第19話 「鬼とミカド似て非なる存在」
「鬼ーーー!!!!鬼だお!!僕と同じ鬼だお!!
角角角角角角!!!!刀刀刀刀刀刀!!!!
ユウタ!!ナイス!!ナイス!!ミカドォ!!」
家に戻り真っ先にミカドに駆け寄ったのは
初めて見る自分以外の鬼に興奮するイチロだった。
「ミ……ミカド……良かった……」
「イチカ……何とか戻った……」
「誰よこの女ー!!浮気!!ミカドが浮気ー!!」
「ミカド最低だお……いくらこの鬼さんが
美人さんだからって……それはどうかと思うんだお」
「んなわけあるか!!この人は動けない俺を
ここまで運んでくれただけ!!」
先に戻ったレイにミカドが逃がしてくれた事を
説明され、絶望していたイチカはミカドが戻り
安堵したと同時にウタカタと言う美しい鬼に
背負われたミカドを見て取り乱すイチカ。
「ミカド君!!無事だったのね!!
愛美希さんとミナトちゃんは!?!?」
先に戻ったレイは夜勝刃家の事、アキラとミナトは
絶望的だと言うことミカドを置いて
逃げて来てしまった事も皆に説明していた。
「まずい状況です!!急がないと!!
サヤさん!!アキラさんとミナトちゃんが……」
アキラとミナトの姿を見て一同騒然。
虫の息のアキラとミナトをサヤに診てもらう。
「助かるわ……」
「本当ですか!?」
「ただ、どっちかね……どんな負傷でも命は
繋ぎ止めるつもりで道具を持ってきたけど、
ミナトちゃんの負傷が大き過ぎる……失血死
してない事自体が奇跡だわ……」
意識を失っていたアキラが目を覚ます。
「火花衣……先生……ミナトを……
ミナトを助けてやって下さい……」
「いいのね……」
「血でも……臓器でも……なんでも好きに
使って……下さい……」
「分かったわ……あなたの命はミナトちゃんに
しっかり繋ぐわ……」
サヤは手術の準備を大急ぎで用意し始める。
「ミカド君……私とミナトを諦めずに……
連れて……来てくれて……ありがとう……」
「当たり前じゃないですか!!でも……」
「いいんですよ……気に病むことは……
何もありません……私がしたくてした事です……
正直……ミナトはダメだと思ったので……
あそこで私も死ぬつもりでした……」
「アキラさん……すいません……」
「ミカド君……皆さん……ミナトを頼みますね」
アキラは力強い表情でミナトを託す。
「準備出来たわ、愛美希さん……この麻酔を打てば
あなたは二度と目を覚まさない、心の準備はいい?」
「はい……いつでもどうぞ」
アキラは隣で今にも止まりそうな
か細い呼吸をするミナトの手を優しく握る。
サヤはアキラの腕に注射の針を入れ
中に入った麻酔薬……、致死薬を流し込む。
「先生……ありがとうございます――」
アキラの瞼が閉じ、やがて呼吸が止まる。
「気が散るといけないから皆、別の部屋にお願い」
ミカド達はサヤの気をそらさない為に
別の部屋に移動する。
「ミナトちゃん、今たすけるわね」
――手慣れた手際で手術を進める。
◆別室
ミカドは周囲を見渡しイチカに聞く。
「そういや、マサさん達は?」
「弾薬と武器の補充に美湖根村に行くって」
「美湖根村?聞いた事ないな」
「だよね、誰も聞いた事ないからマサさん達しか
知らない秘密の場所なのかも、三日以内には
戻るって言ってたよ」
「戻るって……ここも安全か分からないのに……」
「危険があれば構わず逃げろって言ってた、
それよりも……」
イチカも気になるミカドの額と
周りにいる鬼に見て質問する。
「ミカド……ヘアバンドはどうしたの?」
人前で取るなと祖父から言われたヘアバンドが
ミカドの額になく真っ先に質問した。
「あぁこれね……俺もイチロみたいに鬼化してさ、
凄かったぜ……身体中から稲妻発してめっちゃ強い
異形倒したんだぜ!!」
「お前は鬼じゃねーな」
後ろにいる不良っぽい鬼が会話に割って入る。
「え?俺、鬼になったんじゃないの?
角バッチリ生えてたけど??」
ユウタは額の角を触ろうとするが
元の小さなイボに戻っていた。
「あ、あれ??角が引っ込んでる!?」
「マァジ?ここに来るまでの間に引っ込んだの
自分で気づいてなかったんだー」
「そ!そうだ!!」
ミカド縁側から外に出て、集中して全身から
稲妻を発するイメージをする。
チリッ……チリッ……
「ハッ!!」
バチンッ!!バチチチチチ!!!!
