♯14 幸せの搾取
熱風ドームのなかは、高温の超乾燥地帯と化していた。
湿気は寸分もなく消失し、タモちゃんたちの体から、水分が否応なしに干上がっていく。
熱風スフィアを身に纏ったアマツカゼはなおさらに。
身を焦がしながら。
息苦しそうに耐えていた。
「どうして自らの身を危険にさらす! あたしの命を削りたくば、他にやり方があるだろ!」
タモちゃんが次に屍人形もどきになれる時刻はまだまだ先だ。
待っていてはアマツカゼも、自分たちも力尽きてしまうだろう。
「わたしにはどうしてもやり遂げなくちゃいけない計画があるの。それが叶わないなら生きていてもしょうがないからよ」
アマツカゼは決意の定まった眼で、タモちゃんの目を睨むように見つめる。
「どんな計画か、冥土の土産に教えてくれない? お互い命をかけてる者同士でしょ」
タモちゃんは目をそらすことをせず、アマツカゼのすべてを受け止めて見つめ返すと。
アマツカゼが重々しく口を開いた。
「わたしの悲願を知ったエディモウィッチさまがくれたのよ。埋蔵金のありかを示した宝の地図をね」
「埋蔵金? ……って戦国武将の?」
「世の中にはとても貧しい生活をしている子供たちがたくさんいるの。いろんな事情でね。ニュースで見聞きするより、想像を絶する悲惨な生活なのよ。実際はね。わたしがそうだったから。その子たちの暮らしを少しでも楽にしてあげたいの」
「それで生徒たちを魅了して、埋蔵金を掘りだそうとしたわけか。でもね、なんの罪もない人をたぶらかして得た財宝で、貧しい子たちが喜ぶかしら」
タモちゃんが説得を試みるが。
アマツカゼは瞳に怒りの情意を宿らせた。
「毎日ご飯が食べられて。雨風がしのげる家があって。暖かいベッドで寝起きができるような、平穏な日々に退屈だと文句を言って。当たり前のように学校へ行って、そのくせ勉強はろくにしない。けれど趣味や青春は謳歌するとか、そんな都合のいい豊かな暮らしをしている生徒が、なんの罪もないわけないでしょ!」
「…………」
「だけど殺すわけじゃない。恵まれない子供たちのために、幸せを少し搾取するだけよ。強制的に献血させるみたいにね」
アマツカゼの主義主張に思い当たるところがあったのか。
みな、しんと、黙りこくった。
その静寂をジュテームが打ち破る。
「そのよう……、埋蔵金は確実に埋まっているのか?」
デッドリィと鈴鹿がそれに続いて。
「あの人に宝の地図を貰ったって言ったわよね?」
「アマツカゼさんをけしかけるために用意した嘘の可能性はないですか?」
思い当たるところを提起してみると。
「いいえ、宝の地図は本物よ。記された場所で金属探知の呪文を唱えたら、純度の高い黄金が大量に反応したもの」
アマツカゼが魅惑的な答えをしたものだから。
「マジか。黄金が埋まっているなんて、都市伝説じゃなかったのか!」
「楽しそう! クライネ、本物のお宝見てみたい!」
「拙者たちでよければ、魅了なんかしなくても手伝いますよ!」
エターニャもクライネも半もみな、にわかに色めきだってきた!