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異世界ハードモードをクリアせよっ!  作者: mitsuzo
第二章 人生スタート(GAME START)
50/62

040「クラス対抗戦 -後編-」



「これで⋯⋯二対三だな?」


 カルロが余裕の笑みを浮かべながらハヤトとティアラに言葉をかけた。


「とは言ってもハヤト・ヴァンデラス⋯⋯⋯⋯君は下級魔術士(ジュニア)程度だから一人には含まれないと思うがね、フフフ」

「さて、それはどうかしら、カルロ?」

「ティアラさん」

「あなたたちは全員がB級魔術士(クラスB)。そして私は一年生唯一のA級魔術士(クラスA)よ? 正直、B級魔術士(クラスB)三人程度に負ける気はしないわよ⋯⋯わたし」


 ティアラがカルロに向かってはっきりと「敵じゃない」と告げる。だが、


「フフフ⋯⋯ティアラさん。それは魔術が使えたらの話です」

「何⋯⋯っ?!」

「当然、A級魔術士(クラスA)のティアラさんは私たちよりも上位となるのでハンデとして魔術攻撃は使用できませんが私たちは使用できます」

「そ、そんな⋯⋯!? 私はD組の生徒⋯⋯」

「それは違いますよ、ティアラさん」

「ザビト先生!」


 そこに審判で現A組担任のエンリル・ザビトがティアラに説明をする。


A級魔術士(クラスA)であるあなたはD組の生徒とはいっても、本来はA組で、しかも一年生唯一のA級魔術士(クラスA)です。そして対抗戦のハンデの有無は個人の魔術士ランキングです」

「そ、そんな⋯⋯」


 一瞬、ティアラが何か言おうとした時だった。


「ティアラ。先生の言う通りだ」

「ハヤトっ?!」

「確かに個人の力でハンデを付けないと試合にはならない。ティアラだってわかるだろ?」

「⋯⋯う、うん」

「まあ、その分、俺が魔術を使えるからな。問題はない」

「ハヤト⋯⋯」


 その時、


「プッ! ハハハハハハハ⋯⋯!」


 突然、カルロが高らかな笑い声をあげた。


「⋯⋯っと! これは失敬」


 カルロがそう言ってワザとらしく深く頭を下げる。


 ティアラはカルロの態度を見てすぐにピンときた。今の笑いはハヤトの発言に対してのことだと。しかし、当人のハヤトはカルロの態度を理解しているにも関わらずまるで他人事のように興味を示していない。


「⋯⋯ハヤト、ひとつ聞いてもいい?」

「なんだ?」


 ティアラがそんな「どこ吹く風」の様子でいるハヤトに小声で質問をする。


「もしかして、あなた⋯⋯⋯⋯カルロに勝てるの?」


 すると、ハヤトがティアラを見てフッと笑いながら答える。


「ああ、もちろんだ。カルロ⋯⋯というか三人まとめて敵ではない」

「っ?!」


 ティアラはハヤトが当然のような顔で答えた言葉に絶句する。


「それに⋯⋯⋯⋯そろそろ俺の力をいろんな奴ら(・・・・・・)に少しずつ見せつける時期がきたんでな」

「え⋯⋯?」

「ティアラには悪いが⋯⋯⋯⋯俺が全員やるよ」

「ハ、ハヤト⋯⋯」


 そう言うと、ハヤトが一人、カルロたちA組の三人のところへと歩き出す。


「む? 貴様⋯⋯⋯⋯何のつもりだ?」


 カルロがハヤトの行動を察し、苦い顔を浮かべ質問する。


「お前が今思ったとおりのことだ」


 ハヤトがニヤッと笑みを浮かべ告げる。


「俺がまとめて相手してやる」

「何だ⋯⋯⋯⋯とぉっ!?」


 ドゴォォォォォォン!!!!!!


