♯19 阿鼻叫喚!
「なんなんれすか、ふたりで、仲良くしちゃっれーっ!」
鈴鹿が落書き動物を抱きしめながら、のっそのっそと近づいてきた。
とろんとした鋭い目つきで。
顔は耳まで桜色になっている。
「えっ、どうしてこの人、酔ってるのっ?」
半が目を凝らすなか。
「酔ってりゅかあああっ!」
鈴鹿が急に怒りをぶちまけだした。
「お化けがそんらに欲しいらら、これれもくらえ~~~っ。死霊骸骨魑魅魍魎、百鬼が夜行だ、化け物招来!」
畳がぼかんと盛り上がったかと思えば。
巨大な鬼のガイコツや。
隻眼の餓鬼入道が。
畳の床を突き破って這い上がってきた!
「化け物招来!」
「化け物招来!」
ぽっかり空いた大穴からは、物の怪と思しき軍団がわらわらと飛び出してくる。
巨大妖怪たちは天井を突き破り。
力任せに屋敷を破壊し始めた。
壁は倒され。
畳も投げ飛ばされていく。
「や、やめろよぉ! 造るの大変だったのにーーっ! ひゃっ」
半がドカンと踏み潰されそうになったとき。
――術が解けた!
タモちゃんは翻って。
巨大ガイコツの頭へと駆け上がってゆく。
時を同じくしてカエルさん雨合羽も消え。
正気を取り戻したジュテームたちだが。
なんと、その目の前に。
出刃包丁を持ったおかっぱ頭の鬼婆や。
ひん剥いた目玉に、牙を生やした口さけ女。
鎌のような鋭い爪を生やしたろくろっ首の大軍が、一斉に襲いかかってきたものだから!
「うぉおおおっ、なんだよコイツらーーっ」
「この異形の屍人形はなにーーーっ」
「これがジョポンのお化け屋敷かあっ。興味深いが、こっちに来るなあああっ」
「ありぇーーーっ、ボクなんかやりましたっ? ねえっ、ボク、なんかやっちゃいましたかあああっ」
まるで退廃的なイカれたギャングに見つかったのと、天変地異とが重なったかのような、みな乱痴気騒ぎのパニック状態!
がしゃどくろの骨の手が、半を捕らえて持ち上げた。
果たして、ひと飲みに喰らいつこうとした、そのとき。
タモちゃんはがしゃどくろのてっぺんで、角をつかんで仁王立ちになった。
そして念を撃ち込み。
「妖力フリーイング!」
髪の毛がエレキ色に染め上がっていく――。
「大地へ飲まれよ! 紫電一閃! 万雷網鳴神の大繋縛!」
タモちゃんから発せられた莫大な電流が。
がしゃどくろの骨を伝って鉄条網のように放電した。
すべてのものが電撃に捕らえられた直後!
地の底からいかづちの手の窪が現われて。
妖怪たちを鷲掴みにして握りつぶすと!
奈落へ引きずり込んでいく――。