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Counting Stars


「兄さんか、緒戦突破おめでとう」


 グリモアの領地を通り、ダイダロス方面へと進軍していた途中、弟のシュウヤと再び合流した。


「全軍止まれ!! 各自周囲を哨戒!」


 周囲を哨戒、と言っても俺達が今いるのは見晴らしのいい平原だ。

 辺り一面青草に包まれ、風が心地よい。


「シュウヤ、ダイダロスに何か遭ったのか?」

「いいや、ただ兄さんたちが難民の避難路を切り開いてくれたから、今は大移動している」


 と言ったシュウヤの後方を見ると、非戦闘員の民が守られながら南下していた。


「このまま彼らにはエルドラード帝国に行ってもらう、もし良ければ兄さんに引き継ぎたい」

「……」

「僕の話聞いてる?」

「いや、ちょっと考え事してた」


 彼らはダイダロスの民だとして、国って何だろうってふと思った。確かに民なくして国は成り立たないが、今でもシュウヤ達はダイダロスの土地を守っているはずだ。


 国を形成するのは民だ、民が暮らすためには土地の恵みが必要だ。

 彼らは苦渋の選択の末、エルドラード帝国に向かっているのなら。


「分かった、皆さんは俺達がエルドラード帝国まで連れて行く」

「助かった。じゃあ早速引継ぎの手続きを」

「ああ……それはそうとシュウヤ、母さんや、アビーはどうしてる?」

「二人は国の重要人物だから、まだ国に残ってる」


 シュウヤは仲間を手招きして、エルドラード帝国に渡す書類をまとめていた。


「……アビーは元気か?」

「彼女は八面六臂の活躍で、ダイダロスを支えてくれている」


 アビーと離別して早二年、彼女は今でも天真爛漫なままらしい。

 目に浮かぶようだよ、アビーが掛け値なしの笑顔を皆に向けて。

 お眼鏡に適う男を見つけては、間食のように摘まんでいる姿を。


「信じられないわね」

「シャムはアビーに会いたいか?」

「わからない、けどただ懐かしい」

「俺も大体そんな感じだよ」

「それは嘘ね、あの女がいたから前回失敗したって言ってたじゃない」

「中々痛いところを突くな、けど俺が前回負けたのはそれだけじゃあない」


 今回の相手はどの国も化け物の巣窟だ。


 連中の相手をするには、まるで実力が足りなかった。


「兄さん、引き渡しの準備ができたよ」

「ああ、分かった」


 用意された書類一式を手に取り、それを持って後方にいるドロシーの許へ向かう。


「ああ? 私達で難民を誘導しろだと?」

「適任だろ、蟲詠みの国とはついこの間和睦したばかりだし」


 そんな関係の国を、危険な目に遭わせるのは外交上問題がある。


「……であれば、交渉をしようじゃないかヴィラン」

「交渉?」

「この戦争で我らが勝利を収めた暁には、敵三国の一つを頂く」

「いや、それは俺の一存で決められるような内容じゃない」

「なら我々はこのまま進軍する。なぁヴィラン」


 ドロシーは俺の名を体に纏わりつくような感じで呼び、肩に腕を回した。

 彼女への警戒心はないに等しく、俺は耳打ちを無抵抗に受け止める。


「私を、偉大な魔女にしてくれないか」

「と言うと?」

「簡単に言えば蟲詠みの国で一番の偉人として、歴史に名を残したい」


 そのためには功績が何より必要だ。


 だから彼女は将来を有力視した俺に取り次いだ。


 俺と『仲良く』していれば、いずれチャンスは巡って来ると。


「そのためにお前との婚儀を申し出たんだ」

「……ここは?」


 すると、いつの間にか異質な空間に招かれている。

 恐らくドロシーの魔法か何かだろう。


 何故なら、ドロシーの姿がいつの間にか人間の其れへと変貌していたからだ。


「あの地獄のような修行の日々のおかげで、私はメルラシエの術法の一部を解析出来た。ここであれば誰の目も気にせず、あんなことや、こんなことができるぞ?」


「……いいだろうドロシー、口約束になってしまうけど、条件を飲むよ」

「すまないが、言葉だけじゃ信用ならない」


 ならどうしろと? と、問う暇すらなく、彼女は俺の胸を撫でる。

 今ここで抱けと?


