第26話 「黒翼の異形の正体」
ミカド達は合流した五黒一家にアキラの死、
鬼や半妖と合流して協力関係になった事や
異能が扱える様になった事、この山にも異形が
出現し安全な場所はもう無い事、
サヤのバイオパックを補充する為に
火花衣病院に向かう所を説明した。
「そういえばタカオミさん、マサさんは?」
「マサは死んじまった」
「えっ……マサさんが!?」
マサと交流があった者達は驚愕した。
「ここに戻って来る途中で沢山の異形に
追われちゃってね……マサは身代わりになって……」
「泣くな結埜、お前が悲しんでたら
いつまでも五黒は成仏できねーだろ……
あいつの分まで気合い入れて異形共をブッ倒すんだ」
「氷洞さん……変わりましたね」
「ミカド!バカッ!氷洞さんに変な事言わないの!」
「ミカド、お前の言う通りだ……俺は変わる
五黒の分まで異形をブッ倒して、一家を護る……」
ミカド達はユアサの変貌に感動し拍手する。
「やめろッ!!」
「照れんなよ~ユアサ~」グビッ
「近寄んな酒くせェ!!」
(ユアサ、マサが乗り移ったみたい)ニコニコ
「なんだよ結埜!?」
「なんでもない!」ニコニコ
「君達!!再会の邪魔して悪けど、
そろそろ行かないとマズイよ!!」
ミキリに言われ、急ぎ異形の数が
少ない方向から山を降りていく。
途中でミカドの暴走の原因となった
大鎌の人型異形が姿を表した。
「あ……あれは……記憶が……」
「ミカド君落ち着いて、大丈夫ですよ
今の貴方なら、ちゃんと護れます」
大鎌の人型異形に襲われた仲間達が血に染まり
そこら中に倒れている景色がミカドの脳内に蘇り
呼吸を荒くしパニックになりそうなミカドを
ウタカタはなだめた。
「思い出しました……」
「今度はしっかり仲間達護りましょう」
「ミミミ!ミカド!ぼぼぼ僕も手伝うおッ!!」
ボス感満載の異形にビビり散らかしているイチロ。
「やめとけ、そんなんじゃミカドの邪魔になる」
「そこまで言うなら仕方ないお!!
今回は轟鬼氏に任せるんだお……」
「ありがとなイチロ、気持ちは受け取った
この異形は俺一人で倒す」
ミカドは一人異形の前に歩みを進める。
「ちんたらやってる時間はねー、
お前の憎しみも分かるが戦える奴は沢山いる、
軽くひねって先を急ぐ、いいな」
ジンはミカドの肩を掴み歩みを止め
大鎌の人型異形を一気に仕留める様に促した。
後ろでは鬼達は刀を抜いて、半妖達もやる気十分。
雨昵一家も銃を構えている。
ミカドはその光景を見て絶望的な状況も
何とかなると希望を抱いた。
「サクッと終わらせよう!」バチチチッ
異形は大鎌を振りかざし、物凄い勢いで近づく。
ウタカタが飛び出し、ミカドに振り下ろされた
大鎌を太刀で受け止める。
「ミカド君!ジン!少し下がって!」
ウタカタの指示で間合いを取るミカドとジン。
「すごいスピードですね、アカネ達が苦戦したのも
納得いきました、でも私には通用しません」
『泡沫泡結』
ウタカタの太刀から湧き出る泡が異形の身体に
まとわりついて動きを鈍くする。
ウタカタも大鎌を弾いて距離を取るが
異形は自ら大鎌で身体ごと泡を突き刺して
泡を割っていく。
身体の傷口はみるみる再生した。
「恐ろしい事しますね……」
(あの再生の仕方……暴走したミカド君と同じ……)
『刺毒渇酔!!』
ミキリは両手に纏った毒を異形に突き刺し
体内に叩き込んで行く。
「今の私の毒じゃ対して効果ないから、動きが
鈍くなった今の内にじゃんじゃん攻撃だよ!!」
「待て……無駄な労力は使うな」
「氷洞さん!一人じゃ危ないです!」
「お前らこいつの強そうな雰囲気に呑まれて
根本的な事忘れてるんじゃないか」
毒で動きが鈍くなった異形にゆっくり近づき
拳銃の銃口を異形の頭部に一発撃ち込んだ。
銃弾を受けた異形の再生は止まり
その場に崩れ落ちた。
「異形単体ならコア壊せば簡単にケリが着くだろ」
「そうですよねぇ~」ハハハ……
拍子抜けする一同。
「ちんたらやってる時間ないんだろ……急ぐぞ」
「ハッハッハ!!一本取られたな轟鬼!!」
「山剛テメェ……シバくぞ……」
「ちんたらやってる時間ないんだ……急ぐぞ!」
「テメェはここで死ねや!!」バチチチッ!!