ユウタの全身を覆うように稲妻が走り
額から立派な角が生える。
「おっ!出来た!角もあるぞ!」
バチチ!!……バチ!……チリッ……チリッ……
「あ……戻った……うぅ、目眩……」
「ミカド!!」
ふらつくミカドにイチカが駆け寄る。
「なっ……俺も鬼になれた……
これで異形共に……オェ……」
「う~ん、やっぱおかしー、おかしーよねー?」
ルルと言う小さな鬼がミカドの周りを
キョロキョロと見回す。
「確かに鬼ではなさそうですね」
ウタカタが鬼とミカド違いを説明する。
「私達の角は一度生えたら元に戻りません
それに鬼は皆この、負の感情が具現化した刀を必ず
持っている筈ですが、刀が見当たりません
それにこの方は雷を身体から発していましたが
鬼は本来、刀から能力を発するものです」
「よくわかんないけどそうなの?」
「あぁそうだ、見てろ」
不良っぽい鬼が抜刀すると
刀身に雷を帯びている。
「確かに俺は刀ないし雷は身体から出してるな……
じゃあ、俺ってなんなの??」
「知るか、てかお前はなんで俺にタメ口なんだ?」
「え?同い年だろ?」
「俺は二十一だ、お前は……どう見てもガキだ」
「うるっせ!!ガキじゃねーし!!十六だし!!」
「あぁ?ここで死ぬか?」
「やってみろよ!!お前のそのへなちょこ雷より
俺の雷の方がぜってー威力たけーし!!」
「それは否めねぇ……ただ、お前は力を制御
出来てねーだけだ」
「そうなの?」
「現に直ぐに力使い果たしてぶっ倒れてんだろーが」
「あぁ、なるほど!じゃあ教えてくれ!……
そういやお前名前なんてんだ?」
「そういえば自己紹介がまだでしたね、
こらから一緒に協力してもらう方々に
自己紹介を致しましょう」
「はーーーい!!ルルからね!!ルルの名前は
『草鬼裏ルル』よろしくー!
はい次!アカネちゃーん!!」
「ルルからパスを受取りましたウチの名前は
『鬼灯アカネ』よろしねー
はい次、ジン行っとけ~」
「へーい汚ギャルからご指名の――」
「ウチのどこが汚ギャルだゴラァ!!
どう見ても超清楚系ギャルだろ!!オラァ!!」
「やめろ!!分かった!!俺が悪かった!!
お前は綺麗な控えめおしとやかギャルだ!!」
「OKOK~分かればいいってことよ~」
「どこがおしとやかだよ……」
「あぁ?」
「すんません……あ~俺は『轟鬼ジン』
次はテメェらだ」
「自己紹介だ?必要はねーな、所詮人間なんざ
すぐ奴らのエサになるだけだろ」
「そうですそうです!!なんなら今ここで
全員殺して逃げる為のエサにでもしましょう!!」
「本当にあなた達は……分からない人達ですね……
この方達に手を出せば私がその首跳ねますよ」
「分かった分かった……俺は『暇地鬼アクビ』だ」
「私は『念刕鬼コタロウ』あなた達の
死を歓迎する者です、よろしくお願いしますね」
「まぁ、いいわ……」
「私は『血刀泉鬼ウタカタノヒメ』これからは
お互いに協力して生きて行きましょう
よろしくお願い致しますね」
「名前凄いですね……」
「そうですね……いい名前ではありませんね」
「いえいえ!!そういうつもりじゃ!!
ゲームで出てきそうなかっこいい名前だなって!!
なんか由来とかあるんですか?」
「ありがとうございます、大した由来ではないですよ」
ウタカタは自身の名を語りたくは無い様だった。
ミカド達も鬼達に自己紹介を済ませると
ちょうど手術を終えたサヤが顔を出す。
「無事終わったわ、後はミナトちゃんの
生命力次第ね……傷自体の完治は半月位かかるわ」
「あの負傷でそんな早くですか!?」
「私の作った簡易的なバイオパックが再生を
促進してくれる、本来設備が整っていれば
アキラさんもすぐに再生出来たんだけどね……」
「もう電力は止まってますからね……それに病院に
戻るは、あの黒い羽の異形に会いに行くようなもので
それこそ全滅ですからね……」
――その夜――
薪を集めて真ん中を空けて綺麗に並べていく
最後に安らかに眠っているアキラを
並べた薪の中心に寝かせる。
「アキラさん、短い間でしたが……
ありがとうございました……ミナトちゃんは俺達に
任せて下さい……異形なんかに殺させません……
どうか、安らかにお眠り下さい」
「ちょっと待って!!」
ミカドは薪に火を着け様とした時
サヤがストップをかける。
「どうしたんですか?」
「ちょっと忘れ物!」
「なんですかそれ?」
「大切な物よ」
特に何の変哲もない折りたたまれた白紙を
サヤはアキラの手に握らせる。
「これで少しは寂しくないかしらね……
お礼に少し貰ってくわね」
サヤはゴソゴソして戻ってくる。
「もう大丈夫よ、止めてごめんなさいね」
アキラは火に包まれ燃え盛る炎はやがて鎮まる。
回収された御骨はミナトが目を覚ました時に
一緒にお墓を作る為に取っておくことに。
そしてミナトの回復と五黒一家の帰りを待つ間、
鬼と協力し鍛錬して力を蓄える。




