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死んでください


 明朝、目が覚めるとシェリーの姿はなかった。


 どこへ行ったんだ? まぁいいか……。


 一人で歯を磨き、顔を洗い、食物庫から燻製された肉を拝借して。


 簡素な朝食を用意し、頂いた。


「ヴィラン、肉だけじゃなく野菜も摂れよ」

「居たのですね主」


 毎回不思議に思うのだが、主はどこから現れるのだろう。

 普段は姿を隠しているが、天の目のように事情に達観している。


 食事を摂り終えると、主は俺を屋敷の書斎へと連れ立った。

 主は専用の椅子に腰を下ろし、口を開いた。


「この事件もいよいよ正念場、と言った所か?」

「……」

「犯人の目星は付いてるのかヴィラン」

「……」

「お前の主が丁寧に聞いてるんだ、泣きながら答えろよ」


 異世界ギオスに転生した際、俺は主に引き取られ、育てられた。

 転生して間もない頃は、地球の記憶などなくて。

 俺は毎度のように苛める主の前で幾度も泣いていた。


 主はその頃のことを引き合いにだし、泣け泣けと喧しいのだ。


「おおよその真相は掴めたはずなんですよ」

「そうか、もしも真相を見誤った時、お前は地球に返す」

「わざと間違えるべきなんでしょうか」


「……で、お前は今回の事件をどう推理する」


 主が俺の推理に耳を貸そうとした時。

 クラックの屋敷に複数の足音がこだまし始める。


 足音に気付いた時には主は姿を消していた。


「ヴィラン、今丁度、シャムがレオナルドを追及している。お前も観たいだろ?」

「……えぇ」


 と思いきや、主は姿だけ隠し、絶対的な女神の力を使って俺を――


「――シェリー! その女を必ず仕留めろ! 仕留められれば金貨百枚は出す!」

「御意……っ!」


 俺を、一瞬でレオナルドの闘技場の舞台へと移動させた。

 円柱状の舞台ではレオナルドを庇うようにシェリーが戦っている。

 相手はシャム――盗賊団の姫君として重宝されて来た彼女だ。


 シャムの繰り出す暗器に対し、シェリーは諸刃の剣でいなしている。


 シェリーは元々闘技場で活躍していた女の剣闘士で。

 無手の俺に敗れてからは、レオナルドの女中として仕えていた。


 だから、いくら盗賊団に所属していたと言えど、お姫様に敵う相手じゃないんだ。


「しま――ッ……!」

「……どうして貴方がそこに居るのです、ヴィラン」


 シェリーの剣がシャムの首を刎ねようとした瞬間、二人の戦いに割って入った。


「助かったの? 私?」

「気の抜けた声を出している所、悪いんだが」

「ヴィラン! リチャード三世やクラックを殺した犯人はレオナルドだったよ」


 シャムは仕切りにレオナルドが二人を殺害した首謀者だと主張している。


「だからこいつを保安部に突き出そう、ねぇ聞いてるヴィラ――」

 俺は……シャムの腹部を的確に拳で打ち、彼女を昏倒させた。


 ここから先のことは当事者以外には聞かれたくないから。


「災難でしたねレオナルド様、俺の妻がご迷惑お掛けしました」

「いやはや、相変わらず見事な体捌きですな……妻? そんな小娘が?」

「できれば彼女の無礼を許して頂きたいです」


 寛容な人柄をしていらっしゃるレオナルド様なら、きっとお許しになられるはずかと。


 一言添えると、レオナルドは幾ばくか逡巡(しゅんじゅん)した後、哄笑を上げるのだった。


 そして俺はレオナルドに連れられ、闘技場の迎賓室へと赴いた。

 抱きかかえていたシャムをソファーに寝かして……ある事を想起する。


「先ほど彼女が言っていましたが、レオナルド様の計画だったのですか?」

「計画? はて、何のことでしょうなあ」


 シェリーから葡萄酒を注がれている、彼は疲れた表情でとぼけている。


「レオナルド様、俺と余興をしませんか」

