♯7 エディモウィッチの謎
ケーキ作りも終盤に差し掛かったころ。
話柄はエディモウィッチのことへと転じていた。
「ねえ、デッドリィ。エディモウィッチって、どんな容姿してるの? 男なの? 女なの?」
タモちゃんが話を振ると。
「男のような気もするし。女のような気もするし……」
デッドリィからあやふやな答えが返ってきた。
「それはどういう意味です? 中性的ってことですか?」
鈴鹿の問いに。
「見たことないのよねー」
デッドリィが上の方をぼーっと見つめるものだから。
「幹部だったのにっ?」
タモちゃんはデッドリィの顔を覗き込んだ。
「エターニャさんは見たことある?」
デッドリィに聞かれたエターニャも。
「赤ん坊の頃、抱かれた記憶がある。でも顔が思い出せない」
おぼつかない表情だ。
「物心ついてから会ってないの?」
「よく考えてみると、会ってないな」
「1度もですかっ?」
「1度も」
タモちゃんと鈴鹿は「信じられない」と顔を見合わせた。
「半は?」
「瑠璃色の神に設定を与えられただけなので、エディモウィッチが何者なのか、拙者はとんと知らないです」
「なにそれっ」
タモちゃんが唖然となる。
「じゃあ、エターニャさんやデッドリィちゃんはどうやって、どこどこを攻めろとか命令を受けてたんですか?」
鈴鹿のもっともな質問に、エターニャとデッドリィは昔を想起させながら。
「夢で命令書を渡されるんだ」
「そうそう! どんな姿をしてるのかわからないアングルなのよね! なぜだかわからないけれど、手渡してきた人物がエディモウィッチだってことがわかるの」
「うむ。起きたら、夢で見た命令書が実際にあるから、あの方の命令だと受け入れるわけだ」
「あたしたちはそれに従ってただけなのよねー」
「よくそんなので主従関係が成立してましたね」
鈴鹿が呆気にとられてふたりを見つめる。
「不思議なんだけど、いつも傍らにいる感じがして、不安な気持ちは一切生まれなかった」
「目にしてないけど、いつも会っている感覚なのよね」
エターニャとデッドリィが頷き合う。
「マジカリストを辞めた今でも感じてるの?」
「ううん。今はもうぜんぜん」
デッドリィがタモちゃんに首を振る。
「エターニャも勘当されてからは皆無だな。急に心細くなった衝動で、タモちゃんたちにこうやって、近づいたくらいだし」
「ボクたちが仲間になることを想定していたんでしょうか」
鈴鹿が顎に手をあて推測すると。
「謎多き人物ですねえ!」
半があははと一笑した。