♯7 キュン死に一生
「囲まれちゃいましたーーっ!」
「ふえーーんっ、姉ぇ姉ぇ、こわいよーーーっ!」
「ひひーーっ、タモちゃんがお子ちゃまになってるーーっ!」
タモちゃんは妖力を解放すると、精神年齢が徐々に下がって、子供になってしまうという弱点があったのだ!
「でもかあいいっ。すがられるって、こんなにトキメクものなのーーっ? 太ももぎゅって、しぁあせーーーっ!」
タモちゃんが足にしがみついてくるのを、鈴鹿が背筋伸び伸び、悶絶する。
「ぎゃーーっ、お化けーーーっ!」
「タモちゃん! 落ち着いて! 精神チャージって言って下さい! せいしんチャージ、ですーーっ!」
「しぇいちんちゃあじぃ……。これでお化けあっちいくぅ?」
「舌足らず萌えかーーっ」
鈴鹿と子供タモちゃんが、燃え立つ屍人形たちに飛びかかられようとしたとき!
「あーーっ、もう色んな意味でダメだあーーっ!」
すぐ後ろの石畳が、ドアのようにパカリと開いた。
「早くこっちに!」
鈴鹿は咄嗟にタモちゃんを抱きかかえ。
ジュテームの車椅子ごと地下通路へと駆け逃げた。
火だるまの屍人形たちが飛び込んでくる寸前に!
ドアを閉じて事なきを得る。
「ふうー……。どなたか存じませんが、助けていただいてありがとうございました。こんなところに地下道があったんですね!」
男は深く頷いて。
「ここはレジスタンスのワリショワ支部に通じる古い抜け穴なんだ」
ランタンの明かりで通路を照らした。
アーチ状になった石造りの通路になっていて。
車椅子1台が通れるくらいの道幅と。
大人が屈まずいられるくらいの高さがある。
「ちょうど探していたんです! レジスタンスの方なら、無事な酒蔵を知ってますよねっ?」
白衣と白ズボンを着した薬剤師のような中肉中背の男性は、肩を落として首を振り。
「ついさっき、最後の酒蔵も酒もみんな屍人形にぶち壊されてしまったよ」
「あのお人形、きらいーーっ」
「にゃっはーーっ、タモちゃんもっと抱きしめてっ。お姉ちゃんが守ってあげるねーーっ。よしよしよし~~っ」
鈴鹿はタモちゃんを抱き揺らして、あやしつつ。
「屍人形はどうやったら退治できますか? 焼いても弱るどころか元気になっちゃってましたよ!」
「やつらは不死身だ。完全に叩き潰せればあるいは……」
閉じた扉が巨大な衝撃を受け。
いびつに変形し始めた。
「こりゃ、長くは持たんな」
「ぎゃーっ、姉ぇ姉ぇ!」
「だいじょぶっ、だいじょぶっ。でもタモちゃん、早く元に戻ったほうが良さそうですよーーーっ!」
薬剤師風の男が包帯まみれのジュテームに手をあてて。
「怪我してるんだろ。こっちにきてくれ!」
「いえ、この人は……、あっ」
男が車椅子を押して走り出す。
「何してる! あいつらに屍人形にされるくらいなら死んだほうがマシだぞっ」
「ああっ、まってください!」
鈴鹿もタモちゃんを抱いて追いかけた。
明かりの届く通路の先から、薬品のにおいが漂ってきて。
たどり着いたその場所は。
薬が山積みになっている地下室だ。
それらには。
「まさか、自害する気ですっ?」
劇薬マークが描かれていた。