♯6 人形はお熱いのが好き
蛍光イエローの、まばゆいタキシードを着た、チャコールグレーの肌色をした人たちが、蛍光パープルの何かをボトボト落としながら、よたよたと。
よく見れば、それは――。
腐食した耳鼻や目玉や臓物だ!
「げっ、なんだあれーーっ」
このとき、スマホがメッセージを受信して、鈴鹿がぞっと青ざめる。
「屍人形使いの魔法少女がここに襲撃してきたみたいですーーっ! あれはマジカリストが操る屍人形ですよーーっ!」
「あいつら、死んでるのかーーっ?」
正体がわかった途端に。
よたよた歩いていた屍人形たちが。
牙を剥いて、観光客に飛びつき始めた。
ある者は首に腕を巻かれて窒息し。
ある者は両手で首を絞められている。
「や、やめろーーっ!」
そうしてなるべく綺麗に殺められた人間が、屍人形に担がれ、どこかへと連れ去られていく。
「ひーっ、タモちゃんどうしましょ! みんな屍人形にされちゃいますよーーっ!」
「あんな死に損ない、火葬にしてやる! 妖力フリーイング!」
タモちゃんは鈴鹿と車椅子のジュテームの前に立ち。
テラス席のキャンドルに灯る火に念を撃ち込んだ。
「燃えて塞がれ! 狐火の逆さ炎瀑布!」
キャンドルの火が地面に流れ落ちると。
石畳の隙間から青白い炎が噴きだした。
それらは長大な滝のように横一文字に燃えて広がり。
ひと飲みにされた屍人形たちが、炎の中でのたうち始めた!
のだが?
「アレ、ムシロ、キモチイイ」
燃えさかる火だるま人形が。
炎を乗り越え。
タモちゃんたちに押し寄せて来た!
「あいつら燃えて平気なのーーっ? 鈴鹿、どうしようっ?」
「火力が足りないだけかも知れません。タモちゃんはどんどん唱え続けてください。神通力で支援します!」
「頼んだ!」
鈴鹿が両手で印を結んで。
意識を集中し。
心神が最高潮に達した、そのとき。
「多弁饒舌立て板に水、舌端火を吐け、口早招来!」
早口の神通力を詠唱すれば、たちまちに。
「狐火の逆さ炎瀑布! 狐火の逆さ炎瀑布! 狐火のーーっ」
タモちゃんが息つく暇なく幾重もの炎の滝を生み出した!
それだのに!
屍人形たちは炎の壁を平然として突き抜けて。
「ミンナ、カゾクダヨ」と。
タモちゃんたちに、笑いながら襲いかかってきたのだった。