第25話 「一家解散」
異形の大進行に追われ五黒一家は逃げていた。
逃げる事に限界を感じ始め、五黒マサは足を止める。
「おい!五黒!!足を止めるな!!」
「何してんだよ~戦う気か~」グビッ
「無茶よあの数!!早く逃げないと!!」
「お前ら、持ってきた爆薬全部俺によこせ」
「どういう事だ……」
「俺が爆弾を仕掛けて爆発させながら
異形の数を減らして逃げるって寸法だよ!!」
マサはそう言うが全員はマサの本当の
目的を察してしまう。
「…………死ぬなら俺達も一緒だ、家族だろ」
「タカオミ……家族だからだ……
お前なら分かるだろ、なっ!」
「…………」
タカオミはマサの誘いで一家に入る前には
貧困街で子供から老人まで
沢山の人達を家族同然とし面倒を見てきた。
いざと言う時は身を削り家族に少しでも
いい暮らしが出来る様にやってきた。
そんなタカオミだからこそマサの気持ちを
分かってしまう。
「ヤダ!!マサ一人で逝かせられないよ……
仲間に囲まれてないとマサ、また泣いちゃうよ……」
「結埜……大丈夫だぞ、俺はもうおっさんだ
あの頃とは違う、寂しくなんかねーぞ」
「私は寂しいし辛いよ……マサは私の育ての親だよ、
父親同然なんだよ!!捨てられた赤ん坊の私を
拾ってくれてこんなに強くしてくれた!!
一緒に逃げようよ…………」
やれやれと言う顔をするマサ。
「どうせ死んじまうから言っても怒られねーかな、
お前は捨てられたんじゃない……預かっただけだ、
父親は知らないが、母親はいつかお前の前に現れる、
詳しい事は母親に聞いてくれ俺もよく分からず
お前を預かっちまったからな」
「でも、異形もいるし……死んでるかも……」
「そこは安心していいさ、
簡単に死ぬ様な人じゃないのは確かだ」
「私は育ててくれたマサがいいよ……
事情も話さずに置いてく親よりマサがいい!!」
「しょ~がね~な~」
マサはいつも掛けているサングラスを外して
結埜の頭に掛ける。
「俺の大切な物だ、お前にやる」
「うぅ……」
「結埜~マサをあんま困らせんな」グビッ
「ハハハ!!結埜もまだまだガキだからな」
「ガキじゃない!!もう知らない!!」
「おぉー行け行け!!爆薬は置いてけよ~」
全員マサに爆薬を託す。
異形がだんだんと近づいてくる。
「五黒……」
「どうしたぁ?ユアサ~急に俺が恋しくなったか?」
「なんでもねぇ……」
「ハッハッハ!冗談だよ、ほれ!これ着てけ」
マサはユアサに一家の印である黒い
ジャケットを羽織る。
「五黒……」
「分かってんだよ!プライドが邪魔して
一家に馴染めなかった事くらいな!」
「悪かったな……」
「ほら、行け!!お前らも爆発に巻き込むぞ!!」
一家はマサに背を向け走り出す。
走っていく一家の背中を見て叫ぶマサ。
「バジオーーー!!次はお前が一家の最年長だ!!
何時までもおチャラけてられねーぞ!!無理だろうけどな」
「ユアサ!!俺が死ねば一家最強はお前だ!!
皆にちゃんと力を貸して戦い抜け!!間違っても
一家を傷つける様な事があれば俺は許さねぇ!!
まっ!今のお前なら大丈夫だろうけどな!!」
「結埜!!次会う時はあの世でだ!!
お前のおばあちゃん姿楽しみにしてるぜ」ハッハッハ
「五黒一家は本日を持って解散!!!!
タカオミ!!次はお前が一家の長だ!!
しっかり皆を導いてくれ!!頼んだぞ!!」
走り続ける一家は背を向けたまま
それぞれ持っている銃口を空に突き上げ
同時に発砲した。
「よし!……ってマズイな……」
異形がもう間近に迫っている。
「細々と爆薬置いてる場合じゃねーな」
マサは爆薬を乱雑に蹴り飛ばしばら撒く。
ジッポライターに火をつけて煙草を一吸い。
スゥーーー、ハァーーー……
目の前まで迫って来る異形。
マサはジッポで導火線に火を付けた爆薬を咥えて
他の手元にある爆薬を抱え思いっきり投げ空中にばら撒く。
「姉貴……まだ生きてんだろ……
悪い……先に父さんと母さんとこ逝くわ……」
ドゴォォォォオン!!!!
衝撃波が一家の仲間達をも吹き飛ばす。
「マサ……」
「大丈夫か結埜……」
「ユアサァ……」
「泣いてる暇はねぇ!!マサが稼いでくれた時間を
無駄には出来ねぇ!!八蘇木山に戻るぞ!!」
「そうだね……行こう……」
爆発で吹き飛ばされた異形の群れは肉壁となり
生きている異形の進行を遅らせた。
何とか異形が進行していない八蘇木山に
到着した一家は麓で腰を下ろす。
「タカオミ……お願いがある」
「おっ?なんだ?腹減ったか?」
「いや……マサはお前に一家を託したな」
「まぁ、普通に考えりゃ~タカオミが一番
一家の長に向いてるわな~」グビッ
「俺に一家の名を預からせてくれねーか」
「ユアサ……」
「お前……今まで自分がやって来た事わかって
言ってんだろうな……」
「確かに俺はこの一家を乗っ取るつもりで
最初は入ってきた……何度もマサを暗殺を仕掛たし、
お前達にもこのナイフを向けた……、だが今は違う!
五黒一家に入って時が経ち変わったんだ……
マサの築いたこの一家を俺は護りたい……
お前らみたいな暖かい奴らを護りたい……
マサのこのジャケットに誓って!!俺は!!
死んでもお前らを護りたい!!!!」
「ダメだ……」
「タカオミ!!私はユアサの決意受け取るわ!!」
「ユアサがこんな事言うなんて信じられね~が、
俺達も薄々気づいてたろ……こいつの変化は」グビッ
「俺も別に長の長欲しいって訳じゃない
ただ、悪いが……お前はまだ信用に値しない」
「タカオミ!!せっかくユアサが私達に
心を開いてくれたのに!!酷いよ!!!!」
「どうすればいい……」
「色んな人と接しろ、ナイフを向けずにな
ただそれだけだ……それだけだが、
お前の根本的な所はそう簡単に変われない……
簡単に人を傷つける様なやつだお前は、
今度は自分の為にじゃなく、人の為に
そのナイフを振り続けろ、俺に認められるまでな」
「分かった……暫くは『雨昵一家』で
我慢してやるよ」
「分かってくれたか」
「頑張ろうねユアサ!!」
「うるせぇ……切るぞ……」
「ちょっと!!いつものユアサのままじゃん!!」
「しまった……つい……」
「ガッハッハッ!!ようやく期待の新星ってとこか!
これからのユアサが楽しみで酒が進むぜぇ~」クビッ
五黒一家改め、雨昵一家は一段落し
山を登りミカド達と合流しようと立ち上がった時
異形の群れがゾロゾロと八蘇木町に入って来た。
「おいおいおい……カズイチの話と違うじゃねーか
早くミカド達に知らさねぇーと!!」
「急ぎましょう!!ここも危ないかもしれない!!」
山を急ぎ登っていると、下山してくるミカド達と
ちょうど遭遇する。