 彼女は思考を気取られたくないのか、目を伏せたまま及び出した。


 どうでもいいがドロシー、今ここで君に精を搾取されても。


 俺は別に、君を嫌ったりしない。


 ◇


 ドロシーとの秘密裏の『交渉』を終え、シュウヤの許へ戻った。


「難民の皆さんは協力国である蟲詠みに一任するけど、いいか?」

「構わないよ。僕らが無理言ってお願いしている形だし」

「……シュウヤ、もう一つ謝らないといけないことがあるんだ」

「何かな?」

「今回の戦争で、俺達が勝った暁には蟲詠みに国一つを譲る」


 と口にした瞬間、近くに居たシャムから物凄く睨まれた。


 シャムの目は「だから言ったでしょ……!」と憤慨している。


「それも恐らく構わないよ」


 だがシュウヤは、半ば了承した。


「いいのか? これはお前の国の発展に関わる問題だぞ」


 他人のこと言えたものじゃないが、急に目の前にいる弟が心配になる。


「兄さん、ダイダロスの戦争目的は、世界平和の礎を築くことなんだよ……兄さんは世界が平和になるには、どうすればいいと思う?」


「やけに哲学的なこと聞くな」


「僕であれば、世界平和に必要なのは諦めが肝要だと思うんだ。そもそもこの世界の住人は個々に主張の度が過ぎている。矜持や、信念を大事にするのは理解できるけど――そのせいでどれだけの人が苦しんだ」


 シュウヤは過去を自照するように、眉根を顰めた。


 ここに至るまでにシュウヤはどのくらい、心に傷を負ったのだろう。


 いくら弟の背景を察しても、俺は彼が抱えている矛盾が気になった。


 個々の主張性が、この世界から平和を奪っているというのなら。

 そう唱えるシュウヤの主張もまた、その一部なのだから。


「……じゃあ、国のみんなのことを宜しく。僕達は第三帝国との戦場に戻るよ」

「そうだな、俺達はこのままグリモアを陥落させる」

「頼むよ。グリモアを落とせば、きっとアビーとも会えるから」

「出来ればアビーや、ヨモギダミナトに伝えてくれないか」


 図らずもシュウヤの意思を耳にした俺は、真剣に捉えることはなくて。シュウヤや、この世界のどこかで今も何かと闘っている連中に伝えたいことがあった。


 俺達はこの世に生を成した時からある種の闘争を宿命付けられていたと思える。


 シュウヤが許せないのは、上澄みだけを食って生きて、あまつさえは他人を無下にする連中のような奴を想像しているのだろう。俺だってそう言った手合いは一杯見て来た。


 公に言えないが、ある意味では俺もそんな連中の一端になろうとしていた。

 そうする他、奴隷である俺が自由を手に入れる術はないと思えたから。


 実際、一国の主まで成りあがった今の俺は、二年余りの幸せを手にした。

 けど俺がこうなるまで、どんな経験があったかと言えば、闘争の日々だった気がする。


 争いは、いずれ訪れる物なんだよ。

 それと同じくして、平和もいずれ訪れると思うから。


 今はこの戦争を生き抜いて、シュウヤや、母や、シャム達を守り抜いて。


「この戦争が終わったら、一緒の時間を過ごして、食事でもしよう」


 そして、空に浮かぶ星でも数えるんだ。



皆様に是非見て頂きたいMV、って言われると結構あるんですよね。


どうもこんにちは、サカイヌツクです。


夭折したアヴィーチの『Wating For Love』の犬のアニメVerとか。

今もバリバリ現役、ブルーノマーズの『Finesee』のMVとか。


それで言えば、皆さんもお薦めのMVとかあるのでしょうか?

もし良ければそこらへんお教えくださればと思います<m(__)m>


ちなみにMVとはミュージックビデオの略語です。

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