♯21 ボクたちの最高
「これで最期にしてあげて!」
デッドリィが涙ぐむなか。
半と鈴鹿は頷き合って。
「魔忍法、堅守がた減りの術!」
半が傀儡に被害甚大の魔忍法を詠唱し。
「底上げ逓増引き伸ばせ、下駄を履かせろ、増幅招来!」
鈴鹿が威力増大の神通力を唱えた、そこへ!
「妖力フリーイング!」
タモちゃんの髪の毛が、光輪に染め上がっていく――。
「エターニャ!」
「全力魔法で行く!」
タモちゃんとエターニャは手を取り合い。
「円光燦然! 囚われの縛りを突き崩せ!」
「ウィオ・ロ・キレーキ・エビ・ヒルアミ!」
至高の術を唱え合う!
「ヅメンシテルーテ・ゾ・シテレングシテ・モザコリ・ポワッ!」
「火炎羽衣一角獣爆砕大聖撃!」
幾重にも重なる光の輪のなか。
額に角を有した銀白のユニコーンが現われた!
たてがみや蹄、鋭い角に火炎の魔力を宿らせると。
前足を蹴上げて、気高くいななき。
聖なる光輝を放ちながら。
傀儡の体を刹那の速さで貫き抜けた!
そして大爆裂!
世界が白い光に塗りつぶされ。
傀儡の断末魔が大気を穿つ――。
須臾にして、天地に色彩が戻ってきたころ。
タモちゃんたちの目の前から――、傀儡は姿を消していた。
「傀儡……」
タモちゃんが悲しげに言葉を漏らす。
「消滅したのか……?」
エターニャは片膝をついた。
「ボクたちの最高をくらったんです」
「魔力は……もう感じられません」
鈴鹿と半がしんみりと事実を告げる。
「クグツッ、やっと自由になれたねっ……!」
デッドリィは涙を拭って笑顔を作った。
タモちゃんたちは支え合って。
大地を踏みしめる。
「お前ら……、帰っぞ。帰る家があればだけどな」
ジュテームが皆の背中を押して歩き出したとき。
なにかちんまりしたものが目の前を通り過ぎた。
「わっ、でっかい蚊だっ」
タモちゃんが叩き潰そうと身構えるや否や。
「マッテ! マッテーーッ!」
小さな声が聞こえてきた。
みなが眉を寄せて。
目を凝らした先に……。
「傀儡かーーーっ?」
蚊ほどに小さくなった傀儡が飛んでいた!