聖夜の舞踏会、最愛の人とうまくいく予定だったのに、そういうとんでもない爆弾やめてもらえます?
XI様の『真・恋愛企画』参加作品です。
異世界恋愛物語。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます! とても助かっています。
また、たくさんのご感想・ご評もありがとうございます!
兄の部屋の前を通りかかったら話し声がした。それは聞き覚えのある声。アーロン・クロフォード侯爵令息だ。「お兄様のところにアーロン様が来ている!」とリンジーは嬉しくなった。
ついつい扉を開け、ひょっこり顔を出してしまう。
「ごきげんよう」
急に扉が開いたので驚いた兄とアーロンだったが、顔を出したのがリンジーだったのでアーロンの顔もぱっと華やいだ。
「リンジー!」
リンジーの兄オーリーはアーロンの顔を見て苦笑した。
「相変わらずにやけた顔」
「ば、ばかっ! 余計なこと言うな。リンジー今日も美しいね」
アーロンは顔を赤らめたが、リンジーの方にはにっこり笑いかけた。
「はわわわ~」
リンジーも真っ赤になった。
う、美しいって言ってくれた! たとえ社交辞令だとしても!
アーロンはまだ赤い顔をしながらコホンと咳払いして、
「来週の王家主催の聖夜の舞踏会は行くのかい?」
とリンジーに聞いた。
リンジーは途端に残念そうな顔をした。
「いいえ。行きたいのですけど、お兄様が出席なさらないから……」
アーロンはオーリーを振り返る。
「え? おまえ、出ないの?」
「うん。領地の方へ行かなきゃいけないんだ。その日のうちに帰ってこれるか分からないから」
オーリーは首を竦めた。
「お父様も一緒に行くんですって。だからエスコートしてくれる人が誰もいないのよ」
リンジーは少し口を尖らせた。
アーロンはハッとした。
「じゃ、じゃあ、僕がエスコートするってのは?」
言いながら照れている。
リンジーもその言葉に急にドキッとした。
「え!?」
「そりゃおまえ、ちょっと大胆過ぎるんじゃないの」
オーリーはニヤニヤと茶化す。
アーロンは「大胆」と言われてドギマギしたが、澄ました顔で反論した。
「いいだろ、俺とおまえの仲じゃん。親友の妹をエスコートして何が悪いよ」
リンジーはといえばアーロンと一緒に舞踏会に行けるかもしれないことにぽ~っとなっていた。
「リンジー? どうする?」
オーリーがこちらにもいたずらっぽく聞く。
リンジーの返事は一つしかない。
「少し恥ずかしいけど、行きたい! だって聖夜の特別な舞踏会なんだもの。王妃様が素敵な余興をするって噂を聞いたし」
「じゃあ決まりね」
アーロンはほっとした顔をした。そして嬉しさが胸に込み上げる。リンジーをエスコートして舞踏会! ずっと願ってきたことだ。
「積極的だねえ」
オーリーは楽しそうに笑った。
◇◇◇
聖夜の舞踏会の当日。
一番豪華な馬車でリンジーをお迎えに上がり、アーロンは有頂天で王宮まで馬車を走らせた。超ウッキウキ。だって今日はリンジーをエスコート! 王宮中の貴族に見せつけてやるんだ。そして……言うぞ、ついに。
王宮に着くとアーロンは馬車を先に降り、えらくかっこつけてリンジーに手を差し出した。
「さ、どうぞ」
リンジーは微笑んで手をそっと重ねる。ああ~手が触れる。
リンジーだって心臓がバクバクだ。馬車の中でも二人っきりでドキドキして、心臓の音が聞こえるんじゃないかとハラハラした。こっそり眺めたアーロン様の横顔は、もうほんっとかっこよすぎたッ!
