第27話 「人類の選別者・黒神アンユ」
ミカド達は空を見上げ晴れゆく暗雲を眺める。
ようやく異形から解放されると安堵した。
「終わった……って事か……」
ミカドはどこか晴れない気持ちでいる。
雲ひとつ無くなった空から白光りする
眩い何かが降りてくる。
「今度はなんだ……」
ジンは眉間にシワを寄せて光を見る。
白光りする光は近づくと段々と人の形に変わる。
そしてミカド達の前に降り立つと、
白髪で腰下まで伸びた髪を輝かせ、衣服は無く
裸の様な姿の幼い女の子が降り立った。
誰もがその子を見て神々しさを感じていた。
「やっ!!」
女の子は片腕をピンッと上げて
ミカド達に挨拶をする。
「き、君は???」
神という存在がいるのなら。きっとこの子だろうと、
もし神だと言うなら異形を放った張本人
こんな幼い容姿の子でも神は神、やるしかないと
固唾を飲み込み緊張しながら質問するミカド。
「お兄ちゃん達が会いたい存在ではないよ!
でも会って良かったと思える存在だよ!」
「つまりどういう事かな?私達からしたら
神々しさ満載で空から降りて来たあなたを
神様としか思えないだけど?」
イチカはハッキリしない女の子に答えを急かす。
「わたしはマナ!お手伝いさんなのです!」
………………。
場は一瞬時が止まったかのように静まる。
「えっと~……マナちゃん何を
手伝ってくれるのかな?」
マナは質問するイチカの前に立ち両手をかざす。
すると白光りする光がイチカを包んだ。
「なッ!何してんだ!!」
ミカドはマナの腕を掴み辞めさせようとするが
全く微動だにしない細腕に困惑する。
「大丈夫!わたしは味方!」
やがてイチカを包む光がスっと引き、
なんの変化もないイチカが出てきて
ひとまず安心するミカド達。
「すごい……なんか力が溢れてくる……」
「は?イチカ大丈夫か?」
「もうお姉ちゃんは人間の域を
超えた存在だよ!異形も怖くない!!」
イチカは感じるままに力の解放を想像し
近くの壁にパンチすると壁がガラガラと
いとも簡単に崩壊した。
「うわぁぁぁあ!!お前のせいでイチカが
化け物になっちまったじゃねーーーか!!!!」
「化け物じゃないよ、わたしは人間の秘める
力を覚醒させただけだよ?」
「これなら私も異形と戦えるやっと役に立てる」
「イチカ……マナこれは何なんだ」
「お兄ちゃんと同じ覚醒を無理やりお姉ちゃんにも
やってあげたの!『神格化』だよ!」
マナは異形に襲われる人々の救済として
生き延びた人々の所を回って覚醒させ
異形に対抗出来る術を与えていた。
人々は皆、神の子であり誰もが親である
神の力を秘めていると言う。
覚醒し親である神に近づく事を『神格化』と言う。
マナは覚醒していない人達をイチカ同様に
覚醒させていく。
「おぉ!!手から光がこれはどうしたらいい!!」
セイヤは戸惑いながらはしゃぐ。
「俺様は何もでねーーーぞ!!でも、俺様の最強に
更に磨きがかかった気がするぜ!!来い異形共!!
俺様が一匹残らず駆逐してやるぜ!!!!」
「少し黙れ……『氷牢』おっ、出来た」
はしゃぐウズキに力の試し打ちをするユアサ。
マナは覚醒させ終わると少しくたくたになる。
「今回は人が多~いな~」フェ~
「メ、メグミも覚醒したいです!!」
「あたし達の事忘れないでよな!」
「ミ、ミナトちゃん、あんま急かしちゃダメだよ……
マナちゃん疲れてるみたいだし」
「本当はユウシンだって早く力欲しいでしょ!」
「お姉ちゃん達はざんねんだけど無理だよ」
固まるメグミ、ミナト、ユウシン。
「お姉ちゃん達はそこの人達と同じ半妖だからね
わたしが手を出せる範囲外なの、ごめんなさい」
至って人間の三人は普通に人間として生活してきた
三人は自身が半妖だとは信じられず言葉が出ない。
「まだまだ異形は来るから!とにかく戦って!
