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ヴィラン(悪役)の手に握られた一振りの聖剣


 今回連れてきた竜は全部で三翼。


 シャムの騎士を気取っているグレッグと。

 竜のリーダー格であるアルゴ。

 それから今回の竜の中で紅一点のシルヴィアだ。


 俺はアルゴの背に乗り、他はシルヴィアの背で空を移動している。


「……長い」


 疲れたのか、アルゴは嘆息を吐くようにぼやいた。


「疲れたか?」

「その問いには肯定しよう」

「じゃあ適当な場所で休憩しよう」

「そういう意味ではない」


 とすると。


「そんなにアーサーを討ち取りたいのか?」

「それがモルドレッド様の悲願であり、お前に課された宿命だ」


 と言っても、件の神の竜を相手にするのはまだ先の話だ。


 俺が闘ったことがある相手は悪魔の軍勢の一部と。

 今シュウヤ達が攻防を繰り広げている、第三帝国の勢力だけ。


 アルゴが目の敵にしているアーサーの勢力とは、まだやり合ったことがない。


「ヴィラン、貴様はまさかこのままアーサーとの戦争を回避しようというのか」

「……ノーコメント」

「ふざけるな!!」


 知能が高く、プライドも誰よりも高いアルゴに曖昧な返答は通用しない。


 だからか、アルゴが背に乗せるのは俺ぐらいな者だった。

 他の人間が乗ろうとすると振り落とされる。


「ヴィラン~、何喧嘩してるの?」


 シャムがグレッグに跨り俺とアルゴのいざこざに口出しして来た。


「疎ましいという訳じゃないけど、今はあっち行っててくれ」

「ふーん……私、予感がするのよね」


 予感?


