♯20 あるよあるよ!
「よし、掘りだそう!」
タモちゃんの逸る掛け声に。
「半ちゃん、土や岩を綿菓子みたくする魔忍法をお願いしますっ!」
「はい!」
鈴鹿や半がやる気になったのだが。
「待って! これ、ただの土壁じゃないよ!」
クライネが制止した。
じっと見据えたのちに……。
「姿を現せ!」
姿現しの魔法を唱えると。
土壁にノイズが走って。
さらさらと滝のごとく崩れ始めた。
土壁に代わって現れたのは。
高さ二百五十センチ、幅二百五十センチ程度の、石レンガが積み上げられたトンネルだ。
壁に等間隔に吊されていた松明が、人を感知したのか独りでにボッとつく。
「入り口だーーっ!」
クライネがひとり先走って先行するのを。
「あっ、罠があるかもしれないぞ!」
エターニャが引き止めたのだが。
「そんなの、ないない! 感じない! みんなも早く来て!」
クライネがつ~いっと入って行っても大丈夫そうだったので。
みんなで入り口から十歩ほど踏み込んで行ったのだけど、その途端!
ブーンという音が背後でしたかと思いきや。
振り返ると?
「なに……あれ?」
ネコ科の猛獣の顔を模した――。
「ドローンッ?」
ブワッと浮き上がって。
目から青い光線を撃ち出してきた!
「うわあっ」
地面に落ちていたレンガが光線に触れて。
真っぷたつにスパッと切れる。
「殺人レーザーだーーっ!」
「トラップじゃないかーーっ!」
「逃げろーーーっ!」
デッドリィにエターニャ、ロナがいち早く背中を向けて走り出すと、たちまちに。
ドローン兵器のジャガーがレーザーを撃ち出しながら、猛スピードで追いかけてきた!
タモちゃんたちも大慌てて逃げ出して。
「クライネ、罠を解除して!」
「魔法じゃないから無理!」
「もうっ、役に立たないなぁっ!」
「みんな、にぃげろ~~~っ!」
ドタバタと通路を奥へ走っていくと。
左へ曲がれそうな丁字路が見えてきた。
そこはどうやら階段になっているようで。
「左に曲がれ~~~っ!」
みなが左の通路へ飛び込み、階段を急いで駆け下りると。
ドローン兵器のジャガーも後を追ってきた! と思ったら。
なぜだか高さを変えることなく、無反応で頭上を通り過ぎていく。
ここは天井がずいぶんと高くなっているようだ。
「危なかったです……」と、鈴鹿が安堵して。
「楽しかったね!」と、クライネが大喜び。
「楽しくぬぁいっ」と、半が小競り合いで息をつく暇もなく。
唐突に階段の段差がぺったんこ!
急勾配の激坂に、みなはいた。
「ぎゃぁああぁああぁあっ!」
スリップ!
スライド!
転がり落ちていくーーっ!
その行く先には!
巨大なガスコンロのような、火炎放射器の火柱の輪が噴き出していた!
「焼ける! 焼けちゃうーーっ!」と、菜乃花。
「こんがりは、いやぁーーっ!」と、菜乃葉。
「どうすんのーーーっ!」と、アマツカゼ。
辺りを見渡せば。
「はしごがあるよ!」
クライネが指さす斜め頭上に、天井から縄はしごが垂れ下がっている!