それに、王宮のエントランスに飾られた薔薇! 形の良い深緑の葉に真っ赤な花が見事なバランスで活けられていた。季節外れの大輪の薔薇。どこで手に入れるのかしら。やっぱり聖夜は特別なんだわ。素敵。まるで私の心を祝福してくれるよう。
「こんなに心がはしゃぐ舞踏会は本当に久しぶり」
リンジーはうっとりと言った。
すれ違う人がこそっと噂している。
「アーロン様、今日は素敵な令嬢をエスコートしてるね」
「まあ本当。あちらのきれいなご令嬢は誰?」
「婚約でもなさったのかね?」
微かに聞こえる噂声にアーロンとリンジーは照れてしまいながら、浮かれた心でリンジーはアーロンの腕に自分の手をかけた。
そして王宮の大広間に足を踏み入れると二人はあまりの人々の煌びやかさに目を見開いた。
「ははっ! 今年も気合が入っているね」
「本当ね。来てよかったわ」
そのとき第2王子ジェフリーがすれ違った。
「あれ、リンジー?」
「あ、ジェフリー様」
リンジーは丁寧に挨拶をする。アーロンもお辞儀をした。
ジェフリー王子はアーロンを完璧に無視しながら、
「今日はオーリーはどうしたのかい?」
とリンジーに聞いた。
大抵いつもは兄オーリーがリンジーをエスコートしているのに、今日は別の男なので違和感を感じたのだ。
「領地の方へ出ていますので」
リンジーは控えめに答えた。
「そうか……」
ジェフリー王子はちらりとアーロンを見た。しかしすぐにアーロンから視線を外し、またリンジーの方を向く。
「リンジー、あとで一曲踊ってくれないか」
リンジーは丁寧にお辞儀をした。
「喜んで、ジェフリー様」
ジェフリー王子はニコッとしたが、何か急いでいるようで
「もう少しリンジーと話していたいけど、ちょっと用事があるんだ」
と残念そうに言うと立ち去ってしまった。
アーロンは少し不機嫌そうな顔をしている。ムカムカするのはたぶん無視されたことだけではない。
「ジェフリー王子はいつもこんな風に声をかけてくるの?」
リンジーは苦笑した。
「ええ、いつも。なんででしょうね」
アーロンは途端に心配そうな顔になる。
「もしかしてリンジーに気があるんじゃ」
それに対してはリンジーは笑って否定した。
「それはありませんわ。うちは伯爵家。身分が釣り合いませんもの」
それに私はアーロン様のことが好きだから。
「まあ、それはそうかもしれないが……」
アーロンはそれでも一抹の不安を抱えずにはいられなかった。
◇◇◇
さて賑やかな舞踏会会場でとりあえず二人は知り合いに挨拶をして回った。まあ挨拶が仕事。
知り合いの貴族たちはアーロンがリンジーをエスコートしていることに興味を示すので、二人は照れながら「兄が領地で」と一応言い訳を重ねつつ、それでも二人の関係を言及してもらえることを内心喜んでいた。
ひときわ喜んでいたのはアーロンの方だ。アーロンはこの舞踏会で告白することを企んでいたから。
今日は聖夜の舞踏会。なにやら特別な余興もあるという。ロマンチックこの上ない!
急に演奏家たちが目新しい音楽を始めたのでアーロンはそっちの方に目を向けた。
「あ、リンジー、あっちをご覧」
リンジーも何かが始まる気配を察したようだ。
「まあ、王様と王妃様じゃないですか。腕を組んで真ん中に出ていらっしゃるわ」
舞踏会中の招待客たちがしんと静まり返って注目している。
「踊ってくださるのかな」
アーロンは国王と王妃の方を見ながら小声で言った。
「まあ、見て! 踊り子たちが真っ赤な花飾りやら緑のリボンやらを持って集まって来るわ。王様と王妃様のダンスを彩どるおつもりなのね。なんて華やかなの!」
リンジーは目を見張った。
そして音楽が変わり美しいワルツが大広間中に響き渡ったかと思うと、国王と王妃はおもむろにダンスを始めた。
荘厳な大広間。赤や緑の取り巻きが二人の主役を引き立てるように踊り出し、まるで一つの舞台かのようだ。
招待客たちから感嘆のため息がもれる。
「素晴らしい」そんな声があちこちで上がった。
リンジーもうっとりとしている。
「こんな余興初めて見たわ」
「音楽もこの聖夜のために作った新作ですってよ」
近くにいた華やかなご婦人が誰かに言いたくてたまらないように小声で教えてくれた。
リンジーは「まあっ」と楽しそうに笑う。
アーロンはそんなリンジーの無邪気な横顔を嬉しそうに眺めた。
そして堪らなくなってリンジーの手をぎゅっと握った。
リンジーがハッとしてアーロンの顔を見た。
「アーロン様……」
「すみません、つい」
「でも、人に見られたら……」
リンジーは恥ずかしそうにした。
アーロンは静かに首を横に振った。
「大丈夫ですよ。みんな王様と王妃様しか見ていない」
リンジーは真っ赤になって俯いてしまった。
何これ、反則、嬉しすぎるんだけど! もう王様と王妃様のダンスに集中できないわ。手のぬくもりが暖かすぎて……。
