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♯18 宿命リセット

「タモちゃん、これで終わりだよっ!」


 腹の前で身構えて。


 ロナは突進し。


 それでタモちゃんを貫いた。


 双刃の短槍を腹部の前で構えていたせいで。


「ぐっ……」


 タモちゃんを貫き倒した反動で、ロナ自身も自分の体を貫いていく。


「タモちゃん、ごめんね。みんなを救うにはこれしかなかったんだ……」


 ロナがタモちゃんを抱きしめると。


「ロナがしようとしてたことはわかってた。あたしもね、敷かれたレールを走らされるのに、うんざりしてたんだ……」


 ふたりの服が深紅に浸って。


 微笑む顔から血の気が失せていく。


「今度生まれ変わったら、ズッ友で……いようね……」


「大丈夫。ねえ、デッドリィ? あとは……、お願い……ね……」


 タモちゃんはそう言い残して。


 ――これでリセットできるかな……。


 ロナとともに息絶えた。


 現実を受け入れる、ひと呼吸の間を空けたのちに――。


 悲鳴が上がった。


 すぐさま鈴鹿と半が駆け寄り、ふたりを抱きすくめたのだが。


「もう息も脈もないっ……」


 くしゃくしゃな泣き顔を横に振った。


「俺ぁ……、俺ぁなんて、無力なんだーーーーーっ! ちくしょうがっっ」


 ジュテームはタモちゃんとロナを貫いていた短槍を優しく抜いてやり。


 自分の顔を、拳で思いっきり殴りつけた。


 その光景が目に焼き付いて。


 見開いたまま。


 デッドリィは膝からくずおれた。


 天空に浮かんでいた無数の丸い靄が雪のように降ってきて。


 地面につくと、ふわりと割れた。


 中に囚われていた人々が、悪夢から覚めたように立ち上がる。


 助かったことへの感謝を叫ぶ者。


 自分たちが住んでいた町が丸ごと無くなっている光景に絶望する者。


 家へ帰してくれと叫ぶ者。


 喜び、悲しみ、怒りの絶叫が飛び交った。


「デッドリィ、ふたりを蘇生してやってくれないか」


 ジュテームが肩を握り締めて、デッドリィは我に返った。


 最初はなにも言葉が出なかったが。


「すべてが元通りになるわけじゃないの。あんなの蘇生魔法のまがい物だもの! あたしは、死体を操ることしか能の無い、低俗なネクロマンサーなんだ!」


 大粒の涙が押し出されるように。


 デッドリィが声を絞り出す。


「エターニャが知る限り、この世に完全な蘇生魔法は存在しない。今ふたりを生き返らせられるのはデッドリィだけだ。もしもタモちゃんやロナが別人になったとしても、また最初から仲良くすればいいじゃないか」


「そうですよ! ふたりにはそうしたって会いたいくらいの価値があるとボクは思います!」


「拙者、またふたりの声が聞きたいです!」


「クライネもずっとこのまま悲しいなんて、ヤダーーッ!」


「デッドリィちゃんーーーっっ!」


 ――――。


 みなの切なる思いが。


 打ち沈んだデッドリィを突き動かす!


「わかった……。あたし、やってみる! エターニャさんとクライネはフリサンカの復元を試みて!」


「任せておけ。クライネ、行こう!」


 泣きじゃくっているクライネを手の平にのせて。


 エターニャが上空へ飛び立った。


 デッドリィはタモちゃんとロナの前に跪き。


 念を込めて祈りを捧げたのち。


「オトサネ・エナンギェイナ・ノオル!」


 屍人形(しかばねにんぎょう)になる呪文を唱えた!


 タモちゃんとロナの青白い肌が、チャコールグレーにみるみる変わって。


 身につけていた服がショッキングイエローに色づくと。


「がおーっ!」


 タモちゃんとロナが、むっくりと起き上がる。


「やったあ!」と、鈴鹿や半が活気づき。


 そこへ屍人形を解く呪文を唱えたら。


「メイ・エコウラ!」


 フリサンカの美しい町並みが蘇っていくのと同時に。


 タモちゃんとロナが正常な人間に蘇った!


 はずだったのだがっ?

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