表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/159

♯20 偽りの記憶・シーン2

 部屋の奥から「行くぞ」という声が聞こえて、窓はすぐに閉められた。


「超ヤバかったね!」


「なんかスパイみたい!」


「エージェントたち! 臭いの正体を確かめるぞー!」


 ロナたちは静かにはしゃぎながら一致団結。


 小走りで建物のそばを走り抜け。


 端っこまでやってくると。


 目だけを出して、角の向こうを覗いてみた。


 荒れ地に小屋がぽつんとひとつ建っていて。


 その傍らにロナたちをここへ連れてきた男たちが立っていた。


 その近辺から煙がもくもくと上がっているようだ。


「なにしてるんだろ」


「あそこから臭ってきてる」


「なにか焼いてるみたいね」


 ロナたちは小屋まで走っていって。


 物陰から男たちを垣間見ながら。


 なにを話しているのか、耳をそばだてた。


「子供を殺して燃やす仕事なんて、俺もうやだよ」


 ――えっ……!


「しょうがねえだろ。あいつらを養う食料はねえんだ。餓死させるより、安楽死させてやった方がいいに決まってる」


「けど人権団体に嗅ぎつけられたら……」


「奴らが出しゃばれるような状況じゃねえよ」


「くそっ、これもみんな戦争が悪いんだ!」


「戦争っつーより、エディモウィッチがあいつらの親を皆殺しにしたから、こうなったんだろ」


「なんであいつは人を殺すんだ?」


「知るかよ。おい、だいぶ、かさが減ってきた。何人かガキをつぶしてこい」


「また俺かよ!」


「夜までに全員燃やすぞ! 急げ!」


 男が小屋の方へ近づいてくる。


「は、早く、逃げなきゃ」


 ロナたちは逃げようとしたのだが。


 足がすくんで立ち上がれなかった。


「そこに誰かいるのかっ!」


 男たちが駆け寄ってきて。


「おまえら、聞いてたなっ!」


「しょうがねぇ子供たちだ。見逃すわけにはいかねぇぞ。今すぐ天国へ連れていってやるから、じっとしてろよ……」


 男たちが鉈を振りかざしたとき!


「カリ・ウビラヲン!」


 魂でも抜かれてしまったかのように。


 男たちが口から泡を吹いて、バタリバタリと動かなくなってしまった。


 ロナたちが唖然としていると。


 どこからともなく声が聞こえてきて。


「わたしの里子にならないか。そうすれば嫌な記憶をぜーんぶ消してあげる。暖かい部屋と、温かい食事と、暖かいベッドが待ってるよ」


 夢幻を見ているタモちゃんたちにはもう、それが誰だかすぐにわかった。


 ――エディモウィッチだ!

 ――みんな逃げて!


 助けられたと勘違いをしたロナたちは。


「なる!」


「あたしも!」


 次々と。


 ――ダメよ! そいつが親のカタキなの!

 ――騙されちゃダメだーーっ!


「ロナも! ロナも!」


 手を上げたのだった。


 エディモウィッチは約束通り、ロナたちの嫌な記憶をすべて消し。


 都合の悪い記憶も、綺麗に消してしまって。


 ロナたちを連れ去っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