♯20 鮮烈魔法
タモちゃんが四つん這いになって滅入っていると。
「なにをヘコんでいるの? 堕天使を苦しめてるってことは、やっぱりあの瑠璃色の変なヤツ、神様だったのね。ちょっとは功徳を積めたのかしら! やった!」
デッドリィが頬に手をあて、嬉しそうにぴょこんと飛び跳ねる。
「おまえ、屍人使いのくせに神を慕っているなんて、本当はいい奴なんじゃないのか? なんでエディモウィッチに仕えているの?」
タモちゃんが不思議そうに尋ねると。
デッドリィは心外だと言わんばかりに目を見開いて。
「わたしは普通に善人よ? エディモウィッチさまのやってることもすべて善行なのに、なぜか、ほとんどの人が気づかないのよね」
「おまえにとって、善とはなんなの?」
「力こそ善よ。いつの時代も強者が善で、弱者は悪と決まっているもの。歴史はそう教えているでしょ」
「そういう考えか。なら、あたしがおまえに勝てば、あたしを善だと認めるか?」
「そうね、仲良くしてあげる」
「よぅし。力尽くで認めさせてやろうじゃないの。氷魔法が得意だって言っていたわね。見せてみなさい!」
「そのつもりだけれど。知らないわよ。うふふ……」
デッドリィが魔力を集中し始めると。
体中に霜ができて積もり始めた。
それらは体を伝って地面に霜柱を立て。
タモちゃんたちの足元にも広がっていく。
「なにが起こってるんだっ?」
「お嬢、大丈夫かっ?」
エターニャやジュテームが不穏な気配を感じ取るなか。
デッドリィが氷結魔法を発語した!
「テイザ・ヒヤノコ・ヒヤホザム。ツンタユ・アッカナ・ケエラチク!」
気温が急激に下がったと思いきや。
デッドリィの周囲の空気が丸ごと昇華。
冷え固まった!
固体化した大気の中に、屍人形もろともタモちゃんたちが閉じ込められている!
「鮮やかに死になさい。アッハハッ」
デッドリィの高笑いが氷を伝って、タモちゃんやジュテームやエターニャの鼓膜を揺らしたのが最後の感覚。
猛烈な低温と。
窒息状態が。
三人の意識を凍らせた。