表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/159

♯9 天高く突き抜けろ!

 タモちゃんと菜乃花のあいだに風がぴゅうう~と吹き抜けて。


 枯れ草がコロコロと横断し……。


「早くやれ!」というヤジが飛ぶさなか。


「もう時刻になったでしょ! いくわよ!」


 菜乃花が靴先をタンタンさせるが。


「まだ4時7分になってない」


 タモちゃんは決闘に応じない。


「ぬぬぬ……」


 またもや風がぴゅるるう~と吹き抜けて。


 つがいのモンシロチョウがふわふわと。


 ふたりのあいだをゆっくりと通り抜けていったのを見届けたや否や。


 菜乃花はいらだちを爆発させた!


「あなた、宮本武蔵にでもなったつもりっ?」


「まだ4時7分に……」


「言ってなさい! それっ、こずゆ・からそきともうっ!」


 菜乃花が風魔法の呪文を唱え、ついに決闘の火蓋が切り落とされた。


「もたもたしてると制服が粉々に切り裂かれちゃうわよ!」


 連続で撃ち出されるつむじ風を、タモちゃんが飛び退いて躱していくが。


 ――おかしい。いつもなら肌色が変わりだすころなのに……。


 と思った矢先に。


 タモちゃんの肌色がチャコールグレーに変化した!


 よし、これで戦える!


 はずだったのだが。


「うががあ……!」


 流暢にしゃべれない!


 ――しまったあ!


 これじゃ妖術を唱えられない!


「なに、あんた、ゾンビ女なのっ?」


 菜乃花は目をギョッとさせながらも。


「でもそんなの恐くないんだから!」


 猛烈に切り裂きのつむじ風を打ち出してきた。


 タモちゃんはたまらず鈴鹿の元へ駆け寄って。


「ハヤクチ、ジンツウリキ」


 助けを求めたが。


「仲間の支援を貰うなんて反則よ! これはわたしとあなたの決闘なんだから!」


 菜乃花はそこへさらなる切り裂きのつむじ風を集中砲火した。


「菜乃花さんの言うとおりです! タモちゃんは自分の実力だけで戦わなくちゃダメですよ、うほ!」


 宇補先生に注意を受けて、タモちゃんは防戦いっぽうだ。


 ――このままじゃ妖術を唱えられない。どうする! どうする!


 逃げ回っているうちに、つむじ風の速度が速くなって、威力も強さが増してきた。


 躱す距離も際どくなって。


 ついには躱しきれずに、スカートの裾が当たって破けてしまった。


「タモちゃんって噂で聞いていたほど、たいしたことないじゃない。私の召し使いになるなら許してあげるわよ? それともみんなの前で下着姿になりたいの? この見せたがり屋!」


 タモちゃんは屍人形もどきの素早い身体能力で、菜乃花に近づこうとしたが。


 風魔法の猛攻を受けて近寄れない!


「お遊びはこれで終わりよ! あんたの破廉恥をみんなに見て貰いなさい! ちざこずゆ・けっぽまざんな・からそきともうっ!」


 タモちゃんの足下の周りに砂の渦が立ち上がったかと思いきや。


 たちまちに巨大な辻風の中に囚われた。


 辻風の内部には、人ひとり分の筒状になった空間があったのだが。


 それが狭まりだして、フードプロセッサーのような鋭利な風がタモちゃんに迫り来る!


 ――このままじゃマジでヤバいぞ!


 地面に隙はなく、逃げ場はない。


 目の前は、向こうが見通せないほどの風の刃だ。


 見上げれば、台風の目のような、ぽかんと開いた青空が見えた!


 ――ようしっ!


 タモちゃんは思いっきり踏ん張って。


 ジャンプした!


 辻風の中を垂直に突き抜けて。


 風の渦から飛び抜ける!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