しかし、そんな照れて真っ赤になっているリンジーとアーロンを遠くから冷たく見ている者があった。国王と王妃の晴れ舞台を取り仕切っていたジェフリー王子だった。
◇◇◇
会場が割れんばかりの拍手で包まれた。国王と王妃のダンスが終わったようだ。
「素晴らしかったですわ!」
王妃と仲の良いご婦人たちが駆け寄って王妃をほめちぎる。
「よいものが見れた!」「最高だった!」あちこちで招待客からも声が上がった。
「リンジー」
裏方の役目を終えたジェフリー王子がリンジーのもとに足早に歩いてきた。
リンジーは慌ててアーロンの手を振り解き、ジェフリー王子に笑顔を向けた。
「ジェフリー様。王様と王妃様のダンスは素晴らしかったですわね」
「そうかい? それならよかった。ここのところ両親に会うといつもこの話だったからいい加減うんざりしてたんだ。終わってくれてよかった」
ジェフリー王子はそんな憎まれ口をききながらも微笑んでいる。
「そんな言い方をなさって」
「まあリンジーが楽しめたなら、この私の苦労も実ったってものだね」
「そうですわ。本当に夢のような空間でした」
と、急にジェフリー王子はぱっとリンジーの手を取った。
「リンジーはああいうのがいいのかい?」
「え?」
リンジーが突然のことに驚く。
「な、何を? ジェフリー様?」
「私と踊ってくれるって言ったろう」
「言いましたけど……」
するとジェフリー王子は、大広間から退出しようとしていた踊り子たちに大声で声をかけた。
「おい、君たち、その赤と緑の飾りをもう一度掲げておくれよね」
「え!?」
踊り子たちが急な要求にたじろぐ。
しかしジェフリー王子はいたって真面目な顔をしている。
踊り子たちは予定外の出番にお互いの顔を見合わせながら、しかし舞台監督だった王子とあっては「何か理由があるのだろう」とおずおずと持ち場に戻ってきた。
ジェフリー王子は呆気にとられているリンジーを踊り子の輪の中に無理矢理引っ張り出すと、音楽を奏でさせた。そうしてさっき国王と王妃がやっていたように赤と緑の踊り子たちを従えながら、堂々とダンスを始めたのだった。
招待客は騒然とした。
「どういうこと? 失礼じゃございませんこと、王様と王妃様の真似事をなさるなんて」
「でも、あれ、ジェフリー王子ですわよ」
「お相手はどなた?」
「ロックウッド伯のご令嬢よ」
「伯爵家? ちょっと身分が……」
「厚かましい……!」
「なんの当てつけ?」
リンジーも強引に踊らされながら顔色を変えていた。
舞踏会中の招待客が息を呑んで自分とジェフリー王子を見ている。国王と王妃のための演出をまるまる借りて大広間の真ん中で踊る自分たちを。国王と王妃の特別感をそっくり損ねている。国王と王妃の余興を台無しにしているのは誰の目にも明らかだ。
ジェフリー王子の頬でもひっぱたくか? そうしたらこの地獄のような見世物は終わるだろうか。
しかし相手は王子……。
そのとき。
「その不届きな娘をひっとらえなさい!」
案の定、凛とした声が響き渡った。それはもちろん王妃だった。かんかんになって怒っている。
大ぶりの動きで演奏家の音楽をぶっつりと断ち切らせると、背後に取り巻きの公爵夫人を何人も引き連れて威圧的に近づいてきた。
「そりゃそうだ」とリンジーは自分のことながら大いに納得した。
そうして怒りに燃えた王妃の目で骨も残らず焼き尽くされる気がした。
“舞踏会中の客の目の前で、王妃様は私に侮辱された”
ジェフリー王子のせいだとしても言い訳にならないほど私の罪は明らかだ。
リンジーは全てを受け入れる覚悟で跪いた。
「あなた、ご自分が何をしでかしたか分かっているの」
王妃の怒りに震えた声がリンジーの頭に降って来る。
「はい……」
リンジーは大人しく答えた。
「こんな状況で何を言っても信じてはもらえないと思いますが、ただただ申し訳なく思っております」
王妃は持っていた扇をリンジーに投げつけた。
ぱしっと扇がリンジーの額に当たる。
「謝罪!? 全く意味が分からないのだけれど!」
「そりゃそうだ」とリンジーはまたしても思った。
公衆の面前で堂々と王妃を足蹴にし、聖夜の舞踏会を丸ごとぶっ潰しておいて、それで謝って済ませようなんて思う方がおかしい。
「不敬罪は免れませんわよ」
王妃は冷たく言った。
「はい……」
リンジーは大人しく答えた。
すると、それまでまるで自分は無関係かのように無言を貫いていたジェフリー王子が、すっとリンジーの横に屈みこんだ。
そして耳打ちした。
「リンジー。私と結婚しなさい。この状況で君を母から守ってあげられるのは私だけだと思う」
リンジーはばっとジェフリー王子の顔を見た。憤りが頂点まで達し目は血走っていた。
「あなた何の話をしているの!」
この状況を利用して何の取引を持ち掛けるのか。ヒーロー気取りとは何の冗談。全部ジェフリー王子のせいじゃないか! 守ってくださいなんて口が裂けても言うわけがない。
私が好きなのはアーロン様なのに。幸せな聖夜、全てがうまくいきそうだったのに!
