♯14 ひそひそ話、ときどき放置
ここはデアチ連邦共和国、ネリテロアン=ヴシテフォールン州の南西部にあるオアフゥリ。
私たちの地球で例えるならば、ドイツ連邦共和国のノルトライン=ヴェストファーレン州南西部にあるアイフェルだろうか。
こちらの世界では、標高の低い山地が広がる丘陵地帯で、目立った木々も民家もないため、大暴れするにはもってこいの戦場だ。
エターニャと会敵したタモちゃんたちは、火花を散らして互いの術を探り合う。
「ふん! 挑発されてノコノコやって来るとは、猿並にアホな救世主だな!」
「あんたも学習しないわね。変身してないようだけど、それであたしたちに勝てるのかしら?」
「戦ってみればすぐにわかる! お前たちにやられることなく、それでいて注目もされながら変身する手段を思いついたのだ!」
「なっ、なにっ?」
タモちゃんはジュテームたちと輪になって、ひそひそ話をし始めた。
「どういうことかしら」
「あいつアホだし、気にすることねえんじゃね?」
「とりあえず体を強くする神通力は温存して、様子を見ましょうか」
敵に背中を見せている無防備なタモちゃんたちに、エターニャが気がかりになってきて。
「おい……、何を話しているんだ? エターニャ様がいることを忘れてないか? こわ~いカリスマ魔法使いが目の前にいるんだぞ?」
それに気づいたタモちゃんたちが、振り向き直って腕を組む。
「ごめんなさいね。心配させちゃったよね?」
「ホントだぞ。エターニャ様は放置されると泣きたくなるんだ! 気をつけて!」
タモちゃんは、再びジュテームたちと輪になった。
「放置されると泣きたくなるって!」
「いっそのこと、ずっと放置するか?」
「だけど、逆上してパワーアップされても困りますよ?」
「それもそうね」
「だな!」
「だ・か・ら、お前ら、放置するな~~~っ!」
タモちゃんたちが再び振り向き直って、腕を組む。
「長い前置きにはもううんざりよ!」
「長くしてるのはお前らだっ!」
「上等よ! かかって来なさい!」
「なにが上等なのか知らないが、お望み通りにやっつけてやる!」
エターニャの体から、溢れんばかりの魔力の波動が放たれた。