第二話 思い出の地で変態と叫ばれた日
学園もののイチャラブパート書くの苦手なの俺だけじゃないはず
俺は両膝両手を地べたにつけ、額が土に埋まるのではないのかと
言わんばかりにこすりつけていた。
理由は一つ。彼女の怒りを収め、許しを戴くためである。
変質者と間違われては思い出あふれるこの地で犯罪者として後ろ指刺されること必至だ。
なおかつ事故とは言え彼女のあられもない姿を見てしまったのだ。
これはもう土下座以外に誠意をみせる方法などないであろう。
もしくは裁判の末示談金を払うことになるのだがこれだけは避けたい。
この地のみではなく全国ネットで犯罪者だ。汚名でヤ〇ーニュースを賑わせたくは無い。
「でもほら、子供の頃とか一緒に風呂入ったじゃん。その延長線上だと思ってくれれば・・・」
「何言ってるのかしら、この変態は」
どうやら冗談も通じないほど憤慨していらっしゃるようである。
これはどうにか彼女の怒りのベクトルを違う方向に向けなければ。
「そもそもこんな公共の場所で水浴びしてるってのはどうなんだ?そもそもそれが悪っ・・・
すいません。殺さないでください。許してください。包丁はしまってください」
「幸いにもここにはあなたと私だけ。しかもあなたを始末した後に処理するのにはうってつけの場所。
さぁ、辞世の句を詠みなさい。介錯くらいはしてあげるから」
どうやら俺の刑は切腹に決まったらしい。てか辞世の句って。
命の灯が消える間際にしては心の中でツッコミを入れる余裕があるらしい。
「はぁ、もういいわよ。確かに悪気は無さそうだし。何より本当の変態だったら私の準備なんか
待たずに真っ先に逃げてるものね」
「えっ!?許してくれるのか?」
「まぁこんな場所にわざわざ覗きをしに来たってわけでもないでしょうし」
「というかあなたこんな場所に何しに来たのよ?」
「何ってお前に会いに来たんだろうが。この炎天下わざわざ思い出の場所に出向いたのにその態度は悲しいぞ」
「はぁ?あんた何言ってんの?私たち初対面でしょ?」
「何言ってんだ琴野。俺たち幼馴染の大親友じゃないか!」
「えっ・・・?琴野。あんたその人を探しに来たの?」
「何言ってんだよそよそしい。お前が手紙でこの場所に呼び出したんだろうが」
彼女と俺の意見がかみ合わない。彼女の顔がどんどん曇っていく。
「おい!大丈夫か!?」
「ありがとう・・・大丈夫。問題ないわ」
「あと一つ教えてあげる。私の名前は櫻。残念だけど人違いよ」
「えっ・・・そんなわけ。だって・・・」
「ほら、これでも信用できない?」
そういって彼女は学生証を見せてくれた。そこには<舟渡 櫻>と書いてある。確かに俺を呼び出したやつとは違う名前だ」
「えっ!?他人のそらにっていうにはあまりにも似すぎているというか。だってこの場所だって・・・」
「知らないけどどっちにしても人違いよ。こんな場所にまで来たのに残念だったわね」
「ちなみに君によく似た人とかこの辺に住んでたり・・・」
「さぁ、私は知らないし。興味もない。」
「そうか?なんか色々とすまなかったな。もう少しこの辺を探してみることにするよ」
「別に構わないけど、この辺に住んでるのは私だけよ?基本的にこの町の人はこのあたりに寄り付かないし」
「そうなのか!?完全に打つ手なしってわけか・・・」
「可哀そうだけどそういうことになるわね。ご愁傷様」
「さぁ、用事が済んだならさっさと帰りなさい。こんな場所で誰かに見られたらあなたこの町で村八分にあうわよ?」
「えっ!?ここって立ち入り禁止区域かなんかなのか?別に普通に入れたんだけど。」
「この場所にはね。鬼が出るのよ。しかも人食い鬼が。鬼の住処に人は近づかないでしょ?
鬼の住処に近づく人なんてのはもう鬼の仲間しかいないでしょ?だから村八分ってわけ。わかった?」
「それならなんで君はこんな場所に?」
「それはっ・・・。まぁあんたに説明してもしょうがないわね。
さぁ、みんなと仲良くしたかったら早くこの場所から去りなさい。一刻も早く。」
「っ!?そんな言い方・・・。まぁ分かった。退散することにするよ」
「それがいいわ。私も久々に年の近い人と話せて楽しかったわ。じゃあね」
そういって彼女が踵を返す。その背中はどことなく悲しそうだ。
「ちょっとまった!自己紹介してなかった!俺の名前は泉。神宮寺泉だ!
またどこかで会うかもしれないからその時はよろしくな!」
「はいはい。泉ね。覚えておくわよ。また今度があったらよろしくね。」
「おう!またな!」
彼女とは仲良くやれそうな気がする。確信にも似た感情を持ってその場所を去る。
・・・
・・・・・・
てかあいつ!結局どこにいるんだ!?
もうしばらく町中を探してみるが思い人に会うことはかなわなかった。