前世の楔
モルドレッドの山脈を越え、俺達はエルドラード帝国の領土に入った。
帝国の領土に帰ると、竜の肉を食べ、鳥獣と化し。
「「「隊長!」」」
今でも俺を隊長と呼びよせる馬鹿連中が出迎えてくれた。
その晩には、連中と酒を酌み交わし、俺達は在りし日の光景を再現している。
「マミー! 貴方とまたこうして再会出来て、俺の身は打ちひしがれる」
「マミーと出会うために俺達今まで頑張ったんだ、褒めてくれ」
「マミー、もう離さない」
シャムはそんな連中に相変わらずモテモテの様子だ。
が――
「ふぉぐぉ!?」
「マミー何、ウォ!?」
「痛い、やめてマミー」
「ごめんなさい、久しぶりにマミーって呼ばれて頭に血が上っちゃってついね」
シャムをマミーと呼ぶ奴はああやって鉄の拳を喰らっていた。シャムは覇石によるクラスチェンジを繰り返し、今ではグレッグを従える騎竜隊の隊長やってるぐらいだからな。
「にしても隊長、レギ副隊長はどうしたのです?」
「レギであれば自国の保安を任せている」
「そうですか、何でも帝室にレギ副隊長のお姉さんがいらっしゃるらしいのですが」
「そうなのか?」
だからなのか? 今回俺がエルドラード帝国の皇帝の慈悲に授かれたのは。
この遠征軍が終わり次第、レギに感謝しなくちゃな。
「お前らは相変わらずだったか? 帝国に仕えてて何か変わったことはないか?」
「え? いや、別に。たまーに戦争があって、たまーに出兵するぐらいで後は」
それよりも隊長達はこの二年の間に何かありました?
と気さくに聞いて来る兵の一人に、俺は見覚えがあった。
偉く精悍な面構えしている。
「……いや、俺もそこまで誇れる話はないよ」
「お互いさまですかね? はは、ハッハッハッハ!」
「ヴィラン! 聞いてよこいつらったら未だに私のことマミーって」
その時背後からシャムが現れて、俺に抱き付く格好で視界を奪い。
先程まで俺と酒を酌み交わしていた奴は一瞬にして消えていた。
◇
「エルドラード帝国第五皇帝! ベガ様がご来場なされる! 皆静粛に願う!」
翌日、俺達はいよいよ皇帝ベガに謁見することになった。
今回俺達は主賓として帝国城の玉座の間に招かれたが……どうも、きな臭い。
「皇帝ベガ様の御なぁあああああり!!」
皇帝ベガは帝国の国旗を掲げた兵の怒号と共に参上した。
ベガは一見にして幼く、まだまだあどけなさが強く残されていた。
ベガの後ろには近衛兵のような六人の……っ!?
「やあ東の国の王ヴィラン、今日はよくぞここへやって来てくれたね」
「……お前達はもしかして」
と口にすると、兵の一人が陛下に向かってその言い草は失礼であろう! と叱咤するのだが。
ベガはそんな兵達を手で制止していた。
「こんな畏まった場は僕達には不要だからさ、関係ない人間は即刻立ち去ってくれ」
連中の顔を見て思わずはっとさせられ、俺の口は開いたままだった。
「ヴィラン、どうしたの?」
「……奴らは、俺の古い知り合いだと思う」
「あ、そうなの?」
シャムに疑問視されたので、素直にそう答えると。
手短に人払いを済ませたレギによく似た女性が、俺に近寄って。
「久しぶりだねヨモギダくん、僕のことが判るかな?」
前世での俺の名前を、さも自然体で諳んじるのだった。
私、実は持ってます!
雪が降る中ふと小さな教会を仰ぎ見ていれば――
向こうの方でカメラを構えている謎の影があったことがあるぐらい、持ってます!
皆さんもそんな経験御座いませんでしたか?




