♯13 テコ入れじゃないですよ?
「タモちゃん、待ってーーっ」
「危ないですよーっ!」
なかなか進もうとしないデッドリィと鈴鹿に対して。
「早く進まぬと、足下が危うくなるぞ」
太っちょ忍者が警告を発した直後。
足場の敷石が体の重みでヒビが入ってきた。
「ひひーっ、ヒビがーーっ」
「ひひぃ、ヒビがって、なにそれ、だじゃれ? アッハハ! 鈴鹿ちゃん、ちょっと痩せなよ。あたしなんて軽いからぜんぜん平気よ!」
なんて言った傍から、デッドリィの足場が勢いよく崩れ始めた。
「うそでしょーーっ」
「はやく飛び移れ!」
ふたりとも慌てでジャンプ!
ジュテームの腕へしがみつく。
無事な敷石に飛び移りながら、幅広い廊下を進んでゆくと。
竹槍剣山から、満々と水を湛えたエリアに突入した。
敷石だと思って飛び乗ったものは、一対のまあるい形の履き物で。
中央に靴を固定するためのビンディングがついている。
「なにこれ、なにこれーーっ?」
子供タモちゃんがはしゃいで水をパシャパシャさせる。
「それは水遁の術の道具で水蜘蛛というものだ。それを使って進むのだ!」
太っちょ忍者が水蜘蛛を装着して、スイスイと水面を前進してみせる。
「進むったって、立ってるのがやっとよぉっ」
「だめっ、足がっ、閉じてられませんっ」
足を閉じようとするデッドリィと鈴鹿だが。
水の上で履く水蜘蛛が、大きな浮力で滑ってしまってどうにもならない!
「この軟弱娘が! 日頃から鍛えておかねえからそうなるんだ!」
「そういうジュテームだって開脚寸前じゃない!」
「生まれたての子馬みたいになってます!」
ジュテームもデッドリィも鈴鹿も、もう踏ん張っているのが限界だ。
それに対して子供タモちゃんとエターニャは。
「タモちゃん、アメンボになった!」
「エターニャも忍者になれるかも!」
と、ぎこちないながらも水の上を進んでみせる。
「なにをグズグズしている! 早く先に進まぬと、サメに食われるぞ!」
太っちょ忍者が指さす前方から。
水面を切って。
巨大な背びれが向かってきた。
「ちょーーっ、鈴鹿ちゃん、どうしよーーっ!」
「デッドリィちゃん、あれ、サメじゃないですよ! 背びれを持って泳いでる、スケベ顔の男子ですーーっ!」
「ぐえっへっへ~~」
「いつの時代の少年マンガよっっ」
デッドリィたちの叫び声を、背びれの波しぶきで打ち消しながら、サメ男子がタモちゃんを!