リンジーの表情を見てジェフリー王子はやれやれといった顔をした。
「嫌なら不敬罪確定だよ。でもそれはやめときなさい、私が必ず幸せにしてあげるから」
◇◇◇
「お待ちください!」
堪らず声をあげたのはアーロンだった。
「何ですか」
王妃の声は冷たい。
アーロンは王妃の足元に跪いた。
「リンジーが罰を受けるのは筋違いです。リンジーはただとばっちりを受けただけ。そもそもこのダンスはジェフリー王子が誘ったものです。踊り子だってジェフリー王子が指示していました。たくさんの者が見ていたはずです」
しかし王妃は微動だにしなかった。
「それが何か? 結果この女が私を侮辱したことには変わりない」
リンジーも堪らなくなって声をあげた。
「わたくしは王妃様を侮辱する意思なんて全くございません。巻き込まれただけなんです。たった今こちらのジェフリー王子に卑劣な取引を持ち掛けられましたわ。自分と結婚しろと、そうすればこの場を丸く収めると」
王妃に言いつけられてジェフリー王子の顔が少し歪んだ。
王妃もジェフリー王子の提案には聞き捨てならないものを感じたようだ。
「結婚? あなた名前と身分は」
リンジーは躊躇いがちに答えた。
「リンジー・ロックウッド。ロックウッド伯爵家の娘です」
「ロックウッド……」
王妃はなんとなく青ざめたように見えた。まじまじと無言でリンジーの顔を見る。
それから王妃はかすれた声でジェフリー王子を問いただした。
「ジェフリー。どういうこと」
ジェフリー王子は首を竦めた。
「母上。私はリンジーを妻に欲しいのです。こんな手でも使わなければ手に入らなさそうだったんでね」
そう言ってジェフリー王子はアーロンをちらっと見た。
ジェフリー王子の発言に、息をひそめて見守っていた会場中の貴族たちがざわつきだした。
そのとき
「ならぬ」
と太い声がした。
国王だった。
ジェフリー王子に命令するような鋭い口調だった。
「こんな手でも使わなければということは、この娘の心はおまえにはないのだろう? 別におまえの不幸な結婚なぞ心配してはおらんがな。この娘がロックウッドの娘だということに問題がある」
ジェフリー王子は怪訝そうな顔をし、
「何の問題……」
と言いかけたとき。
空気を読めない二人が大広間に入ってきた。
「ふふふ、今頃は宴も酣って感じかなあ。って、うおおおおおい、なんだこのお通夜みたいな空気は!」
──リンジーの父と兄だった。
領地の用事から帰って来て、「あ、今なら舞踏会間に合うかも、賑やかな酒が飲める~」と舞踏会に顔を出したのだった。
意気揚々とやってきたのに地獄のような空気の王宮の大広間。
二人はぽかんとしたが、現状把握しようと会場を見回し跪いているリンジーを認めた。
「父上、何かリンジーがしでかしたみたいですよ」
「ほんとだ。あんなところで座ってる」
「座ってるんじゃなくて、あれ跪いてるって言うんですよ」
リンジーの父ロックウッド伯爵は、全く場に似つかわしくない笑顔で王妃のもとへすたすたと歩いて行った。
「王妃殿~うちのバカ娘が何かやらかしましたかね?」
……たいへんフランクな話し口だ。
「あ、いえ……」
王妃は、息子の爆弾発言やら飄々と現れたロックウッド親子やらに少なからず混乱し戸惑いの返事をした。
国王はゴホンと咳ばらいをした。
「ところでロックウッド伯。今日は例のアレだったかね?」
ロックウッド伯はにっこりした。
「ええ。でもたいしたことはありませんでした。話せば分かる人たちで」
「話せばと言うが、あの連中と話せるのは君だけだ」
国王は頼りにする口ぶりでロックウッド伯を労う。
