死神の嗤い
メフィストとの戦いの最中、俺はただただ、彼を畏怖した。
戦闘を開始した当初こそ、メフィストとの力の差は俺の方が上だった。
けど、彼が周囲の森林を腐らせ、焼き払うと、真価を発揮し始め。
辺り一帯が山火事にあったかのような地獄絵図になっている。
メフィストはその地獄の様相を自分の力に還元しているようだ。
「我々に、光は要らない。婿殿もその無粋な光を仕舞いたまへ」
赤や黒色の炎が彼の背後を漂い、生命を絶やしていく。
今のメフィストはまるで――堕天使みたいだ。
天使の証だった翼は漆黒色をしていて、天の恵みなど一切与えない。
甚く傲慢で、酷悪で、残忍な人だ。
「ッ!!」
二十メートルほどの間合いから強引に彼の胴を断とうと一閃すれば。
彼は獲物である大鎌でしっかり受け止め――――っ。
打ち込みの衝撃波によって、周囲の黒煙が一瞬だけ晴れる。
「私を手に掛けない方がいい、これは君のためを思って言っている」
「今ここで貴方を討たないと、誇りが死ぬ」
「っ、誇り?」
つばぜり合いをしていると、メフィストは俺を払いのけ、誇りとは何かを訪ねた。
「俺は、もう嫌なんですよ。己の無力さに尽きて、過信して、虚栄心を振りまくようになんとかなると御託をこねて、大切なものを失うのはもう御免だ」
「……君の、その」
――よく理解もできないオナニーに誰が付き合うと?
「婿殿、君が私の娘を口説き落としたのが今一納得がいかない」
「今さらだ」
彼による蔑むための言葉の数々は俺の心によく響いた。
出来れば、彼とは義理の親子として仲良く暮らしたかったが。
状況がそれを許さない、シャム達を失った過去がそれを許してくれない。
「アッッッ!!」
「ほう、まだ力を出し惜しみしていたのかね」
全身に力を籠め、気合一つでモルドレッドより授かった光を放つ。
これ以上、あの悪魔の好きにやらせてなるものか……ッ。
俺の打ち込みをメフィストは的確に処理していく。
戦闘とは経験がものをいう。
そう言いたげなばかりに、俺の攻撃は彼に届いていない。
「……そうだな、次の次の次、くらいで決着を付けないか?」
「次で終わりにしましょう、お義父さん」
彼と戦っていると、全身が麻酔を打たれたかのように微睡む。
底知れない彼の異能に、迅速に決着を付けたいという思考が強まる。
「決着は!! 次の次の次と言っているだろう!! 素直に従いたまへ!」
次の攻撃はメフィストから放たれていた。
大鎌を乱暴に振り回して、俺の身体を縦に割こうと上から落とす。
俺は右手に構えていた聖剣でそれを受け止め。
左手に隠していたもう一つの聖剣で彼のみぞおちに突き立てる。
「っ!?」
俺の二本目の聖剣に腹を貫かれ、彼は驚愕な面持ちをして。
「ゲバォッ」
赤黒い血反吐を出した。
「さようなら、貴方と出逢い、話せたことは嬉しかった」
「なにを、いっている、この程度でわたしは死なないのだよ」
彼が一瞬吐いた血の量は尋常じゃなかった。
吐かれた血が口の周りにこびり付いているのに、まだ強がるか。
「嘘だと、おもっているのだろ? だが本当だよ」
「ッ」
彼の腹部で輝いている聖剣が、吸収されている?
堪らず左手に構えていた聖剣から手を離した。
「……ほぅらな」
末恐ろしい――彼に想起していた畏怖の念は的外れじゃなく。
彼は恐ろしい気配を体現するように、腹を貫かれても平然としている。
ならば、彼を倒すには心臓を狙えばいいのか?
「貴方は不死身だったりしないよな?」
再び後方へ飛び退き、距離を取って義父に盤外戦を仕掛けた。
「素直に答える義理はないな。例え君が私の娘を娶ろうとも、その義理はないのだよ」
「嬉しいですよ、お義父さんは将来介護の必要がなさそうですね」
「粗末な嫌味は犬もくわない、それより婿殿、君の肩でさきほどから」
――死神が、嗤っているぞ?
すみませんすみません、本日の更新をタイムオーバーしてました!
むしろRTAすべきだったのに、すみません<m(__)m>




