♯7 芽生えちゃってるわーーっ!
「いま何時?」
デッドリィの問いに。
「1時40分です!」
鈴鹿がすぐさま答えると。
「よし、まだ行ける!」
みな意欲をたぎらせた。
女子更衣室の扉を開けて。
「宇補先生、おまたせ~!」
「ジュテームを釈放していいよぉ!」
タモちゃんたちが出てくると。
宇補先生はジュテームの手首を放して。
「材料は見つかりましたか?」
「ばっちし!」
みなが親指を突き立てた。
解放されたジュテームが。
「まったく、俺をのけ者にしやがって」
ふてくされ気味に言うものだから。
タモちゃんたちはジュテームを取り囲み。
「宇補先生とふたりきりでどうだったあ?」
ニヤニヤしながら聞いてみると。
ジュテームがまんざらでもない顔をしたので。
「腕を振りほどこうと思えば力尽くでできたくせに!」
「しなかったんだよねー!」
「やーさしーっ!」
「お楽しみでしたねっ!」
みんなではやし立てると。
「うるせえっ、お楽しみなわけねえだろっ」
ジュテームが向きになって、みなを押しのけたものだから。
その態度を見た宇補先生が。
「えっ、ジュテームさんは私のことが嫌いだったんですねっ……!」
へなへなと肩を縮めて、両手で顔を覆ってしまった。
「あーーっ、ジュテームが宇補先生泣かしたーーっ!」
「ちょおいっ……」
動揺するジュテームに。
「宇補先生のこと嫌いなのっ?」
タモちゃんたちが唇をとがらせると。
「嫌いってわけじゃ、ねえけどよぅ……」
ジュテームがはにかむ感じで否定したので。
女子はみな、心が「きゃーーっ」となった。
「ってことは好きなんだよねっ!」
「はあん!」
「恋よ! 恋!」
「芽生えちゃってるわーーっ!」
「ちょ! おいっ」
今度は宇補先生を取り囲んで。
「宇補先生はジュテームのことが好き?」
女子がワクワク、しながら聞いてみると。
にっこにこで。
「別に! うほ!」
否定したものだから。
「あちゃーっ、ジュテーム、またいい人が見つかるよきっと!」
「どんまい!」
女子一同、そろってジュテームの肩を叩いた。
「なんで俺がフラれたみたいな空気になってんだよっ」
ジュテームが憤懣をぶちまけるが。
タモちゃんたちは、もう終わった、とばかりに。
「はいはい、次いってみよーーっ!」
「切り替え、はええなっ」
ジュテームにそっぽを向いて。
「鈴鹿、次はどこ?」
「この近くです!」
「次も学校なのっ?」
「はい! 学校のどこかです! みなさん、ボクについてきてください!」
鈴鹿に連れ立って、タモちゃんたちは真夜中の廊下をガヤガヤと歩き出したのだった。