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前世の恋人


「きゃ!」


 シャムと踊り暮れていると、会場の一角から女性の嬌声が上がる。


「ちょっと!」


 まただ。


「何か起こっているのかしらね」

「……さぁ」

「さぁ。じゃないわよ、この会場にいる人たちは大切なゲストなんだから」


 舞踏会の会場の広さはおよそ五十平方メートルで。

 とてもじゃないけど、国民全員を収容できる広さじゃない。


 だからこの会場に入れる人間は毎年選ばれる極一部の重要人物だった。


「父さーん!」

「「ん?」」


 遠方から聞きなれない声にシャムと二人してクエスチョンマークを浮かべると――っ。


 シャムのドレスがひるがえり、彼女の黒い下着が露出した。


「おっと」

「なんだぁ、もっと恥ずかしがってよ。それでも乙女なのかつって」

「……えっと、ベリーだったっけ? 貴方まさか、さっきから」

「そうだよ、私スカート捲り大好きでさ」

「やめなさい、ここに居る人たちは国にとって大事なゲストなんだから」


 先程から上がっていた女性の悲鳴の正体はこれだったらしい。

 人によっては気分を害すること請け合いの悪戯だった。


「まあいいけどさ、父さんに別件で用があるんだ」

「いいよ、何の用事かは知らないけど、きっと大切なことなんだろ?」

「……君のそーゆう所が好きすぎ、じゃあちょっとこっち来てよ」


 自国に於いて栄えある舞踏会に参加していたベリーも、今日はお洒落な衣装を着ている。

 彼女の黒髪に合わせた華やか黄色のドレスは、年齢相応の洒脱さが出ていた。


 して、ベリーは俺を連れて会場のバルコニーへと向かう。


 彼女の用事とはシェリーに纏わるものだと思っていた。


「よっと」

 と言い、彼女はバルコニーの手すりに飛び乗り、腰を掛ける。


「……いい風だね」

「風邪引くなよ?」

「父さんはさ、そうやってみんなに優しくしてるの?」

「……いいや、俺は大事な人にしか、優しく出来ない」


 それが俺の性分で、俺の性格なんだろうな。

 そう言うとベリーは頬を赤くして、大輪の花のように笑む。


「用事って言う程の用事はないんだけどさ、一応義理を果たしておくよ」


 と言い、彼女は一通の手紙を差し出す。

 手紙には封蝋がなされていて、ああ、そう言えば。って昔を懐古した。


 そう言えば、俺の人生はこの子の母親である彼女と契ってから変わったんだよな。


『ヴィラン様、その後どうしているでしょうか? 貴方と別れて以来、私は貴方の面影である匂いを忘れたことはありません。それは一陣の風に乗って運ばれ、季節の移り変わりを私と、貴方の娘であるベリーに報せてくれます。貴方のその後のご活躍をそれとなく耳にしては、あの時のことを思い出します』


「……ありがとう、長くなりそうだし、後で読むよ」

「あっそ、事前に私も読んだけど、あの人も執着深い性格してるよね」

「シェリーは、大らかな人だったとは思う」

「馬鹿な人だよ、頭が固い、最期まで父さんの邪魔になるからって会おうとしなかった」


 今は亡き故人を、彼女の娘と共に偲び、一時を過ごした。

 ベリーは余りシェリーに好意的じゃないようで。

 時折冗談のようにシェリーへの不満を零していた。


 でもベリーはここまで育ててくれた彼女に、謝辞を述べるようにして。


「まぁ、私はこれから父さんの傍を生涯離れないよ。母さんの分までさ」


 俺の傍に生涯居ると口にした。


 彼女の言動を褒め称えるよう、頭に手を添える。


 すると彼女は瞼を瞑り、唇を突き出す。


 ――ちゅるるるるるるる。


「や、父さんそんなに吸い付いて、は、激し……って誰だッッッ!!」

「やあ、僕の名前はアビー、通称千人斬りのアビー。君がヴィランの隠し子?」


 アビーは世界を放浪しては、年に一度は帰って来る。弟のシュウヤから貰った覇石を使った移動用の機械で、世界中をあっちへこっちへと飛び回っていた。


「お帰りアビー」

「ただいまヴィラン、あれから順調? そうだね」


 近況を聞かれ、もちろん。と口にした矢先、アビーは俺とキスを交わした。


 ――ブチ。


 すると隣にいたベリーの方から何かがはち切れる音がしたような。

 そう思いベリーを見やると、俺は――見てはいけないものを見てしまう。


「……ふぅ。父さん、私とゲームしようよ」

「大歓迎だね、何のゲームをするの?」


 ベリーがゲームに興じようとしている。

 アビーが何のゲームをするのか問いただしていた。


「お前は誘ってねーんだよ、引っ込んでろ」

「えー」

「……アビー、悪いけどシャムの所に行っててくれないか?」

「えー」


 あからさまに不満を口にするアビーには悪いが、俺は個人的にこの子に聞きたいことがあるんだ。


「ゲームしようか、()()()()くん」

「……そうだな、ゲームでもして、一緒に思い出を振り返ろうか」


 ――()()()()さん。

 その名前を出すと、幼少の彼女の顔は歪な笑顔を作っている。


「いつから気付いてたの? 早くない? ねぇ、いつから?」

「俺はもう、君の脅迫には屈しないぞ」

「言うは易く行うは難し、ヨモギダくんはさ、私には永遠に、逆らえない」


 ベリー、どうやら俺と彼女は前世からの知り合いで。

 彼女の正体は、前世で俺のストーカーをやっていた学友の一人。


 いつか主の前でその名をこぼした、ヨモギダトウヤの恋人だった。



こんにちは、サカイヌツクです。


私から皆様に、ごく当たり前のことをアナウンスさせて頂きます。


※この物語はフィクションです。

 登場する人物、舞台は全て架空となります。


以上です。

本当に、以上です。

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