奴隷二号
「なぁ、ミランダを見なかったか?」
「ん? 確か、彼女だったら中庭に」
「ありがとう」
会議を解散した後、ミランダを探した。
ミランダにこの国の連中の未来を見て貰いたいからだ。
部隊の顔見知りに尋ねた所、ミランダは王城の中庭にいるらしい。
気持ち早歩きで彼女のもとへと向かった。
「ミランダ」
「どうしたのヴィラン?」
観葉植物が植えてある中庭にはミランダとヘルメスを守るようにキングがいて。
ヘルメスを拾って以来、ミランダは交友を深めるよう彼女の傍についていた。
「君に折り入って頼みがあるんだ、大変な仕事になるが、引き受けてくれないか」
「他人に依頼する場合は内容を言え」
二人の護衛をしていたキングから突っかかる口調で言われ。
俺はそこでミランダに事のあらましを説明した。
「この国の皆さんの未来を占う……ですか」
「いやー、女神も偶にはいいことするんだねぇ」
元々主と旧知の仲だったヘルメスは揶揄気味に感嘆している。
「暇がある時にでも貴方と主の昔話を聞かせてくれないか?」
「いいよ、今だったら暇してるから。そもそも僕はあの女神の手によって異世界ギオスに連れて来られたんだ。彼女はそうやって二十年に一度、新参者を連れて来ては世界を改変する」
……二十年に一度?
世界を改変?
「何のために?」
問えば、ヘルメスは朗らかな笑顔で「わからないなぁ」と言う。
「だから女神を知ってる人間は意外と多いはずだよ」
「その人たちは今も存命してるのか?」
「知らないなぁ、何せ僕は……そうだった」
「そうだったって?」
「いや、詰まらないことを思い出しただけだよ、気にしないで」
ヘルメスを観察すると、彼女は手を握りこぶしにしていた。
きっと後悔に近しい負の感情を発作的に思い出したんだろう。
「ヴィラン、それで私はどうすれば?」
「言った通り、君の未来視をつかってこの国が歩む道を示唆して欲しいんだ」
「そう……私はヴィランの力になりたい」
ミランダの返答にありがとうと言えば、ミランダは眉根をひそめていた。
「でも、私は未来視を自由に出来てなくて」
「時間はある、駄目なら駄目でその時はその時だ」
「……頑張る」
ミランダの協力的で健気な対応に、俺の心は潤いを沸き上がらせていた。
◇
その晩、ミランダは俺とシャムの寝室を尋ねた。
「いらっしゃい、どうしたの?」
「ヴィランに用があって、お邪魔します」
「例の件か?」
と言えば、シャムが「例の件? って何?」と興味深そうに尋ねる。
「例の試験官の話だよ、その役目をミランダにお願いした」
「は? どうしてミランダに?」
「ミランダには未来視があるからだ」
「は? 嘘ばっかり」
「本当だ」
「……まったく、ヴィランには謎が多くて素敵よね」
私、飲み物とか持ってくるから。といいシャムはこの場を後にする。
「ヴィランとシャムさんの仲が進んでるようで、良かったですね」
「ありがとう。出来ればミランダともそんな関係になりたい」
「……唐突ですね。その話は脇に置いて貰って」
――今日は、ヴィランにお願いがあって来たのです。
「あの後ヘルメスに相談したんです、どうすれば未来視を自由に使えるのかって」
「そしたら?」
「ヘルメスの言う限りだと、ヴィランの主に頼めばいいんじゃないかって」
「そう言われても、主は神出鬼没なんだ。それに主にはある傾向があって」
俺の主は人間嫌いで、他力本願を望まない。彼女自身が世界で唯一無二の存在だから、誰かに頼るってことに違和感を覚えるのだろう。嫌悪感と言ってもいいか。
ミランダのために主が出て来てくれるのかと言ったら、五分五分だと思えた。
「それでも一応、呼んでみようか」
「お願いします」
そう言う彼女は寝室にあったクッションに腰を下ろす。
ミランダはお嬢様だっただけに、所作が楚々としていた。
シャムであればクッションに座るにしても胡坐を掻くからな。
「飲み物持って来たわよ、二人して何やってるの?」
「ヴィランの主を呼んでくれているの」
「ああ、例の女神ね。あの人ほんっと、人間嫌いだからねぇ」
無理なんじゃない? シャムは皮肉ると飲み物を寄越した。
「ありがとう御座います」
「どういたしまして。にしてもミランダに未来視があったなんて初耳よ」
「無自覚だったので、最近になって視るようになった代物なんです」
二人が談話している中、俺は部屋の一角の隅に身を潜めた。
こうして二人から距離を取っていれば、人間嫌いの主は不思議がるように――
「お前、そうしていると単なるぼっちだぞヴィラン」
「主を呼び出すにはこうするのが最善だと思ったんですよ」
「それはどういう意味なのか突き詰めて聞いてもいいか?」
主の登場に、シャムは「本当に出たわね」とやや礼儀を欠く。
「ミランダ、お前の能力を引き出すために、お前も私の奴隷になってみるか?」
「……良いのですか?」
「なるつもりなの?」
ミランダの思いがけない返答にシャムは少し驚いている。
「構わない、奴隷が増える分には私は歓迎する。だが私の奴隷になるからにはこき使ってやるからな」
「貴方のような高貴なお人に仕えるのは、又とないことですから」
話しが進む中、シャムが「私もそうしようかしら、悩ましい」と言うが。
「じゃあそのままじっとしてろ」
「はい」
こうして、ひょんなことからミランダもまた主の奴隷となった。
ミランダは主に向かって姿勢を正すように跪く。
主が奴隷の宣誓を口にすると、彼女は静かに瞼を瞑る。
「……もういいぞ、これでお前は私の奴隷だミランダ」
「ありがとう御座います」
本来なら奴隷の契約は誰かの立ち合いがないと成立しない。
しかし俺の主は世界を統べるほどの力を持っているから。
この世の理をいとも容易く凌駕してしまう。
「どう? 何か変わった?」
シャムが興味本位と言った感じにミランダに訊く。
「……強いて言えば」
「強いて言えば?」
「得体の知れない強力な何かが、背中に降りたような気がします」
「奴隷は主の守護を受ける、主の力が増すほどその感覚は強くなるもんだ」
主から説明されたミランダは静かにお辞儀すると、主は消えて行った。
――その翌日、俺は元老院を玉座の間に招集した。
「前言したように、お前達の査定を執り行う。試験官は彼女だ」
「ミランダと申します、お手柔らかにお願いします」
「ひゃっひゃ、その台詞はわしらの台詞じゃ」
「それもそうですね、ではシノン様、先ずは貴方から」
「その必要はない――お主たちにはここで消えて貰うからな」
と、シノンが豹変した瞬間、多数の戦狼がどこからともなく現れた。
ある者は部屋の壁際の上部にあった窓を伝って。
ある者は部屋の入り口から侵入して。
黒や灰、白や銀色した無数の毛深い獣によって玉座の間は取り囲まれるのだった。
どん! どん! どん! どどんどどん!
1コンボ!!
どん! どん! どん! どどんどどん!
2コンボ!!
どん! どん! どん! どどんどどん!
3コンボ!!
神「やるなぁ~」
私「これくらい訳ないだろ、お前はそれでも神か」
某日、私は神とゲーセンでリズムゲームを遊んだ。
その後、神と愛の巣へしけ込み。
どん! どん! どん! どどんどどん!
1コンボ!!
どん! どん! どん! どどんどどん!
2コンボ!!
どん! どん! どん! どどんどどん!
3コンボ!!
3コンボほどかましてやりました。