「どんな?」

「私達の行く先に、あの女が待っていそうな予感がするの」


 あの女って、アビーのことか。


「俺も待ち遠しいよ、アビーに会うのが」

「この戦争が終わったらアビーも娶るの?」

「さあ、案外向こうはもう既に伴侶見つけてるかもしれないだろ?」

「それは……ないんじゃない?」


 と言うことは、シャムもその可能性は無きにしも非ず。

 って所なのだろう。


「アーサーを打倒する気がないというのなら、俺は帰るぞ」

「アルゴ、誰もそんなこと言ってないだろ?」

「……近頃の貴様からは全くもって、覇気を感じない」

「覇気? ねぇ……そんなもの持ってても、力の誇示にはならないだろ」


 覇気を以てことに当たった方が、印象的には見栄えがいいのは判る。

 その方が如実にやる気を感じられて、いい判断材料になり得る。


 でも。

 見せかけの覇気や威勢といったものに囚われても、大事なものを見失う。


「ならば――貴様の力とやらを見せて貰おうか」

「どこへ行くんだ」


 するとアルゴは右に旋回し、グリモアの首都方面に向かい始めた。


「ここから百キロほど先に、敵の砦の一つを捉えた。貴様には単騎でその砦を攻略して貰おうか」

「アルゴ、お前って相当目がいいんだな」

「俺達は人間とは違うからな、人間の定規杓子で物事を考えるな」


 確かに、アルゴの言う通りだよ。

 人間の尺度で竜の能力を考えても、規格外の一言に尽きる。


「ちょっとヴィラン! どこ行くのよ?」

「アルゴが敵の砦を発見したそうだ、俺達は囮としてその砦を先ず叩く」


 だから、各人戦闘準備。


「相変わらず、独断専行が過ぎるわねぇ。最高の男だわ、あんたは」

「これでいいのかアルゴ?」

「いいだろう、お前らだけで砦を落とせよ。俺達は一切協力しない」

「ああ」


 ◇


「もうすぐ砦に辿り着く、ここから先は貴様等だけで行け」


 あれから二時間もすれば、敵の砦を俺達も目視できる距離まで詰めていた。

 アルゴやシルヴィアは俺達を背から降ろすと、後方へと下がった。


「……奴らは当てにできねーな」

「そう言うなよラシェット、アルゴ達がいなければ囮役は真っ当できないんだから」


 それほどに、竜の存在感は凄まじいと俺は考える。

 現に目の前の砦からは三百人程度の敵中隊が迫っていた。


「ここは俺にやらせてくれないか?」

「あ? 別にいいがよ」


 ここは俺の力だけで乗り切る。

 そう申し出て、みんなよりも前に歩を進めた。


「……そう言えばヴィラン」

「何だミラ?」

「貴方はメルラシエの修行で、どんな力を身に着けたの?」

「なんてことはない、俺は例の修行で基礎体力を格段に上げただけだ」


 他のみんなと違って特殊な能力を開花していない。

 けど、例えば――


「じゃあ、その右腕に携えている剣状のものは何なのよ?」

「これはモルドレッドの力を凝縮させて、剣に見せているだけだ」


 ミラが指摘した其れは、眩い白光を放っていた。

 俺はこいつを懐疑的に『聖剣』と呼んでいる。


 切れ味は保証できないが、威力だけは太鼓判をくれてやれる。


 そのまま進んでいると次第にラシェットやミラ達とは距離ができて。

 敵勢力の攻撃範囲内に入った瞬間を狙って、一気に加速し――ッ。


「っ!? 敵襲ァッッ!」


 中隊の真正面を一人で突破し、敵が警告を発した頃には七割方は片付けた。


「お前がこの中隊の隊長か? 命が欲しくば投降しろ」

「……お前は俺たちが、どう呼ばれているのか知らないようだな」

「悪魔、だろ?」

「ああ、なのにどういうことだ、貴様の方が悪魔染みている」


 敵中隊の隊長格は、降伏する意思を見せない。

 他に残された戦力も、そうだ。


 悪魔軍と呼ばれる連中は皆一様に、恐れを知らないようだった。


「……」


 こと切れた悪魔の遺骸(いがい)の群れを前にして、手を合わせる。

 俺なりのせめてもの手向けだ。


「さて、このまま砦を陥落させるか」


 それがアルゴが要求した内容でもあったことだし。

 ここら辺で俺の虎威を発揮して、少しでも大人しくなって貰おう。


 ふと気づくと、砦からは警鐘の音が鳴り響いていた。


「ジャミロ中隊が全滅! 総員直ちに戦闘準備!!」


 すると砦の前には二千ほどの規模の悪魔軍が行列を成し始める。


 あれが砦の全兵力なのか?

 ここは俺一人でも問題なく片付きそうだ。


 ◇


「お帰りヴィラン、よくやったわね」

「お褒めのお言葉に預かり恐悦至極」


 砦を跡形もなく壊滅させ、みんなの所に戻るとシャムが得意気な様子だった。


「やっぱりヴィランは強いわね、それが確認できただけでも良かった」

「あ、ああ、正直これは頼もしいぜ」

「ラシェットもこれくらいやってやれなくないだろ?」


 ラシェットは黒革に包まれた得物を担ぎながら、「だといいけどな」と言いつつ自信を少し失っているようだ。


「それで、お前が連れているその女は?」

「彼女はグリモアの連中からは忌諱されているらしい」

「忌諱? 何で?」

「俺が砦を陥落させる中、敵は彼女をどこかへ移送しようとしていたから」


 あれは決して逃がそうとしている感じじゃなかった。


 件の女性は、今は俺の腕の中で意識を失っている。

 身体の至る所に痣が出来ていた。


 その様相が哀れに思ったのか、ミラが治癒魔法で癒し始めた。


「う……ぅ、っ……貴様ら、は、一体誰だ」

「私達はグリモアと交戦している勢力よ、貴方は?」

「グリモアと……? なら伝えておきたい」

「何を?」


 ミラの治療がさっそく功を奏したのか、彼女は意識を回復させた。


 彼女の綺麗な金髪は長らく放置されていたらしく、不揃いだった。鼻先まで掛かる前髪は瞳を覆い隠しているが、毛髪の隙間から覗えるのは彼女の力強い眼差しだ。


 感じるのは、この戦争を大きく左右しそうな匂いで。


「グリモアの国家元首……ファウストを、殺してはならない」


 けれど、彼女の台詞は俺達にとっては望むところではなかった。


デスストランディングは未プレイですが、曲だけ先行して聴いています。

どれもこれもいい曲なのでご一聴ください。


思えばあのゲームの初出しのプロモーションを見た時は、すげー時代になって(゜∀゜)キタコレ!!

って会社の中でにやけていたと思います。

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