♯17 もう限界!
まるで人形劇に夢中になっている園児のように、デッドリィが励ましの体勢でタモちゃんを注視しているので。
「わくわく!」
タモちゃんは茶番を続けてあげることにした。
「ぐああ、や~ら~れ~る~~」
「ええっ、どっちがっ? まあ、いいわ! ミカエルしゃま、助太刀いたします! これからこの聖剣エクスカリバーで突き刺しますので、一時的にその体からお逃げ下さい!」
デッドリィが腰にひっさげていた白く輝く宝剣を取り出し、身構える!
タモちゃんは慌ててベッドを盾にして。
「ちょ、なんでそんなもの持ってるのよっ!」
「酒蔵潰しの世界ツアーをしていたときの略奪品です! さあ、ぶすっと行きますよお!」
「待て待て待て! そんな大事なもの返してきなさい! てゆっか、その聖剣、真の王者にしか抜けない設定なんでしょ? 手下のあなたが抜いてどうするの! エディモウィッチ、爆泣きよ? それにそれで刺したって、あたしには効かないから!」
デッドリィはきょとんとなって。
「ミカエルしゃまじゃなくて、堕天使に刺すんです」
「いやだから、わたしが堕天使だ!」
「ええっ? 今は堕天使さんなんですか? ややこしいな……。もうふたりまとめて刺しちゃうか。聖剣ならミカエルしゃまは平気だろうしぃ」
デッドリィが据わった目つきで聖剣の刃を見つめ、不機嫌そうに愚痴りだしたので。
――やばひ!
タモちゃんは。
「わはぁっ、なんか急に堕天使と仲良しになっちゃったな。ねーっ、堕天使! うむ! 俺たちはもう親友だ。なあ、ミカエル!」
自身を抱きしめ、幸せそうに身悶える。
「え、親友って、相反するものがそんな簡単に? なんか怪しいわね……」
――おまえが言うなーーっ!
「あなたが本当にミカエルしゃまなら、証拠をお示しくださいな!」
聖剣エクスカリバーの切っ先が、タモちゃんの喉元に突きつけられる。
「証拠っ? ええっと、うーんと……」
タモちゃんが考えつけずに戸惑っていると。
「やっぱり、偽物だったんですね。よくも騙したな!」
デッドリィが光り輝く聖剣を振り上げた!
タモちゃんは頭をポカポカ叩きに叩いて。
「わはぁっ、あの、あの、もうすぐだ!」
「なにが?」
「そうだな! いいことが起こるかな!」
「いいこと? って、なんなんです?」
「そ、それはー……」
「はぁん?」
デッドリィの目が細くなっていく。
――もうだめだぁ、何も思いつかないーーっ!
窮境に陥った、そのとき!