二人の己
黒木砂道――前世での同級生の一人で、確か野球部のエースだった。
だからと言っていいのか、彼はクラスでの人望も厚かった生徒だ。
その黒木から修行を受けさせるメンバーを選定してくれと言われ。
言われるが侭、以下のみんなを城の中庭に集めた。
「修行ねぇ」
ラシェット、鷲鼻が特徴的な国の守護柱の一人と。
「まぁいいじゃない」
ミラ、ラシェットと対をなす女性の守護柱の一人。
「主、この先何があろうとも御身は俺が守り抜きます」
「嬉しいこと言ってくれるねキング~」
ヘルメスとキングの二人にも修行をつけて貰う。
他にも蟲詠みの魔女のドロシーや、リザードマンのディゴにも参加して貰った。
「修行なんて、私のキャラじゃないんだけどね」
「そう言うなシャム、事はお前の命が懸かってるんだ」
事の重大性を理解していないシャムは口振りとは逆に、表情は気鋭に満ちていた。
「……ねぇヴィラン、私やシャムさんはどうして命を落とすの?」
「それは……俺が不甲斐なかったからだ」
ミランダに問われ、俺は己の過信を再び後悔した。
「今から向かう、ダイダロス国にいる俺の母の許には……――アビーが待っているんだ」
アビーは俺の為と思い、先発隊として逸早く旅立ったが。
まさかあれから西の大陸に向かっていたとは思ってなくて。
アビーが居るという情報を掴んだ俺は、功を焦ってしまった。
「久しぶりに聞いたわね、あいつの名前」
シャムが猜疑心が籠ったような双眸を取ると、黒木が口を開いた。
「ヨモギダ、修行を受けさせるメンバーはこれでいいのか?」
「ああ、ここに居る連中は信頼できる」
と言えば、ディゴが長い舌をチロチロと出し入れし。
「ヴィラン様からの期待に、俺達は必ずや応える」
全身を闘気で充溢させている。
「そっか、なら修行を始める前に一つ言っておくぞ。本来ならこのメルラシエ式の修行は、メルラシエの承諾を得てない奴は受けれない末恐ろしい代物だ」
――末恐ろしい代物、と、黒木は怪談調で言い。
俺達の恐怖を煽ると同時に中空で胡坐を掻いてみせた。
「修行はほんの一瞬の出来事だ」
「ねぇ質問、修行って何するの?」
シャムが優等生のような質問をすると、黒木は強かな笑顔をつくる。
「この修行は俺の主であるメルラシエが創造したものだが、その実、何のためにあるのかと問うた時、メルラシエはこう答えた――究極の自分探しだと」
究極の自分探し……か。
「……お前らは誰だ? 黒木の差し金か?」
とっ、どうやらいつの間にか修行は開始されていたらしい。
俺達は観葉植物が目立つ城の中庭から一瞬にして別世界に飛ばされていた。
辺り一面濃霧に包まれ、目先には半径十メートルほどの湖がある。
「俺の名前はヴィラン、黒木は俺の友人です」
目の前に居たのは一見仙人姿のご老体だった。
仙人のような髭を蓄え、葵色の召し物を纏い。
ゆったりとした物腰で今は釣りをしている。
「ねぇヴィラン、もしかして修行って始まってるの?」
「そこに居る美しい娘達も俺の修行を受けたいと申すのか?」
「え、えーと」
シャムは目の前にいる男――恐らくメルラシエとやらが発する幽玄な雰囲気に鼻白んでいた。
「修行って、いやらしいことしないわよね?」
「それは判らん。俺の行いの全ては自分探しの一環だからな」
――時には、残酷な一面もあるだろう。
「それでもやると申すか?」
「……やる」
「ちょっとヴィラン、安請け合いはしないっていつも口煩く言ってるのは誰よ」
シャムはメルラシエの言動を受け、修行に億劫になっている。
そんなシャムを、黒い影が襲う。
「グレッグ!? あんたいつの間に、こら! やめなさいよー!!」
それは遊びたい盛りの竜の子供のグレッグだった。
「竜か」
「内の者がお騒がせして申し訳ない」
「いや、いいのだ」
と言い、メルラシエは立ち上がると。
「私の修行に耐え切れなくなったら、即刻申し出るんだぞ」
メルラシエは貴婦人の姿に変貌して、そう言っていた。
「メルラシエ様、初めましてミランダと申します」
「ミランダ、女神から聞いているぞ。選択者の一人らしいな」
「はい」
ミランダがメルラシエに自己紹介したのを機に、連れて来たメンバーは各々にメルラシエに名乗る。
「今回のお供は礼儀正しそうで何よりだ。お前達ならきっと――真なる自分に辿り着けるだろう」
真なる自分……そう言われて俺は少し悩んだ。
今、ここに居るのは異世界ギオスに生を授かったヴィランなのか。
それともここに居るのは地球の記憶を持つ、蓬田塔矢だったのかな。
どうもこんにちは、最近になってワンリパブリックの『Counting Stars』に嵌っている私だ!!
初めましての方、それともお久しぶりの方、私だ。
初めましての方に、私がどんな私か説明すると。
小学生の時の私「セックスって何!?」
中学生の時の私「どうせ死んだらみんな地獄行きだよ」
高校生の時の私「・・・」
という変遷を得ているのが、私だ。




