♯5 ちゃんと生きてます
スカーレットやモスグリーンの屋根屋根に。
オレンジ色やクリーム色の壁をした、中世を彷彿させる石造りの建物が、通りを取り巻くように建ち並んでいるここは。
鈴鹿の神通力で移動してきた、ペーロンデにあるワリショワ歴史地区だ。
私たちの住む地球で例えるならば、ポーランドのワルシャワ歴史地区だろうか。
白い馬車や花屋などの屋台が目を引く広場には、人が大勢あふれかえっていて賑わっている。
タモちゃんはあまりの人混みに驚いて、鈴鹿の背後に少し隠れて。
「人が多すぎないか、ここ!」
チェックのワンピの上から羽織った真っ赤なライダースジャケットを、ほっかむりにして顔を隠しながら辺りを見渡す。
「人気の観光地ですから、たぶんみなさん旅行者ですね!」
「戦時下だってのに、よく観光なんてする気になるな」
「最前線でなければ、どこもこんな感じですよ?」
「まあいいわ。ここのレジスタンス支部に行って、無事な酒蔵を教えてもらおう」
「それが……、ペーロンデとは交流がなくて、どこに支部があるかわからないのです」
「鈴鹿が知識不足とは珍しいわね。それなら、地元の人間に聞いてみるのが手っ取り早そう」
「ですね、あそこのカフェの店員さんから聞いてみましょ!」
チョコレート色のビーチパラソルが幾つも立ててあるオープンカフェは、空席が見当たらないほどのお客さんでいっぱいだ。
せわしなく接客しているウエイターに、タモちゃんたちが駆け寄って。
「ちょっとお話いいですか?」
と、声をかけたのだが。
「ひーーっ!」
ウエイターはタモちゃんたちを見るなり、悲鳴を上げて逃げてしまった。
「どうしたんだ?」
テラスにいた客たちも。
「屍人使いだーーーっ」
一斉に逃げ出していく。
「屍人使い?」
タモちゃんは包帯まみれのジュテームにピンときた。
「待って! これは違うの! ジュテームって言って、こう見えてもバッキバキに生きてるからーーっ」
追いかけようとしたタモちゃんを、鈴鹿がぎゅっと引き止める。
「タモちゃん、あれをみてください……!」
「どした?」
タモちゃんが振り返ると。
妙な人影がゆらゆらと、こちらに向かって歩いてくる。
それもひとりではなくて。
「酔っ払いの集団か? んん……?」