♯9 しかばねコレクション
「あんたなら屍人形に対抗できそうだ。地上に出るにはこっちへ来てくれ!」
薬剤師の男に案内されて、ジュテームたちが薬局から外に出て目にしたものは。
ワリショワ歴史地区の広場に何千何百という数の、屍人形が蠢き合っている光景だ。
「ひひぃっ、ジュテームさん、さすがにこの数は無理なのでは……」
屍人形たちが蛍光イエローの服を着ているせいで、目がチッカチカする。
「かもな。でもよ、この程度の現状、この俺が打破できねぇでどうするよぉ!」
ジュテームが足をドシンと踏ん張ると。
振動が同心円状に波打って。
たちどころに屍人形たちがタモちゃんたちに気がついた。
目玉をぎょろりと動かして。
歯や歯茎を剥き出しにして。
一斉に駆けだして来る。
空の隙間も見えないほどに。
飛びかかってきた数多の屍人形たちを。
「これぞ豪快豪傑、破天荒解、木っ端微塵に撃ち砕けーーーっ!」
ジュテームが撃ち放った気合いのたった一撃で。
すべてが破砕し。
吹き飛んでいく!
続けて拳から放たれた衝撃波が矢のように前方へ貫くと。
屍人形の大群がひしゃぎ倒れて。
蛍光パープルの体液をばら撒きながら、一本道ができあがった――、その拓けた道の先端に!
ひときわ白く輝く氷肌の少女が立っていた!
肩や背を露出させた、白と青のホルターネックに、ミニスカートとニーソックスを合わせ穿く彼女は。
鈴鹿と同じ、中高生くらいの身長で。
ふたつのお団子頭に、どんぐり眼の目がじろり。
何を見つけたのか、おちょぼ口をニタリと広げる。
「てめえがマジカリストかーーーっ!」
ジュテームが突進するが。
白と青の少女は手近にいた屍人形をつかみ取ると。
ジュテームの頭と屍人形の頭をごっちんこした!
「ぎゃふっ」
そのままジュテームの背中を跳馬のように跳び抜けて。
一直線に駆け抜けたのち。
鈴鹿からタモちゃんを奪い取って、ガッシリと抱きすくめる。
「わたしって、亡骸オタクなの。あなた、ステキに逝カレテみないーーっ? イッヒヒッ!」