生き残るにはそれしかないから!」
それだけ言い残しパッと消えるマナ。
「シツキと言いマナと言い、いったい何なんだ……
それにしても来恋千先輩達が半妖だったとは」
「メグミ……せっかく役に立てる様に
なれると思ったのに……」
「メグミは戦わない方がいいわ、
そんな柄じゃないもの……」
メグミを慰めるレイだがメグミは落ち込んでいる。
「なぁ、半妖さん達!どうやってそうなったんだ?」
「……半妖なんかになるものではありませんよ、
人間でいられるならそのままの方が……」
ハオリは半妖になる事を進めない。
半妖はそもそも人間よりも妖と呼ばれる存在に
近い存在。鬼は人間と何ら変わらず、覚醒の仕方が
違うだけの存在。半妖は何かを欲する強い欲求により
秘める妖の力が覚醒すると言われている。
鬼の悲しみや怒りによる覚醒とは違い、欲求による
覚醒は間違えれば今まで一緒に行動していた
仲間達の命を脅かしかねない存在になってしまう
可能性があるという事だそうだ。
もちろん全員がそういう訳ではないが
破壊欲求や吸血欲求、最悪なのは殺戮欲求など
人間の生活を脅かす半妖は直ぐに処分されるのを
ミキリ達は見てきたのだ。
「私はミカド君が好きッ!!!!」
「来恋千先輩急になんですか!?!?」
「ななな!!ミカドは私のミカドです!!」
焦りながらミカドをガードするイチカ。
「えへへぇ~実はミカド君の事が好きなの……
みんなを護る為に強くなろうとする姿が
かっこいいなぁ~って思って……メグミと違って
役に立とうと本気で頑張ってる姿見てね、気づいたら
好きになってたの……」
「それでもミカドは譲れません!!」
「分かってるよ~、ミカド君が欲しいって!
自分の気持ちに素直になれば半妖として覚醒して
みんなの役に立てるかなって思っただけだよ~」
「ハッハッハ!!だが気持ちが足りないな!!
あいつが欲しいか、欲しいならもっと本気で欲しろ
何が何でもあの女から引き剥がして自分のものに
する位の気持ちになれ!!」
「山剛さん何言ってるんですか!?!?」
メグミの半妖化を促すバクマルにテンパるミカド。
「ミカドは私の!!」
「分かりました……メグミ、イチカちゃんから
ミカド君奪います!!」
「いいぞ!!その調子だ!!」
「ミカドは私の方がいいよね!?!?
来恋千先輩よりイチカの方がいいよね!?!?」
「当たり前だろ……変な事言うなよ……」
「ミカド君……メ、メグミの方がおっぱい
大きいですよ!!」
「…………」
メグミの胸に視線が行くミカド。
「なんでよ!?なんで揺らぐのよーーー!?!?」
「ゴッフゥッ!!!!」
イチカにビンタされ遠くに吹っ飛んでいくミカド。
「痛た……神格化……こえー……
喧嘩の度に今後吹っ飛ばされんのかな……」
将来を見据え本格的に揺らぐミカドであった。
空は再び暗雲に包まれていき今度は二つの
黒いモヤの塊がミカド達の前に降り立つ。
モヤが消えていくとそこには背が高く
生気のない細身の男性とイチカが仲間につけた
大顎の異形が異形の群れに襲われた時にいた
幼い少女が立っていた。
「あの時の……」
イチカはカムフルと名付けた大顎の異形を
異形の群れに襲わせたのはこの子だと思っている。
「わたしは『黒神アンユ』人類の選別者、
本番はここから……これから来る異形達は
もっと強い……まずはお試し……『ウル』の相手
頑張って……それじゃ……」
黒神アンユと名乗る少女と隣にいた無口の男性は
次元の扉の中に消えると、そこから狼のような
四足歩行の異形が一匹出て来た。
グルルゥ……
「お前ら下がれ!!俺がやる!!」バチチチ!!
ジンは抜刀し雷を発する刀を構える。
ウヲォォォン!!!!
ウルと呼ばれる異形が雄叫びを上げ戦闘態勢に入る。




