♯21 思いよ、届け!
そのとき折しも。
ポータルが現れて。
鈴鹿が学校から戻ってきた。
空間ごと氷づけになっているタモちゃんたちを目の当たりにして。
「ジュテームさん、遅くなりましたっ。って、ひええーーーーーっ!」
にわかに色を失い。
大慌てで灼熱の神通力を詠唱する!
「燎原白熱間欠熱、肢体に帯びよ、焦熱招来!」
タモちゃんたちの体が熱した鉄のように輝きだした。
体から噴き出る高温に、氷が一気に気化して――。
ついには派手に破裂する!
「タモちゃんっ、ジュテームさんっ、それに誰っ、エターニャさんがなんでっ? みなさん、大丈夫ですかっ?」
鈴鹿がオロオロ寄ってきたのを、タモちゃんは制止して。
「来るな! この力を利用する!」
「あらあら、やるじゃないの。今度はあなたが告白して見せて? わたしの心を掴みたいなら、見惚れるような本気を出してごらんなさい!」
デッドリィが氷の防壁を張り巡らせていくなか。
「デッドリィ! おまえにあたしの思いを撃ち込んでやる! 受け止めてみろ!」
冷気の残る大気や大地に念を撃ち込むと。
「妖力フリーイング!」
タモちゃんの髪の毛が絶対零度に染め上がっていく――。
「凍てつき止まれ! 雪嵐吹雪よ! 懸氷鉾白虎殺氷弾!」
突如降り始めた土砂降りの雨粒が、大地に触れる間もなくすべてが凍り付き。
氷雪と変化した途端!
激甚な猛吹雪がタモちゃんたちを取り巻いて、雪あらしの竜巻から大白虎が呼び起こされた!
デッドリィを睨み据え、猛々しく咆哮を上げるや否や。
虎口から巨大なつららがぶっぱなされる!
つららは氷壁を打ち破り。
デッドリィの胸に直撃!
その衝撃で数多の屍人形が吹き飛ばされていく。
氷霧が裂いたように晴れ。
デッドリィも消し飛んだかと思われたのた。
のだが!
「氷のマジカリストを氷で打ち負かそうだなんて……、なんて小憎らしい子……」
片膝をつきそうになりながら、デッドリィは立っていた!
すぐさまジュテームとエターニャが、追い打ちを仕掛けようとした、それを遮って!
「でも、そこがトキメキよねーーーっ。キュン、キュン、キュ~~~~ンッ!」
胸を押さえてデッドリィが大絶叫!
「あなたの痛み、突き刺さったわああっ!」
デッドリィがタモちゃんに飛びついて。
愛情深~くキスをする。
「ひ~~っ、なに考えてんだ、おまえっ!」
「力尽くで認めさせてやるって言ったじゃない! そういうの大好物なの! 今日からわたしはあなたの恋のお人形よ! ちゅばばばばっ」
「認めさせるって、そういう意味じゃなぁああい! ひゃ、ひゃめれ~~~っ!」
タモちゃんがマシンガン・キスから逃れようと暴れるが。
エターニャとジュテームと鈴鹿の三人は。
「タモちゃんってば、デッドリィに百合を強要させたかったんだな!」
「百合というより、ありゃもはや、18禁じゃね?」
「タモちゃん、やらし!」
「そういう意味じゃないって言ってるのにっ! たしゅけてぇーーっ! にゃはーーーーーっ」
タモちゃんが救いの腕を伸ばしているのを。
それはそれはニヤついた目で、意地悪く見守ってあげるのだった。