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今日は素晴らしい日だよ


「時間が長引けば長引く程、不利になるのは婿殿だ」

「……」


 メフィストの言う通りだと思える。


 俺達は敵の首都中心部にある秘密基地で抵抗するよう闘っていた。


 シャムやミラ、ディゴの三人も健闘している。


 先程メフィストの返り討ちに遭ったラシェットも戦線に戻っているけど。


 勝負が長引く分、敵の数も倍々に増えていっている。


「様子見してたんですよ」

「様子見とは?」

「貴方からはなんとなく、嫌な気配を感じる」


 それに、俺達の目的はファウストの封印にある。


 でもVがファウストを封印した後、俺達を迎えに来るかは五分と五分だろう。


「貴方の実力は判ったが、得体の知れない能力は底が知れない」

「婿殿、そんな臆病な姿勢では家の娘はやれんぞ」


 牽制するように彼の裏を推し量り、言葉にする。

 彼はことさらシャムを取りざたして、俺に要求するのだ。


 ――早く決着をつけよう。


「このまま君達に時間を割くわけにも行かなくてね」

「何とかなりませんか?」

「何とかとは?」

「もう無駄な争いは止めませんか、そう言っているんです」

「……百万、この数字の意味が分かるかね?」


「ギオス金貨百万枚?」


「違うよ、我々、グリモアが蹂躙して来た死体の数だ。それを今さら、降伏にも等しい提案を受け入れると本気で思っているのだろうか。我々は熾烈にして悪辣、到底後には引けないのだよ」


 だから彼は早期の決着を願っていた。


「メフィスト様! ファウスト閣下の居場所を特定出来ました!」


 メフィストの背後に一人の配下が現れ。

 Vが連れ去ったファウストの居場所を特定したと報告を入れる。


「宜しい、ではここは任せても宜しいか」

「は! グリモアのため、死力を尽くす所存であります!」


 メフィストは配下に後任を託そうとすると、肩に手を置き。


「いいかね? 君がもし、あの男を見事斃したら、私の娘をやろう。つまり君は出世するんだ」

「これ以上ない光栄であります!」


 シャムを使って俺を著しく挑発する。


 メフィストの口車に乗せられたからか、男はサーベルを抜き放ち、俺を牽制していた。


「メフィスト、俺との決着はどうするんだ」

「君より私、私より国、国より使命、これが私の価値観だ」


 彼は一方的に俺との決着を見送った。

 Vがファウストを封印している今、メフィストを見逃すことはできない。


「居直れ悪漢、今より私の粛清の刃を受けるといい」


 なのに、俺の目の前にはメフィストの配下が立ち塞がった。


「ヴィラン!」


 その時、シャムが双剣を携えて横から割って入る。


「ここは私達に任せて、メフィストを!」

「そうさせて貰う」


 シャム達の援護を受けて、急いでメフィストの後を追った。


 入り口から部屋を出ると、大きな軍事基地の景観が広がっていて。

 そこには敵の第二防衛網が敷かれていた。


「敵襲!! 総員直ちに敵を殲滅せよ!!」


 襲い来る敵を、身のこなしで突破すると。


「敵はどこだ!?」


 敵は狐に化かされた様子で、俺を見失う。


 そのまま軍事基地から抜け、空に躍り出てグリモアの首都を俯瞰した。


 右斜め前方にある中央広場を中心に、街は円状に広がっている。

 しかし人の気配はなく、今は閑散としている。


 俺にとって静寂に包まれた空気は好都合だった。

 

「――」


 ファウストを追尾するために向かったメフィストの気配を、瞑想して探る。これはメルラシエの修行で身に着けた副産物のような技で、生き抜くために必要な力だった。


「……あそこか」


 目星をつけた方角の遥か四十キロ先で、メフィストの禍々しい気配がする。


 意識をそちらへ向け、空を駆って移動した。


「Vよ、君の素性はほぼ割れている」

「ならばどうする?」

「世界のために、私が直々に消し去ってくれよう」


「その前にすべきことがあるのでは?」


 メフィスト達に追いつくと、Vの一派と鎬を削っている最中だった。

 両極の間に乱入するよう声を掛けると、二人は一斉に視線を俺にやる。


「……婿殿は、転移魔法を習得していたのか?」

「魔法の類は使えませんよ、空を飛んで来ただけです」

「ほお」


「ここは頼んでもいいかヴィラン」

 俺が駆けつけたことに、Vは安堵するような声音で言った。


「ああ、メフィスト達は俺が片付けておく、ファウストの封印が終わり次第シャム達を迎えに行って欲しい」

「確約はできないが、そうするとしよう」


 そしてVは黒い外套をひるがえし、仲間と共にまた姿を消した。


 同時に、俺はメフィスト一派の中でも転移魔法とやらを使えそうな奴に向けて聖剣を突き立てた。


「がふッ!」


「やれやれ、婿殿、これ以上私の部下を虐めないでくれ」

「それはそうとして、聞かせて欲しいんですよメフィスト」

「何をだね?」

「貴方達、グリモアの戦争目的を」

「……ふ、はっはっは! そんなの決まっている、我々は秩序とやらが大嫌いなのだよ」


 グリモアの連中は秩序を嫌って、戦争に加担していると言うのだ。

 それはメフィストの個人的な見解なのは、オセなどを見れば明白だけどな。


「であるから、私は甚く君を気に入った。そう言っても過言ではない」

「……何故?」

「君はいずれ覇王に等しい存在になる器だろう、だからだ」


 ――君の向かう所に必ずや戦乱と混沌は生まれる。


 メフィストは俺に纏わりつく一種の真実を唱えると、恍惚とした表情で天上から降り注ぐ光を、両手を広げながら浴びていた。その姿は普通の人間が見せるのとは違う、蠱惑的な景色だったと思う。


「嗚呼、今日は素晴らしい日だよ」



神「うわわわわー」

私「……追ってはいなくなったか?」

神「そんなわけないでしょー」


 私の苦心惨憺とした旅路の果て、ついに神の居場所を特定した。

 ここに来るまであらゆる努力(〇〇〇〇等)をし。

 私は心身ともにズタボロだった。


 ――だが。


私「……こうして、またお前と会えて、嬉しいような、嬉しくないような疲れたような!」

神「いいんだよ、そんなお前がいてもいい」

私「――! 神よ!」


 マイゴッドよ。

 お前だけは、生涯私の傍にいて欲しい。


 続く。

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