♯12 あした天気になーぁれ!
「目隠しで効果があるかわかりませんけど、せっかく作ったのを捨てるのは可愛そうですし!」
「それもそうだ。よいしょ、よいしょ。これで、よし!」
目隠しをしたてるてる坊主を、三人で窓際に飾りつけていく最中に。
ひとつ、タモちゃんが落としてしまった。
タモちゃんはすぐに拾うことなく、手をにぎにぎしたり、手首を振ってみたりしている。
「どうしたの?」
エターニャが代わりに拾い上げると。
「ケーキ作りで握力使いすぎたかな……?」
タモちゃんは小首を傾けた。
「ハンドミキサーとか、ちょっと重かったかも知れませんね!」
そうかも、と、三人で笑い合う。
窓に飾りつけられた目隠してるてる坊主の数は全部で10体。
「目がないと……」
「なんか恐いわね……」
「見慣れない感は否めませんけど……、信じましょう!」
エターニャとタモちゃんと鈴鹿は改めて明日の晴天をお祈りしたのち。
「おやすみー」
「おやすー」
「おやすみなさい」
寝室へと別れていったのだった。
入れ替わるようにして、デッドリィがお水を飲みにリビングへやってきたのだが。
そこで首から吊された、たくさんの目隠しされてる、てるてる坊主と遭遇してしまって。
「ひーっ、なにこれっ、黒魔術ーーっ?」
びっくり仰天!
腰砕けのままタモちゃんのベッドへ逃げ込んだとか、拒絶されたとか。
大丈夫かなあ。
こうして、おのおのが明くる日を楽しみにして、眠りについたのでした。
そうして。
翌朝になって――。
突如、爆音が鳴り響いた。
激しい揺れでベッドから飛び起きたタモちゃんが。
「地震っ?」
キツネ耳のヘアバンドを着けて、窓に目をやると。
「なんで赤いのっ?」
部屋を駆け出て。
外へ飛び出してみると!
「火がいっぱい落ちてくるっ!」
赤黒く光る天空から、焼け焦げた岩の雨がたくさん降ってきた。
町並みが燃える異臭に鼻を押さえ。
逃げ惑う人々の悲鳴が鼓膜をつんざくなか。
煙立ちこめる店先に、誰かが倒れている!
その、バーテンダー風の背中姿はまさか――。