第35話 「魔人化」
異形は爪を地面に突き立て守りの体勢になる。
「その爪壊れるよ?『扇撃』!!」
イチカは真っ直ぐ飛び扇状に蹴りを入れると
異形の全ての爪を破壊し着地する。
「あたたた!!」
脛を抑えて蹲るイチカ。
異形は顔をイチカの方に向けて高圧の水を
口から吹き出そうとする。
『双突爆拳!!』
異形は突然の爆発に驚き攻撃が止まる。
その間にバクマルはイチカを担ぎ距離を取る。
「大丈夫か?」
「えへへ、思いの外堅かった」
「でも、すげーよお前のパワー!俺の爆拳でも
ヒビすら入らねーってのに……」
「私も自分の怪力につくづく驚いてるよ」アハハ
「動けるか?」
「うん!もう大丈夫!後は本体だけだし楽勝!!」
イチカは再び異形の元に走る。
「へっへっへっ、ミカド嫉妬すんなって」
「してねーよ!!」
「顔に出てんだよ、そうカリカリすんなって」
「してねーって!!」
バクマルが戻って来る。
「案外イチカっていい女だな」
「殺すッ!!!!」
「やっぱ嫉妬してんじゃねーか!!」
「なんだミカド?ヤキモチか?大丈夫!
お前にはメグミちゃんもいるだろ」
イチカは立ち止まりバクマルを睨む。
「冗談だ!!冗談!!ミカドを少し
からかっただけだって!!」
「バクマル嫌いーーー!!!!」
そう言ってイチカは再び異形の元に走り出す。
「始まる前に終わったな」プフッ
「元から始めるつもりもねーよ……」
ミカドは安心してバクマルを嘲笑う。
爪を破壊された大爪の異形は急激に
俊敏になりイチカの頭上に飛び上がる。
「嘘!?そんなに動けるの聞いてない!!」
キシェ……
異形はイチカ目掛け高圧の水を口から吹き出す。
「イチカ!!」
「問題なし!『闇喰喪』!!」
イチカの片腕が闇のエネルギーに包まれ
異形の攻撃を受け止めそのまま吸い込んでいく。
「闇の力か……俺もあっちがよかったなぁ~
闇の炎に抱かれて消えろ……とかリアルで
行ってみたかったなぁ~」
「何言ってんだお前?」
「ジンにはわからんロマンというものだ!!」
「なんかイチカ……ヤバそうじゃねーか?
手ェ貸してやるか」
「まぁまぁ、フラれたバクマルちゃんはそこで
大人しくしていたまえ!!」
(こいつジンよりムカつく性格してんな……)
イチカは噴射し続ける異形の技を受け止めきれず
力が消えかかっていた。
助けに行こうとするバクマルを嘲笑い
ミカドはイチカの手助けに向かった。
「イチカ!!助太刀するぞ!!」
『雷閃!!』
『閃斬雷撃』
ミカドと後から来たジンの技がヒットし
大爪の異形は攻撃をやめ落下する。
「おい!ジンお前もイチカを狙う気か!?」
「悪いが怪力女はタイプじゃないな……」
「あァ!?誰がメスゴリラじゃぁぁあ!!」
「誰もゴリラとは言ってねーだろうがぁぁぁあ!!」
イチカの癇に障り追い回されるジン。
それを光景をミカドは恐怖の眼差しで見ている……。
「おいお前ら!!遊んでる場合じゃねーぞ!!」
「ガァッ……」
キシェキシェキシェ
異形の高圧水を受けミカドはその場に倒れ込む。
「ミカド!!そんな……。」
イチカはすぐさま駆け寄りミカドを確認すると
心臓を貫いていた。
「ミカド!!ミカド!!ダメだよ!!しっかり!!」
「死なねぇ……俺は死なねぇ……――――」
ミカドは全身の力が抜け目を閉じてしまった。
「……」
「イチカ悪い……俺がふざけたから……」
「……」
「ジン離れろ!!イチカの様子がおかしい!!」
イチカの身体が黒く染まりだし
紫色の闇のエネルギーではなく
黒いオーラが揺らめいている。
大鎌の異形に襲われた仲間達を見た時の
ミカドと同じ暴走状態になっていた。
「イチカ……お前……」
「……」
イチカは無言で立ち上がり近くにいた
ジンを掴み地面に叩きつける。
地面に大きなヒビが入り地面にめり込んだ
ジンは気を失ってしまっている。
「おいおいおい……なんだありゃ……
ジンを一撃でのしやがった……」
キシェキシェキシェ
大爪の異形はイチカに向かって
高圧水を口から吹き出しイチカの脚を貫く。
イチカはその場に倒れるがみるみる再生し
再び立ち上がり一瞬で異形との間合いを詰め
異形の頭部をパンチ一発で吹き飛ばし
なお攻撃しようとする異形の両腕を引きちぎる。
「再生……まるで人型の異形じゃねーか……
あんなヤバい奴、俺じゃ止められねぇ……」
キシェ…………キ……シェ……
大爪の異形は暴走状態のイチカに原型が
無くなるまで殴られ続けた。
イチカは立ち上がりバクマルの方を振り向くと
無言で猛ダッシュする。
「イヤァァァァア!!!!」
情けなく叫ぶバクマルは
イチカに殴られる前に気絶した。
しかし、イチカの拳は止まらない。
「ダメだよイチカ」
「……」
「それ以上は君が持たない」
突如、シツキが現れ仲間を殺めようとする
イチカの拳を止める。
「……」
「いつかはこうなると思ったけど二人とも
『魔人化』するのが早いよ」
シツキがイチカの頭に手を置くと
三分の一程黒く染った身体が元に戻っていき
気を失うように眠りにつく。
「それとミカド……もっと戦いには集中しないと、
護るどころか君が死んだら話にならないよ」
「――――」
「今回はサービスだよ」
シツキがミカドの穴の空いた胸に手を添えると傷が
一瞬で元に戻り、止まっていた心臓が再び鼓動する。
「さて僕が関わるのはここまであんまり
余計な事すると怒られるからね……やれやれ」
シツキは光と共に姿を消した。
シツキと入れ替わる様に次元の扉が開き
黒神アンユと無口の男が現れる。
「お兄ちゃん……この子どう……」
「…………」
「うん……決めた……この子にする……」
無口の男がイチカを抱き抱え
アンユと共に次元の扉へ消えていく。
「う……うぅ……俺どうなって……
ハッ!イチカ!?異形!?――あれ??」
しばらくしてミカドは目を覚まし
戦闘中だった事を思い出し辺りを見渡すが
異形の姿もイチカの姿もなかった。




