♯5 これで我慢してください!
「お化けが好きなら、肝試しやっちゃう?」
「ばああーーっ」
結局、みんなの矛先が菜乃花に向いて。
「ひひぃーーっ」
菜乃花がジュテームの背後に隠れると。
「心配すんな。お化けが出たって誰も置いて逃げたりしねえ。俺が必ず守ってやるから安心しな!」
「ずきゅ~~~んっ」
熱い視線に菜乃花が見とれ。
「ジュテームさん、いたんですねーーっ!」
鈴鹿たちは(本当は知っていたが)大げさに仰天してみせた。
宇補先生はそんなジュテームを突っついて。
「まあ! なんて魔性なの! 女たらしですね! この、このっ!」
「いや、そういうつもりで言ったんじゃ……」
「ジュテーム、赤くなってるぅ!」
「ひゅー、ひゅーっ!」
みんなに冷やかされて恥じらうジュテームだが。
「みなさぁん! そろそろ出発しないと、指定の時刻が過ぎちゃいます!」
鈴鹿の押し詰まった発言に。
「はっ、いま何時っ?」
タモちゃんたちは急いでスマホを取り出した。
「1時15分です!」
「もうそんな時間! 急いで向かうわよ!」
「鈴鹿、準備はいいな?」
タモちゃんやジュテームの要望を受け。
「すでに地図アプリにGPS情報を入力済みです! こっちです。行きましょう!」
鈴鹿はツアコンみたく旗を掲げて、みなを先導し始めたのだった。
そして鈴鹿たちがたどり着いた場所というのが。
「女子更衣室……?」
「ホントにここなのか……?」
タモちゃんやエターニャが眉をしかめる。
「はい、座標はちょうど、この部屋の中央になってます!」
「入ってみるしかねえだろ!」
ジュテームが扉に手をかけるが。
「ちょっちょっちょ!」
「ジュテームはここで待ってて!」
ロナとデッドリィが制止して。
「なんでだよっ」
「はい、見ちゃダメーッ!」
「息もしちゃダメーッ!」
半とアマツカゼがジュテームの目と鼻を覆い隠した。
「はぁい、ジュテームさん、ここで先生と一緒に待っていましょうねっ!」
宇補先生がジュテームの手を後ろ腕に回して、がっつりと拘束する。
「なっ、俺がなにをしたーーっ」
「これからするんですっ!」
「なにもしねえよっ!」
「さ、みなさん、今のうちに入って!」
「手に! 手にやわらかいものが当たってる!」
「当ててるんです! これで我慢してください!」
「なんの我慢だよっ! やわーーーっ!」
「先生、任せた!」
「ジュテームを頼みます!」
「がんばって!」
タモちゃんたちが更衣室の扉を開けて。
明かりをつけて中へ踏み込んだのだが!
「木製の縦長ロッカーが並んでるだけの……」
「ふつうの更衣室ですね」
菜乃花と菜乃葉が上半身を傾けて、奥まで見通しながら雑感を言う。
「ここで間違いないの?」
「タモちゃん、見てください! 本が光ってます!」
鈴鹿の持っている古代の本が、淡い光を放ちだしていた!