余裕そうな彼ら
人払いをした後の玉座の間は、森閑としている。
その静粛な空気を打ち破ったのはやはり皇帝ベガだった。
「ヨモギダくん、僕らのことが判るよね?」
「……名前は覚えてないけど、印象だけはある」
「そっか、逆に僕らは誰一人として君のこと忘れてなかったよ」
ベガがそう言うと、隣に連れ立っていたシャムが俺の手を握りしめた。
「本日は皇帝ベガ、並びにヨモギダトウヤの知己に会うことが叶い幸甚の至りです……所で『おたくら』はヴィランをどうするつもりなの? まさか故郷に連れて帰るなんて言わないでしょうね?」
などと口にするシャムに握られている手は力強かった。
「安心してください、帰りたくても帰る方法がない。それにヨモギダくんとはかつての朋輩とは言え、そこまで仲良くしてなかったからね。知ってるかな、彼は今でこそ一国の王だけど、本当は消極的な人間なんだ」
「えぇ、存じ上げております」
シャムはあからさまな嘘を吐いて対抗する。
この世で俺という人間を誰よりも理解している。と言わんばかりに。
「で、ヨモギダくん、久しぶりだね」
「……ああ、俺が死んでから何か遭ったのか?」
と言った矢先、一人の男が俺の背後に回った。
そいつの面構えは偉く精悍で、益荒男然としている。
「お前が死んだせいで俺達もこっちに来ちまったんだよ」
ああ、そうだ、この男は昨晩俺と祝杯を交わした男で。
確か名前は黒木、だったかな?
「俺が死んだせいで? どういうことだ?」
「細かいことはいい、例え説明してもどうにもならない」
黒木が俺の肩に手を回しつつ、内談を口にすれば。
「元気だった?」
「お久しぶりーふ」
俺はかつての同級生から、再会の挨拶をそれぞれ告げられた。
「……ヨモギダくん、僕は君にお礼を言わないといけない」
「何で?」
ベガ――前世での名前は思い出せないが、彼の言葉は疑問だった。
「君のおかげで僕らはこの世界に転生することが出来たからね。まぁ中には転生したくなかった人間もいることにはいるんだけどさ、細かい話しはこの際どうでもいいってことで」
でも、大多数が転生出来て良かったと思っているとベガは言った。
「ちなみに聞くけど、他のクラスメートも転生したのか?」
「いや、今はまだ確認できてないけど。恐らく中にはいるんじゃないかな」
俺が転生したのを機に、クラス丸ごと転生か。
「悪趣味だな」
「そうだね、あの女神様は見掛けとは裏腹に趣味が悪い」
ベガと二人して主への揶揄を言うと、主は霞をともなって俺達の中間に現れた。
「別にいいだろ。それよりもお前ら、話が脱線しているよな?」
「ヨモギダくん。女神が言うには君は戦争に負けるんだってね」
「……そうだ」
俺はこの先、巻き起こる大戦に、敗北を喫する。
これは変えようのない運命なのか? ヨモギダ・トウヤが異世界ギオスに転生し、その後激変した人生のように、変えられないものなのだろうか。
「君に負けられると、ちょっと困るんだよね」
と、この国の代表であるベガは言う。
「だとしたら協力してくれないか?」
「協力はしないけど、手助けならしてあげるよ」
――何せ僕達は故郷を同じくしたトモダチだからね。
「ヨモギダくんはしばらく帝国に滞在して、敵を倒す力をつけるといいよ」
「……」
ベガの提案に、俺は口を噤み、脳裏ではこう考えている。
この国に滞在したからと言って、あの化け物共を打ち倒すのは無理だ。
「無理だって言いたそうな顔してるね」
「お前らは連中の力を知っているのか?」
「知らないな」
「無責任な言いようだな。せめて帝国には物資補給の――」
「帝国は表向き、ヴィランに一切の援助が出来ないんだ、ごめんね」
言い終わる前にこう切り返され、興が乗るように突っ込みたくなった。
「表向きは?」
「そうだね。さっきも言ったように、ヨモギダくんはここで修行して力をつけるといいよ」
「……修行?」
首を傾げると、キングが手の平に拳を打ち付ける。
「修行か? 面白そうだ」
「キングは根っからの戦闘狂だからねぇ~、嬉しいお申し出で良かったね~」
「キング、俺達は修行するほど、時間に猶予がないんだ」
キングのやる気を殺ぐようで悪いが、これが俺達に突き付けられた現実だった。
――しかし。
「安心してよヨモギダくん、時間の問題に関してはそこにいる黒木くんが解決してくれる」
「おう、俺に任せろヨモギダ。俺に任せて貰えれば絶対損はさせないぜ」
しかし、エルドラード帝国に溶け込んだ元クラスメイト達は、存外余裕そうだった。
神よ、たまにはオペラなんぞ観賞しないか?
神「いいよー」
であるからして、私は神とたまのオペラを堪能しています。
神「何の演目を見るのー?」
私「言わずもがな、オペラ座の怪人だ」
神「ああ、あれいいよねー」
私「だろ?」
神と隣り合って観賞するオペラ座の怪人は、なんだか愛を再燃させるようで・・・。
神「でもこれ金田一の方じゃーん」
私「好きなんだからいいだろ」
私は今日もまた一つ、神を好きになった。
続く。




