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♯8 変身こそ最大の!

 ピラミレージの丘で待ち構えていたマジカリストの軍勢たち。


 篝火でできたゴーレムの大軍だ。


 その燃えさかる中央に立ち。


 ひときわ異彩のオーラを放っている、マジカリストと思しき指揮官は。


 なんと、タモちゃんと同じくらいのちびっ子だ。


 ストレートの髪をふたつに束ねて垂らし下げ。


 あどけなさの残る愛想で、悪い笑顔をしている彼女が身に纏うのは、火種色をしたクリムゾンのワンピース(ローブデコルテ)で。


 大きく開いた胸元に手をあてがい、長い裾をふわりと揺らす。


「お前が救世主のタモちゃんか。今から変身するから、指をくわえて見ているがいい!」


 マジカリストの少女は炎のオブジェがついたロッドをくるくる回して、バトントワリングのようなダンスをしながら変身し始めた。


 そこへタモちゃんはツカツカと歩み寄り。


「妖術を使うまでもない!」


 マジカリストの少女の頭を殴打した。


 少女は変身なかばで、ばったり倒れた……。


「いま縛り上げてやる! このマジカリストの阿婆擦れめ」


「まっ、待て! この卑怯者っ……」


「なによ、まだ殴られたいの?」


「ちがう! 変身が終わるまで待つのが礼儀だろ!」


「そんな礼儀は知ったことか! 嫌なら最初から変身して出てきなさいよ!」


「それは言わない約束なんだぞ! 誰も見てないところで変身するんじゃ、キラキラに演出する意味がないだろ!」


 その言い分にタモちゃんはギョッとした。


「まさかあんた、みんなに見られて興奮するから、わざと人前で変身するんじゃないわよね!」


 タモちゃんの鋭利な追及に。


「そ、そこは察してよ!」


 マジカリストの少女が激しく赤面する。


「ヘンタイ!」


「ヘンタイじゃないのっ! お前も一度やってみろ! 癖になるからっ!」


 目をうるうるさせて訴えるマジカリストの少女にタモちゃんは。


「まあ、注目を浴びると快感なのは、わからないわけでもないけれど」


 肩をちょこんと上げてため息をつく。


「だろっ!」


「しょうのない人。見ててあげるから変身しなさい!」


「いいのかっ?」


 マジカリストの少女は目をぱあっと輝かせて。


 嬉々として立ち上がると。


 ロッドを回してのびのびと変身し始めた。


「嘘だって事ぐらい察しなさいよっ!」


 マジカリストの少女はタモちゃんに殴打され。


 その場にばったり倒れて気絶した。


 たった二発のげんこつで、マジカリストを退治してしまったタモちゃんを。


「さすが救世主、血も涙もないですね!」


「ガキは容赦ないからな!」


 鈴鹿とジュテームが感服する。


「誰がガキよ! あんたも殴られたいのっ!」


 ジュテームとタモちゃんが反目するのを鈴鹿がまあまあと。


「マジカリストにこんな攻略法があったことは大きな収穫です!」


「俺たち今まで遠慮して見てたもんな。で、こいつどうする?」


「どうして救世主(あたし)のことを知っているのか、無理矢理にでも吐かせるのよ!」


 タモちゃんたちが手足を縛ろうとした、そのとき。


 殴り倒したマジカリストの少女が含み笑いをしたかと思えば。


 おぞましい邪気を放ち始めたのだった。

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