「そうですか? あのオカルト連中、酒を飲むと気のいいやつですよ」
ガッハッハとロックウッド伯は大声で笑う。
ロックウッド伯がオカルト連中と呼ぶのは、この国の多くの民が信じている神殿の聖職者たちのことだ。
税制などで優遇されているこの国の神殿は歴史的に力を持ちやすく、政治介入に対しても垣根が低い。特に『聖夜』の季節になると何かしら『威圧的な意見』を言ってくるのが常になっていた。
神殿の力は強いためほとんどの貴族が適度な距離を置いて遠慮がちに接するのだが、ロックウッド伯だけは彼らを「オカルト連中」と呼び、どんな要領なのか彼らとたいへん馬が合う。
毎年の『ご意見』も、ロックウッド伯が出ていくとなぜだか話し合いがスムーズに進み、最後は酒を酌み交わして『合意』するのだ。
ただ単に、ロックウッド伯と酒を飲みたいがために『ご意見』してくるんじゃないかと疑いたくなるほど。
そのため国王はこの神殿の総本山の土地をロックウッド伯に領地として与え、実質的な神殿係を押し付けていたのである。だから、国王はロックウッド伯をないがしろにできない雰囲気があった。
「にしても舞踏会に非ざるひどい空気ですな。何かあったんですか?」
ロックウッド伯は目をぱちくりさせながら大広間を見回す。
国王はまさかロックウッド伯の娘を不敬罪で罰しようとしていたなどとは言いにくく、
「いや~うちの息子がおたくの娘にちょっかいを出しおってね」
と汗をかきかき答えた。
ロックウッド伯は露骨に嫌そうな顔をした。
「うちの娘が王族に? そいつはちょっとやめてもらえませんかね。王族の縁者などになったら品行方正が求められるでしょう」
今度は国王と王妃が顔を顰める。
「そんな嫌がらんでも」
そのときすかさずリンジーが口を開いた。
「お父様。私はすでに心に決めた方がいます」
ロックウッド伯は不安そうな顔をした。
「まさか王族じゃないだろうね?」
「違います。こちらのアーロン様です」
リンジーは隣のアーロンを指し示す。
兄オーリーはにやりとした。
「はい、婚約決定!」
ロックウッド伯は心からホッとしたような顔をした。
「王族じゃなきゃ何でもいい!」
ジェフリー王子は悔しそうにしていた。
いいこと思いついたと思ったのに。こんな結末、少しも予想していなかった!
まさか両親がこんなにロックウッド伯に遠慮していたとは。
そして後ほど、両親の余興を台無しにしたことをただただみっちり怒られるのだろう。
そんなこんなで。
ロックウッド伯の乱入によりさっきの地獄のような空気は一気に解きほぐされ、リンジーの不敬罪騒ぎもなし崩しになり、そこには恋が叶って微笑み合うリンジーとアーロンがいたということで。
大波乱からの婚約劇。まあハッピーエンドということで──。
最後までお読みくださいましてありがとうございます!
とっても嬉しいです!!!
こちらはXI様主催の『真・恋愛企画』参加作品になります。
企画への参加はたいへん勉強になります。
『真・恋愛企画』を主宰してくださったXI様にこの場を借りてお礼申し上げます。
こちらの『真・恋愛企画』、私も参加作品を読み始めていますが、企画名通り素敵な話が多いです。
なにせテーマが≪ガッチガチの恋愛モノ≫ですから♡
ぜひ企画のほうも覗いてみてくださいませ~(↓主催者さまにかわりまして下にリンクで宣伝を↓)
こちらの作品ですが、もし少しでも面白いと思ってくださったら、
ご感想やご評価★★★★★いただけましたら、次回への励みになります。
すみませんが、よろしくお願いいたします!