「二人ともはしゃいでないで行きますよ
小さな子達もいる前でみっともないですよ」
ウタカタのおかげで小競り合いが止まる。
何とか異形を切り抜けて焔中央都市にある
火花衣病院にたどり着く。
しかし辺りには異様な光景が広がっていた。
「っすげぇーな!!異形の死体しかねーじゃん!!
流石に最強の俺様でもこうはいかねーぜ!!」
「ウズキ君……ここに来るまでの間ずっと
真ん中で隠れてたよね……」
「メグミちゃん!?ち、違う違う!!
いざって時に控えてただけだぜ!?本当だぜ!?」
薄々メグミもウズキが最強じゃない事に
ようやく気づき始めた様だ。
「いったい誰が……」
異形の死体の山に困惑しているウタカタ。
「あの異形の仕業としか考えられないわね……」
「サヤさんのおっしゃる通りだと思います」
ヒラノリは鬼と半妖達に火花衣病院を縄張りにする
黒羽の異形の事を話した。
「恐らくその異形がこの異形の大進行で縄張りの
病院を荒らされないように近づく異形達を
殲滅した痕跡と考えるのが妥当かと思います」
「往念さんの言うことが正しければ病院内にいる
その異形に出くわしたら最後ですね……」
「ウタカタさん安心して下さい!
その為にある僕の眼ですよ!」
カズイチは目を開くと人間の目では無くなっていた。
「なんだその眼!?」
異様な眼に驚くバクマル。
「言ってませんでしたね~、僕の眼はちょっと
特別で、数秒先を予知できる眼なんですよ~
多様は出来ない不便な眼ですが……」
大人数で病院内に入るのはかえって危険だと判断し
カズイチとサヤ、護衛にウタカタが付き添い
再生促進剤のバイオパックやバイオシートを
回収に向かう。
「いやぁ~美人さん二人と一緒に行動なんて
僕は幸せ者だなぁ~」
「何言ってんのよこんな時に、気色悪い」
「カズイチさんしっかりお願いしますね……」
ミカド達はカズイチ達の帰りを待っていると
少し離れた所から羽ばたく音が聞こえて来た。
「もしかして……」
羽音の方に振り向き、冷や汗を垂らすミカド。
「今ご帰宅の様だな!全員!逃げるぞ!!」
「でも!タカオミさん!まだ、サヤさん達が!!」
「だからって足止めも出来ない!カズイチが上手く
やり過ごすと信じて俺達は逃げるしかない!!」
全力で逃げるミカド達。
「あいつ追って来るぞ!!こうなったら俺が
囮になって!!」
「早らないで!セイヤ!!とにかく逃げ続ける
それしかないわ!!」
横目でレイとセイヤを見ているイチロ。
「全員止まれ!!マズイぞ……」
タカオミがストップをかけると
黒翼の異形とは反対方向からドドドドと
多数の足音が間近に迫ってきていた。
「異形の大群とやべぇ異形の挟み撃ちってか」グビッ
「こんな時に飲む酒は美味しいですかバジオさん」
「あァ~最高だね!染みる染みる~」クビックビッ
逃げる事を諦めざる得なくなった一同は
戦闘態勢に入る。
異形の大群が建物を倒壊させながら姿を現し、
絶対絶命の時に黒翼の異形はミカド達の前に
降り立った。
「あぁぁぁあ!!!!終わったぁぁぁあ!!!!
神様ここまで生かしてくれてありがとうござい
まじだぁぁぁあ!!!!」
泣き叫ぶウズキ。
黒翼の異形と異形の大群に向かってミカド達は
攻撃を一斉に仕掛けようとするが。
「俺一人で十分……下がっていろ」
『禍風裂空ノ陣・平捌葬乱』
黒翼の異形は喋り出したかと思えば
異形の大群を瞬く間に木っ端微塵にした。
「早くここを離れることだ……」
「あ、あの!!」
ミカドは黒翼の異形の正体を聞こうとしたが
すぐさま飛び去ってしまった。
「なんだうちらの同類じゃん」
「全盛期のミキリさんを見ている様な気分です」
「どうかな~全盛期の私とハオリでも
敵わない程の力を持ってそうだけど」
黒翼の異形と恐れていた存在は
美酒天道ミキリノカミ達同様に半妖だった。
「仲間に着いてくれたら安泰だったのに……」
「イチカの言う通りだ、呼び止めて仲間に
なってもらおうと思ったのにな……」
落ち込むミカドとイチカ。
「ちょっとーーー!!!!私達を置いてくとか
何考えてんのよーーー!!!!」
置いて行かれたと思い激おこのサヤ。
事情を説明しようとした時、再び異形の群れが
近づいてくる音が聞こえてくる。
「事情は後で!!今はここを離れましょう!!」
ウタカタは怒るサヤをなだめて
全員異形の足音と反対方向に逃げる。
無限に湧き続ける異形。
ミカド達の勝利はまだまだ遠い。
しかし、希望はすぐそこに。
空を包んでいた暗雲が晴れて
一人の少女がミカド達の前に降り立つ。




