しそうに抱きつくと。
「似た者同士、仲良くしましょうねーーっっ!」
たわわに実ったツーショットを、これ見よがしに見せつけた。