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♯10 第一印象って大事!

 そして――。


 夕暮れがやってきた。


 タモちゃんたちはリビングに集まって、鈴鹿に熱い視線を投げかける。


「それでは初日のケーキの売り上げを発表したいと思います!」


「わーい!」


 拍手がわっと湧き上がる。


「ひとりワンホールずつ作って、それを8等分にしましたよね。そこからジュテームさんのをひとつ差し引くと、全部で39個あったわけですが」


「わくわく」


「すべて完売しちゃいましたーーっ!」


「おおーーっ」


「1日目からすごいじゃない!」


 タモちゃんたちはガッツポーズだ。


「それでも3900円なんですけどね」


 鈴鹿が少し残念そうに微笑むと。


「やっぱり1個100円は安すぎよね!」


 デッドリィも笑顔で不平を言い放つ。


「その中でも、1番早く売りさばけた人は誰だと思いますかぁ?」


 鈴鹿が挙手を誘うや否や。


「あたし、あたし!」


「こればかりはタモちゃんでも譲れませんよ! 拙者の勝ちです!」


「やっぱり見た目がナンバーワンのデッドリィちゃんでしょ!」


「計算ではエターニャのいたいけなスマイルにぞっこんだったはず!」


 みな自信満々だ。


「1番早く売りさばけた人はぁ……」


 鈴鹿が答えを溜めに溜めて……。


「ごくり……」


「半ちゃんでしたーーっ! 記録97分です!」


「やったーーっ!」


 半が飛び跳ねる。


 一方、デッドリィは落ち込んで。


「がーん、客は年上好みだったか……。味では負けてないはずなのにぃ……」


 悔しそうに舌打ちするが。


「でもポップには年齢を書いてないですし、第一印象(みため)で選んだんだとしたら……」


 そうつぶやく鈴鹿と共に、デッドリィは半をねっとりと見定めて。


「なっ、なんですかっ……?」


 あるひとつの答えにたどり着き――。


「お(ねげ)えだっ、あたしらにも幼妻の色気を分けてくだせえ!」


「なんでもしますからあ!」


 半にすがりついて。


 腹いせに、いろんな所をくずくりだした!


「うひひーーーっ」


 そこへタモちゃんとエターニャがぽろっと。


「負けたのは色気というより」


「清純さでは」


 とどめを刺すと。


 デッドリィはガクリとくずおれた。


「あたしのどこが不純なのーーっ!」


「どさくさに紛れて、脇腹のお肉を揉み揉みしているところでしょうがーーっ!」


 すがりつきながら、ぷにぷにとつまみ上げているデッドリィの手を、半がぎゅっとねじり上げる。


 デッドリィはバレたとばかりに、ぷっと吹き出して。


「くしょお! 愛人に寝取られろっ! 寝取られろっ!」


「愛人なんか、いるくぁあっっ」


 過剰なスキンシップで半にじゃれつくのであった。


 鈴鹿はなんとか笑顔を取り直して。


「ちなみに、39個売り切れるのに2時間かかりませんでした!」


 これはこれで、「おおーっ」と歓声が上がる。


「半ちゃんが1個少なかったことを考慮すると、実はみんな(わず)かな差だったと思います!」


「なぁんだ、それを早く言ってよーっ!」


 デッドリィがコロッと明るくなる。


「とりあえず完売して良かったです! さっそく報告しに行きましょーーっ!」


 鈴鹿たちは大人のケーキ屋さんの開店準備をしているジュテームのところへ訪れて。


「ジュテームさん、はい!」


 売上金を手渡した。


「いいのか? おまえらの小遣いにしたっていいんだぞ?」


「いいの、いいの!」


 タモちゃんたちは充実感のある恵比寿顔を振りまいた。

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