「余興ですか? ヴィラン殿は一体何をしようと言うのか」


 ズボンの右ポケットからギオス金貨を取り出し、それをレオナルドに与え。


「今からシェリーを辱めましょう、二人で」

「は……はぁーっはっはっは!! ヴィラン殿もとうとう女の味を知ったようですね」

「えぇ、ですからシェリーに命令してください――汝の罪を告白せよ、と」


 と言うと、シェリーは身体を強張らせる。

 葡萄酒を煽り、酔いが回ったのか、レオナルドはその様子を据えた瞳で覗っていた。


「……シェリー、汝の罪を……告白せよ」


 レオナルドの指で金貨がシェリーに向けて弾かれると。


「私は……自由に、憧れていたのです」


 シェリーは膝を折って、その場に(くずお)れ、動機を零し始めた。


「自由に? そうは言うが、俺の奴隷になったのだって貴様が志願したことだろ」

「あの時はしょうがなかっただけッ! あの時は、母さんを助けるために」


 手で顔を覆い、涙を堪えている様相の彼女は身震いしている。


「で? 貴様がリチャードとクラックを?」

「……えぇ、私が二人の殺害計画を立てました」


 それを聞いたレオナルドは葡萄酒をシェリーに向けて飛ばした。

 彼女の眦からは、掛けられた葡萄酒と共に涙が垂れている。


 俺はこの時、認めたのだ。

 どこの世界に行っても、奴隷の扱いは一緒なんだと。


 奴隷はどこまで行けども、奴隷なんだと。


「何を理由に、そんな愚かな真似をした」

「……先ほども言いましたように、自由に、なりたかっただけです」

「辻褄が合わないではないか! リチャード達を殺そうともお前は自由になれない」


「貴方もそのうち、殺すつもりでした」


 長年、寵愛して来たシェリーから明確な殺意を向けられ、レオナルドは目を見張る。


「ふ……っ、っ、どうやって? 俺と貴様が主従関係にある限り、貴様は俺に危害を加えられない。これはこの世界の法則だ。貴様も俺の奴隷になる際に覚えこませられただろ?」


「えぇ、ですから、そのためにリチャード様達は死んだのですよ」


 シェリーは俺に目配せし、慈悲を求めるような眼差しを向ける。


「ヴィラン、出来ればそこから一歩も動かないで頂けますか?」

「何する気だ?」

「さっき言ったように、レオナルドを殺し、計画を完遂させます」


 シェリーが片手を天に向かって上げると、殺気立った兵士達が現れた。


「私では貴方を殺せないけど、彼ら、リチャード達の奴隷なら貴方を」

「そうか、貴様の計画とは奴隷を解放することにあったのだなシェリー」

「……死んでください、レオナルド」



「おら、こっち来やがれ神よ!」

「めんどくせーなー」


 神と居酒屋で一杯煽ったあとのこと。

 私は神の腕を強引に引き、宿に向かおうとしました。


「いいから! こっち来やがれおら神よおら!」

「君は俺をどうしようって言うのー」


 よくぞ聞いてくれた。

 私は今から神を――寝取る。


「今からお前の〇〇を私の〇〇〇〇で〇〇〇〇〇〇〇するんだよ、〇〇〇〇! 〇〇〇〇!」


 さぁ神よ、私の言葉に貴方はどう対応する。

 すると神は私の両肩を鷲掴みにして、急に男の顔になると。


「おい人間、余り俺を舐めるんじゃねぇぞ」

「……えっと、それが貴方の真の御姿なのですか?」

「おい人間おい、俺は神だぞ? おい人間おい、おい」


 神は男前な声で、今まで俺をどんな目で見ていたんだ? と聞くもので。


「いえ、私はてっきり……」

「てっきり何だ?」

「貴方は金持ちの坊ちゃんが神を気取っただけの、単なるお遊びだと思っていた」


 と言うと、神は間抜けな表情に戻り。


「めんどくせーなー」


 徹底して、私のことを面倒な女扱いしていました。


 続く。

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