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♯1 真夏の学校

 朝七時の学び舎は静まりかえっていた。


 窓の外からは動き出した町の喧騒とともに、運動部の朝練のかけ声が聞こえてくる。


 日はすでに高くなっていて。


 少しモワッとした空気が匂い立つなか。


 空は入道雲の白と濃い青が支配していた。


 今日は週初めの月曜日。


 でも夏休みの真っ只中だ。


 だから生徒は誰もいない。


 手洗い場にある蛇口はちょうど五個。


 みんな鏡の前でせっせと朝の身支度をする。


 右端にいるのは、学校へ皆を連れてきた鈴鹿だ。


「今日もいいお天気ですね!」


 夏休みだというのに、学生が学校に行くときは制服が本分と、律儀にセーラー服を着ている。


 まとめた髪を髪飾りで下げ降ろすのがいつものスタイルだ。


 鈴鹿の左手にいるのがデッドリィで。


「お日様たっぷり。紫外線もたっぷり。クリーム塗るの面倒くさーい」


 ナイトウェアのままと思われる、黄色のTシャツに白の短パン姿。


 自慢の脚はむくみ知らずで、まぶしく輝いている。


 髪はお団子頭にするのだろう。


 せっせと髪を整える。


 デッドリィの左にいるのは、少し背が低い(ハン)だ。


「拙者みたいに肌を隠せばいいんです。これは見た目は暑そうですけど、汗は速乾するのに雨風や紫外線は通さない、伸縮も通気も抜群の魔法素材なんですよ! 着ているほうが涼しいのです!」


 短距離走の選手が着ているような、黒いタンキニ風の服装で。


 それ以外の首から下は、半分透けた黒い生地でピタリと覆われている。


 現代に忍者がいたら、こんな格好かも知れない。


 その左隣には身長100センチほどのエターニャがいて。


 キャミソールのようなパジャマを着ながら、半開きの横目で半の腰をチラ見する。


「そこはかとなく、自分は体のラインに自信があると言いたいのだな……」


「言ってませんよぉっ」


「だってそんなピチピチの服、普通の女子が着られるか! これだからお色気担当ってやつは、もう!」


「だから、お色気担当じゃないんですってばぁ!」


 トレードマークのツインテールの、綺麗なジグザグ分け目をつくるのに悪戦苦闘しているようだ。


 そして左端にいるのが我らがタモちゃん。


 背丈はエターニャと同じくらいで。


 キツネ耳のヘアバンドに、キツネ柄のパジャマを着ている。


「半ってさ、ホントに純真だから、ついついからかいたくなっちゃうんだよねぇ。正にいじられ(あいされ)キャラの(かがみ)だよぉ!」


 タモちゃんが褒めてあげると。


「えっ、そんなぁ! タモちゃんは拙者のことを見抜いてくれてたんですね! 照れちゃいますぅ!」


 半がおだてに乗って、体をくねらせるものだから。


「うんうん! それで、どうやって男をたらし込んでるのっ?」


 にやけた声でささやきかけたら。


「ぐぁはっ、たらし込んでぬぁああいっ」


 半が真っ赤になって弁解するので。


 そんなお決まりのパターンにタモちゃんは噴き出しながら。


 少々とっちらかった姫カットの銀髪のまま。


 ぐしゅぐしゅと歯を磨く。


 目はだいぶ眠そうだ。

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