♯11 覚醒!
校長先生の頭が後光のように煌めきだしたかと思えば。
校長が椅子をくるりと回して、こちらに向き直り。
「よくぞすべての材料を集めたな!」
お釈迦様のような手のポーズをしてみせた。
「校長せんせいっっ?」
「わしが覚醒したということは、この学校の秘密課題をすべて達成したということじゃ。褒めてやろう!」
「あの死闘は学校行事だったっていうのっ?」
「学生の課題にしては、海の神様はやり過ぎですよぉ!」
タモちゃんと鈴鹿が抗議をするが。
「海の神様? はて、なんのことかの?」
校長先生は事態が飲み込めないような、きょとんとした顔をした。
「えっ……?」
「それはそうと、褒美をせねばな! なにが欲しいのじゃ? 黄金かあ?」
校長先生がウキウキとして聞いてくるので。
「それなら、不死の薬が欲しいです!」
アマツカゼが、いの一番に望みを言うと。
校長先生は目を見張らせて。
「なんと! 不死の薬じゃとっ?」
「はいっ!」
「がくーーん」
背骨が折れたのではと、錯覚するほどに項垂れた。
「え、どうしたんですかっ?」
アマツカゼの憂色に。
「つい昨日のことなんじゃが、不死の薬は奪われてしまってのう……。残念ながらここには無い」
校長先生がいじけて言う。
「ええーーっ、誰にですかっ?」
「エディモウィッチじゃ」
その呼称を聞いて、タモちゃんたちは顔を見合わせた。
「巨神がいたから、あたしたちに取りに行かせたんじゃなかったんだ!」
「ボクたちを学校から遠ざけるのが大本命だったんですよ!」
「最初から仕組まれていたんだっ」と、タモちゃんや鈴鹿たちが悔しがる。
「それじゃ、エディモウィッチはもう不死に……」
タモちゃんたちが落胆の色を浮かべたのだけれど。
「それは安心せい。不死の薬の使い方をやつは知らん!」
校長先生はふんぞり返った。
「使い方? 飲むだけじゃないの?」
「うむ。不死になるには特別な作法が必要でな。もし取り返せたなら、そなたらに教えてやろう」
「やった!」
タモちゃんたちに希望の光が差し込んできた。
「でもエディモウィッチの居場所が……」
「やつには不死になる嘘の方法を教えてある。今ごろせっせとこなしているはずだ。しかしすべての順序をこなせば、不死になれないことに気がついて嘘がばれる。そうなればまた行方がわからなくなるだろう。やつが最後の段取りに向かったときが、最後のチャンスとなろう!」
「それはどこ! どこに行けばいいのっ?」
「深海に行くが良い」
「深海……?」
「チャレンジャー海淵のどん底には、古代宇宙人が築いた海底都市がある!」
「そんな話聞いたこともないけどっ?」
「やつには深夜3時にそこへ向かへと言ってある」
「3時って、今日のですかっ?」
「うむ。もしどうしても不死の薬がほしいなら、どうにかしてそこへ行き、薬を奪い返してくるのじゃ!」
校長先生が前腕を上げる仕草をしたかと思えば。
タモちゃんたちが浮き上がって、扉の方へ運ばれていく。
「あ、待って!」
「もう時間がない。秘密の課題をクリアした君たちなら、取り返すことができるやもしれん。気をつけて行くのじゃぞー……」
校長先生は声をこだまさせながら、タモちゃんたちを廊下へぽいっと追い出した。
校長室は固く閉ざされてしまった。
「チャレンジャー海淵ってどこ?」
「マリアナ海溝です! こちらではモラオノ海溝と言って、フィリピン沖、つまりファラパン沖にあるんです!」
タモちゃんに鈴鹿が答えてみせると。
「鈴鹿さん、大正解でっす!」
宇補先生が花丸を宙に描いてみせた。
「それって、最深部まで11キロもあるぞっ? どうすんだぁあああっ!」
「エターニャさんも、大正解でぇっす!」
宇補先生がまたまた花丸を描いてみせる。