「「「!!!!!!!!」」」


 先ほどリンガを倒した生徒がハヤトの言葉に反応した瞬間——、舞台の端にある塀まで体を吹き飛ばされた。そして、その生徒がいた場所にはハヤトが蹴りを入れた後の仕草で立っている。


「な、何だっ?! いきなりA組の生徒が壁に飛んでったぞっ!」

「何が起こったんだ!?」

「ま、まさか⋯⋯あのハヤト・ヴァンデラスが蹴ったのかっ?!」

「嘘っ!? まったく見えなかったんだけど⋯⋯」


 会場がハヤトの超加速の打撃が見えなかったことにザワザワと騒ぎ出した。


「な、何をしたの、今? ま、まったく、見えなかった⋯⋯」


 A級魔術士(クラスA)でしかも身体強化しているはずのティアラであったがハヤトの攻撃が全く見えていなかった。そして、それは他の者も同様で、


「な、何だ!?⋯⋯何をしたんだ、ハヤト・ヴァンデラスはっ!」

「⋯⋯っ?!」


 先ほどまで余裕に構えていたカルロが今では打って変わって顔を青くさせ、隣のヴェルヌーブは目を大きく開き、体を硬らせていた。


「これでわかったか⋯⋯⋯⋯カルロ・マキャヴェリ?」

「!? き、貴様⋯⋯」

「力の差が歴然だということがわかったところで同じセリフを言ってやろう⋯⋯⋯⋯俺がまとめて相手してやる」

「い、いいだろう⋯⋯望むところだ。いくぞ、ヴェルヌーブ」

「⋯⋯は、はい。カルロ様」


 カルロとヴェルヌーブはもはやハヤトに対して下級魔術士(ジュニア)という舐めた目では見ておらず、目の前にいるのは『自分たちを遥かに凌ぐ力を持った敵』であると認識し対峙していた。


「ほう? さすがだな。俺のアレを見て瞬時に本気モードに入ったか。状況判断は中々だ」

「う、うるさい! まったく⋯⋯⋯⋯何がどうなっているのかわからんがお前が強いことは理解した。これまでの態度は改めさせて頂こう。しかし⋯⋯勝つのは私だ」

「何がするのかわからんが思いっきり来い。俺も身体強化だけで相手してやる」

「くそ、舐めたこと言いやがって⋯⋯⋯⋯と言いたいところだが悔しいが魔術攻撃がないのは救いだ」

「⋯⋯ふむ。思っていたよりもお前、かなり素直だな?」

「う、うううう、うるさいっ! いくぞ、ヴェルヌーブ! 連携攻撃だっ!」

「は、はいっ!」


 二人がハヤトから遠く離れ間合いを取った。


「いいか、ヴェルヌーブよ。一撃だ。この一撃にすべてを賭けるぞ」

「し、しかし⋯⋯っ! まだあっちにはティアラ・ヴァンデラス様が⋯⋯」

「よい。ティアラさんよりも弟のハヤト・ヴァンデラスとの一戦が大事だ! 対抗戦の勝敗なら負けてもいいがハヤト・ヴァンデラスに後れを取るわけにはいかぬ! 心せよっ!」

「はっ!」

「よし! ではいくぞ。お前の持つ身体強化の最大攻撃⋯⋯『硬発勁(こうはっけい)』と、私の『雷光四連撃(らいこうよんれんげき)』」で挟み撃ちだ!」

「はいっ!」


 二人が魔力と集中力を高めていく。すると、二人の周囲からパチパチと静電気のようなものが発生し、同時に舞台が少し振動していた。


「⋯⋯ふむ。いい集中力だ」


 ハヤトが二人の状態を見て感嘆の声をあげる。


「フン⋯⋯余裕だな。だが、確かにお前は強いだろう。しかし、身体強化の戦いであれば二対一は圧倒的不利⋯⋯しかも、私とヴェルヌーブのこの連携技はいまだ破れたことはない」


 カルロがハヤトの言葉に挑戦的な言葉で返答する。


「そうか⋯⋯。ならば俺がその連携技を破る第一号となるわけか」

「ぬかせぇぇぇぇぇぇっっ!!!!!!」


 ドンっ!


