♯20 半ちゃん、大ピンチ!
「これぞ豪快豪傑、堅塞固塁、頭隠さず臍隠せーーーっ!」
ジュテームの鉄壁で難を逃れた鈴鹿たちだが。
突然のハプニングで驚天動地の茫然自失になっている。
地の底へ沈みゆくがしゃどくろの手から、タモちゃんは半を引っ張り出して。
危機一髪!
安全な場所まで飛びさがる。
そのまま飲み込まれると思っていた半は、意想外の救出に唖然となって。
「なぜ拙者を助けたの……?」
タモちゃんの目を見つめ返すと。
タモちゃんは胸を叩いて。
「だってあたしは、この世界の救世主だもの!」
スマイルを炸裂させた。
「タモちゃんが救世主……?」
「世界征服を目論んでるのは、エディモウィッチの方なのよ!」
それを聞いた半の目に。
涙が溢れ出していく。
「そ……、そんなこととはつゆ知らず。拙者はなんてことを……。死んでお詫びを!」
半が両刃の苦無を取り出して、自身の首を突こうをしたものだから。
「半の技、すごいじゃない! 一緒にエディモウィッチを退治しよ!」
タモちゃんがぎゅっと押し止めた。
「行くところがないなら、うちにおいで! ジュテーム、いいでしょ!」
タモちゃんの精気みなぎる眼差しに。
「貧乏になっても知らねえぞ」
ジュテームがしょうがねえなあと肯んずる。
「来てもいいって!」
タモちゃんがウインクしてみせると。
半は涙をこぼして。
「拙者の命、タモちゃんにお預けいたします! なんなりと命令してくださいね!」
くしゃくしゃな笑みを振りまいた。
デッドリィと鈴鹿とエターニャは、半の手を取り、起き上がらせると。
「あたしのタモちゃんからプロポーズを受けるだなんて、いい度胸してるわね!」
「タモちゃん、これ以上の不貞は許しませんよ!」
「親友として、タモちゃんにふさわしいかどうか、身体検査をさせてもらおうか!」
三者の嫉妬がゴゴゴとにじり寄る。
「人間関係は半に任せたーーーっ!」
タモちゃんは脱兎のごとく逃げ出した。
「え? タモちゃん、ちょっとーーーっ!」
半が手を伸ばし、タモちゃんに助けをすがるなか。
逃亡したタモちゃんを追いかけることなく、横目だけで見過ごしたデッドリィと鈴鹿とエターニャは。
「ところでさ、お肉はちゃんとくれるのよね!」
「A5ランクの牛さん1頭分の約束です!」
「霜降りステーキ! 霜降りステーキ!」
半に欲にまみれた瞳を光らせる。
みなの視線を一身に浴びて。
「あ、あゃ、あのあのっ、じつは、そのっ……」
半はしどろもどろになって。
「ごめんなさ~~いっ!」
飛ぶように地面に跪いた。
「あれはタモちゃんたちをおびき寄せるためのウソだったんですぅ! 用意してませんーーっ!」
両手をついて、華麗に土下座する。
「え……、ステーキないのーーーっ?」
「そんなことじゃないかと思っていたわ」
「それじゃあ代わりにと言ってはなんですが……」
エターニャとデッドリィと鈴鹿が、イタズラ顔で頷き合うと。
「そーれっ、お色気担当の服を引っぺがせーーっ!」
「やはーーーーーっ!」
春めいた野獣のように、飛びかかったのでした。
半ちゃん、大ピンチ!
こうして半という仲間がまたひとり増え。
ジュテーム・ファミリーがいっそう賑やかになったとさ。
第3章 おしまい!
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