 カルロとヴェルヌーブが同時に超加速でハヤトへ迫った。


「受けてみろ! 雷光四連撃ぃぃぃぃぃっ!」

「硬発勁ーーっ!」


 同時に飛び出した二人がハヤトに迫る直前に、左右へと分かれ攻撃を仕掛けた。


「よし! 決まったぁぁぁ!!」

「ふ⋯⋯⋯⋯甘い」


 ガガガガっ!


「な⋯⋯っ?! か、片手で⋯⋯だとっ!」


 ハヤトがカルロの四連撃をなんと片手(・・)だけですべて受け止め、さらに、


 ガシッ!


「なっ?!」


 ハヤトがカルロの最後の一撃で繰り出した足を掴むと、そのまま左から迫るヴェルヌーブへカルロを放り投げ叩きつけた。


「「ぐは⋯⋯っ!?」」


 ヴェルヌーブはまさかカルロが掴まれ、自分に叩きつけられることなど想像していなかったこともあり、その一撃で失神。


「はあ、はあ、はあ、はあ⋯⋯」


 カルロももちろん予想していなかった返し技だった為、立ってはいるもののフラフラ状態だった。


「まだ⋯⋯⋯⋯やるか?」

「こ、これ以上、やれるかっ?! この⋯⋯⋯⋯化け物め」

「そうか」


 そう言ってカルロはその場に膝をついた。


「しょ、勝者⋯⋯⋯⋯D組っ!」


 ワァァァァァァ!


 まさかのD組の⋯⋯⋯⋯しかもあのA組最強と言われたカルロ・マキャヴェリを完全敗北させたということで周囲で見てた生徒たちが大きな歓声をあげた。


「お、おい、ハヤト・ヴァンデラスっ!」

「??」


 ハヤトがクラスのところに戻ろうとした時、カルロが声を掛けた。


「そ、その⋯⋯なんだ⋯⋯」

「なんだ? 何かまだ文句でもあるのか?」

「そ、そうじゃないっ!? そ、そのだな⋯⋯」

「??」

「こ、これまでの⋯⋯お前に対しての無礼を⋯⋯⋯⋯許してくれ。すまない⋯⋯」

「カルロ⋯⋯」

「だ、だから、その⋯⋯なんだ⋯⋯⋯⋯で、できればお前の強さを⋯⋯俺にも教えて欲しい」

「何?」

「お前の強さは本物だ。しかも、まったく底が見えない。私はもっと強くなってこの国を守りたい。だから、お前の強さ⋯⋯⋯⋯俺にも教えて欲しいっ!」

「⋯⋯カルロ」

「「「「「!!!!!!!!!」」」」」


 カルロの発言にD組の生徒はもちろん、他の組の生徒まで驚きの表情で皆固まっていた。


「それは、つまり⋯⋯⋯⋯お前もD組に移動するということか?」

「ああ、そうだ!」

「「「「「えええええええええええっ!!!!!」」」」」


 会場が先ほどの対抗戦以上に大きな響めきで包まれた。


「わかった。いいだろう」

「えっ!? そ、そんな簡単に⋯⋯⋯⋯返事していいのか?」

「問題ない。俺がお前を必要としていることと、お前がその気であるのなら止める理由などない」

「!? わ、私が⋯⋯⋯⋯必要?」

「ああ、当然だろう? あれだけの技と魔力を持つ一年生などほとんどいないからな」

「そ、そうか! わ、私は⋯⋯お前にとって⋯⋯必要な存在か!」

「?? あ、ああ⋯⋯」

「う、うむ! そうか! そうなのだな⋯⋯っ!」


 カルロがハヤトの言葉に頬を染めながらテンションが上がっていた。


「ん、んん〜?」

「ん、んん〜?」

「?? なんだ? どうした⋯⋯イザベラ、マリー?」


 先ほどの戦闘で回復したイザベラとマリーがハヤトの影に隠れながら唸り声を上げている。


「ハヤト君の『天然タラシ』は性別を超えるんですね」

「何の話をしてる?」

「さすがです、ハヤトさん。一生ついていきます」


 そんなこんなで、二日目のクラス対抗戦が幕を閉じた。



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